┌┬───────────────────────────2016年9月
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│└┼┐ 資産家のための資産税ニュース 第57号
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辻・本郷 税理士法人の資産税の専門家が
相続・贈与税、資産にかかわる最新の情報をお届けする
「資産家のための資産税ニュース」 毎月15日配信です。
(※15日が休日の際は、前営業日に配信いたします)
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■□ 相続人に非居住者がいる場合には、4か月の期限にご注意を! ■□
(このコラムは60秒で読めます。)
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【1.相続が発生した場合の申告期限】
相続が発生した場合の相続税の申告期限は「相続開始日から10か月以内」ですが、それよりも前、「相続開始日から4か月以内」に期限が到来する税金があります。
通常、不動産収入や年金収入など、その年の所得については翌年の3月15日までに 確定申告という手続きで所得税の申告納税を行いますが、年の途中で相続が発生した場合には、その年の1月1日から相続開始日までの期間について「準確定申告」として所得税の申告納税を行わなければなりません。
無論、被相続人は申告することができませんので、相続人が被相続人に代わって申告納税の手続きをします。
この「準確定申告」の期限が「相続開始日から4か月以内」となっています。
【2.相続人に非居住者がいる場合には要注意】
平成27年7月に創設された「国外転出時課税」が、この「準確定申告」にも影響していることをご存知でしょうか。
「国外転出時課税」は、1億円以上の有価証券等を所有する者が国外に転出する際に有価証券等の含み益について課税をする制度ですが、この「国外転出」については、有価証券等の所有者自らが国外に出なくても、相続等により非居住者に有価証券等の権利が移転することも「国外転出」ととらえて課税の対象とする仕組みになっています。
この場合の含み益の帰属は被相続人であり、「準確定申告」として申告納税を
しなければなりません。
「準確定申告」では、家賃や必要経費、医療費の集計だけでも時間がかかることに加え、非居住者がいるから有価証券等の含み益も集計しなければならないとなると、4か月の期限に間に合わない可能性もありますので早期の着手が重要となります。
【3.国外転出時課税は必ず回避すべきものなのか】
「準確定申告」において売却してもいない有価証券等の含み益について課税されるというのは、4か月という短期間に納税資金を調達しなければならないことから考えても
できることなら回避したい、という意見が多いようです。
例えば「近いうちに非居住者が帰国する予定だから、とりあえず納税猶予の適用を受けておいて帰国したら課税の取消しをしよう」という選択肢もあるのですが、果たしてそれが得策なのでしょうか。
例えば、非上場株式のように売却を予定していない有価証券等であればそうですが、相続開始後に現金化を予定している有価証券等の場合には、国外転出時課税の適用を受けることでむしろ全体としての税負担が軽くなる可能性もあります。
その理由としては、下記の3つのポイントが挙げられます。
1) 相続等の「国外転出時課税」は所得税だけの制度であって、住民税は課税されない。
2) 「準確定申告」で納税した所得税は、相続税の計算上債務控除の対象となる。
3) 「国外転出時課税」の適用を受けた有価証券等をその後実際に売却した場合には、 相続時の時価が取得費となり、簿価の付替えがされる。
相続した有価証券等を将来的に売却するかどうか、また相続時と実際の売却時とで時価がどのように変動しているか、など、不確定要素が大きいため判断は
非常に難しいといえますが、「敢えて納税猶予を選択しない」という考え方があるということも、留意しておくべきといえるでしょう。
(担当:税理士 前田 智美)
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