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        BIS論壇 No.328 『ASEANの現況』中川十郎 2020年9月11日

         

         コロナ後に更に躍進するとみられるASEAN(東南アジア諸国連合)10か国は9日、オンラインで、米中日に加え、ロシア、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの18カ国の東アジア首脳会議(EAS)外相会議を開催した。

        ここでも米中の対立が激しく、東シナ海での中国の領有権問題で、米国は「中国の主張は完全に違法」と断じ、一歩も引かない構えを見せた。

        中國はインドネシア、マレーシアに加え、シンガポール、ミャンマー、ラオス、カンボデイアなどへの一帯一路広域経済圏での諸プロジェクトへの融資、コロナワクチンの提供などでASEAN関係諸国を引き入れ、米国の批判をかわす構えだ。

         コロナ禍の影響が比較的良好なASEAN諸国はアフターコロナ時代にさらなる経済発展が予想されている。中國は2020年上半期、地域別で最大の貿易相手国がASEANとなり、経済、貿易上もASEANとの経済関係強化をさらに強めつつある。

         これまでも中国はASEANとの関係強化に熱心だ。すでに、中央アジアを中心に、中國が主導権を取っているロシア、インド、パキスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ウスべキスタンで構成するユーラシア最大の地域協力のためのSCO(上海協力機構)のオブザーバーとしてASEAN事務局を招待。さらに、中国南部の南寧で毎年、中國~ASEAN国際貿易見本市を開催。さらに本年から一帯一路・中国~ASEAN協力会議を立ち上げた。

         中国はASEANと高速道路、鉄道の物流網も構築中である。あわせ、デジタル通信ネットワークも建設中だ。昨今のコロナ禍の下、一帯一路健康・医療ネットの構築にも努力中だ。

        一方、メコン河開発では中国は特にラオスを中心に治水や発電のためのダムを多数建設している。ここでも米国は対抗するため、ポンぺオ米国務長官が11日、オンラインでASEAN関連会合の一環として、「メコン~米国パートナーシップ」という閣僚級の初会合で共同議長を務め、中国巻き返しに尽力した。2019年のタイ、ベトナムのコメ不作で国際価格が急上昇。米国はメコン川水量減主因が中國のダムだと主張。これに対し、中国は異常気象が原因だと米国に反論。東南アジアの4200キロメートルの大河メコン河関連でも、米国と中国は主導権を争っている。12日のASEAN地域フォーラム(ARF)もベトナムが議長となる。東シナ海、南シナ海の領有権問題についても中国に対して、ベトナムはフィリッピンと共に思い切った提言をするものと見られている。

        ASEANと日中韓、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16カ国で構成するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)は域内有力国のインドが参加を見あわせているが、場合によってはインドなしで、年内署名へ向けて関係国が努力すると9日の外相会議で確認した。ASEANと日本の個別外相会議も開催。茂木外相は日本が注力する「自由で開かれたインド太平洋構想」に向けてASEANとの連携の必要性を訴えた。

         コロナ後に発展が予想されるASEANとの協力強化が日本の経済発展の為にも必須だ。

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        • ACデザイン
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