BIS論壇 No.329『最近のEUと中国の関係』中川十郎 2020年9月16日
9月14日開催のEUと中国首脳によるテレビ会議で、EU側は最近の香港情勢などに懸念を表明。自由への脅威を問題視し、対中国関係を軌道修正しつつある。
14日の首脳会議には習近平国家主席、EUからはミシェル大統領、フォンデ アライエン欧州委員長、EU議長国ドイツのメルケル首相が参加。
米中貿易戦争が激化しつつある中、経済面で強い結びつきを背景に良好だった中国・EU関係は転機を迎えている。EU関係者は最近の中国をロシア、トルコと並ぶ「新しい帝国」と名指し、国家主権を振りかざして市民の自由を弱体化していると非難。(日経9月15日)
EUは香港の自治権を脅かす中国の強引な手法やウイグル族への対応、最近の内蒙古での中国語の強制、それに反対抗議のモンゴル族を14日までに130人拘束。さらにコロナ禍なども問題視。このような背景下、ミシェル首脳会議常任議長(大統領に相当)は中国での人権問題を問題視し、少数民族への抑圧が指摘される新疆ウイグル自治区への監視を受け入れるよう習近平国家主席に要求したという。(朝日9月16日)
EU域内最大の経済大国ドイツは9月2日、インド太平洋外交の指針を閣議決定。中国一辺倒のアジア政策の転換に動き始めた。
一方、ブレグジットの英国は日本と9月11日経済連携協定(FTA)で大筋合意。
次のステップとして環太平洋経済連携協定(CPTPP)への加盟申請へ、参加11か国との非公式協議を開始する方針だ。FTA交渉に参加の英国トラスト国際貿易相は「デジタルとデータ分野で最先端の条項で合意するなど、日欧EPAを超える多くの成果もあった。
この合意はアジア太平洋の玄関口となり、世界最大のFTAの一つであるTPP加盟への重要な一歩になる」とドイツ同様、アジアとの経済、貿易関係強化に意欲を示している。
この分だとインドが抜けて片肺飛行状態にあるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)=ASEAN10か国に豪州、ニュージーランド、日中韓の15か国での20年年末までの合意を努力中=への参加も英国は画策するのではないかと思われる。
セット元駐日インド大使は最近の印中軍のラダック国境地域での紛争も踏まえ、菅新政権に尖閣諸島や南シナ海での中国の海洋進出も踏まえ、インド太平洋構想の具体化を提言している。(日経9月15日)。
印中の関係悪化が西アジアでの平和の障害になることが懸念される。
EUや地域大国のインドの中国離れと、ASEANや米国、豪州、ニュージーランド、日本、インドのインド太平洋構想が中国の一帯一路戦略やASEAN諸国との経済,貿易、平和構築の妨げにならないように中国へは慎重な対外外交戦略を強く求めたい。