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         2020年11月6日発行

        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

        第224回

         

        トランプ大統領の怒りを買った安倍前首相のキューバ政策(後編)

                               浜田和幸

         

        ウェブで読む:https://foomii.com/00096/2020110610000071978

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        コロナ禍の影響を最も色濃く受け、人種差別問題も歯止めがかからず、国家分裂の瀬戸際に追い込まれているのが今のアメリカである。その腹いせのように、トランプ政権は同盟国であろうと敵対国家であろうと、無理難題を押し付けてくる。トランプが突きつけてきた「駐留米軍経費(思いやり予算)の4倍増要求」を安倍首相は切り返せなかった。それどころか、安倍首相はアメリカから「南シナ海における中国の非合法な領土拡張に対抗するための軍事行動への参加」や「キューバの収容所送り」を耳打ちされ、一気に病状が悪化したのではないか。

         

        こうしたアメリカの理不尽さを前にして、堂々と渡り合える政治家が日本から登場する可能性はあるだろうか。

        現時点では難しいと言わざるを得ない。アメリカの諜報機関の動きはもちろん、それらを操る残忍な大統領の本性も理解できていないからだ。これでは誰がアメリカの次期大統領になっても、その楔(くさび)からは脱却できそうにない。

         

        今こそアメリカと対決することを厭わない国々とも

        バックチャンネルを構築するような戦略思考と情報管理能力が求められる。日本は「ポスト・コロナ」ではなく「ポスト・トランプ」時代に備えねばならない。

         

        いずれにしても、菅総理の最大の弱点は外交だと言われている。今回の総理就任に際しても、海外からは不安視する声が聞かれる。そうした不安を払拭しようということであろうが、9月20日のオーストラリアのモリソン首相を皮切りに、アメリカのトランプ大統領とも初の電話会談に臨んだ菅総理である。その後も、順次、諸外国のトップとの電話による「挨拶外交」を展開中だ。しかし、電話で、しかも通訳を介しての10分から20分の会話では、相手の不安を解消し、新たな関係を打ち立てるなどはとても無理な話であろう。

         

        とはいえ、トランプ大統領との電話会談は順調に行ったようで、直後の記者会見では高揚気味の菅総理であった。曰く、「コロナ対策や北朝鮮問題で協力することで合意した。大統領からはこれからは24時間いつでも電話してほしいと言われた」。トランプ大統領も得意のツイッターで早速、菅総理を持ち上げた。「日本の新しい総理はたたき上げの人生を歩んできた大した奴だ。一緒に大きな仕事ができるだろう」。これでは安倍前首相と同じ轍を踏むことになりそうだ。

        何しろ、11月3日の選挙を控え、再選のためにはあらゆる手段を講じる姿勢を強めている「トランプ・ファースト」と異名をとる大統領のこと。敵対するイランや中国との戦争という「オクトーバー・サプライズ」もあり得るとして、世界が注目しているほどだ。

         

        いくら菅総理が「日米安保が日本の外交安全保障の機軸で、開かれたインド太平洋戦略の要(かなめ)である」とアメリカ重視の気持ちを訴えても、相手の関心は「じゃあ、アメリカ製の武器をいくら買ってくれる?中国との戦争になったら、自衛隊は米軍と共に戦うだろうな?コロナ対策を最優先するなら、アメリカ発のコロナ・ワクチンをどれくらい輸入してくれる?11月3日までに返事をくれ」といった自己中ぶりである。

         

        というのも、菅総理はどんな質問にも「コロナ対策を最優先する」という一本調子で応じているからだろう。「総選挙の日程は?」、「習近平国家主席の国賓来日は?」、はたまた「東京オリンピックの開催は?」と何をたずねられても、答えはいつも同じで、「当面はコロナ対策に万全を期す」というもの。便利な言い訳かも知れないが、あまりに「スカスカ」答弁ではないかとの失望感も広がっている。トランプ大統領からすれば、願ってもないチャンス到来というわけだろうが。

        官房長官時代にはインバウンド観光客の誘致策を積極的に進め、6000万人を目標に掲げてきた菅総理である。地方経済の活性化の切り札と位置付けているのだが、日本人による国内ツアー拡大支援策では自ずと限界がある。いずれ海外からの観光客を再度呼び込まねば、地方創生も絵に描いた餅に終わってしまう。そのためにも「コロナ用のワクチン」は必需品になるはずだ。

         

        実は、こうした医薬品メーカーに資金を提供しているビル・ゲイツ氏ですら「簡単にはいかないだろうが、現在進行中のワクチンが完成すれば、2022年には状況は改善するだろう」と慎重な見方を崩していない。楽観的に見ても、まだ2年先の話というわけだ。資金を提供している側からすれば、一刻も早く治験を終わらせ、製品化によって投資金額を回収したいはずにもかかわらず、効果の程や安全性を確認するには時間をかけざるを得ない。

         

        これでは、2021年夏の東京オリンピックにはとても間に合いそうにない。なぜなら、オリンピックを安全、安心な環境で開催するには「2021年初頭にはワクチンが準備できていることが絶対条件」と見なされているからだ。要は、特定の製薬メーカーの利権に拘ることなく、未曾有の感染症を克服するという人類共通の目標に向け、世界が協力して取り組むのが最善策である。

         

        今回、日本が最初に輸入を決めたコロナ・ワクチンの「レムデシビル」は、アメリカのギリアド社が開発したものである。本来は、エボラ出血熱の治療薬として開発されたもので、アメリカでもコロナ用にはほとんど使われていない。アメリカからの押し売りに「ノー」と言えない日本を象徴的に示している。アメリカが日本に売りつけようとするのは軍事兵器に限らないわけだ。

         

        厚労省から900億円の助成を受けている日本の製薬メーカーとしては大阪大学と共同開発に取り組むアンジェスが臨床実験で他社より先行しているが、富士フイルム富山化学の「アビガン」や小野薬品工業、帝人ファーマ、日医工なども抗ウイルス薬の開発に日夜邁進している。

         

        こうした日本の製薬メーカーの成果も活かしながら、菅総理には国際的なワクチン開発計画に資金と人材を投入してもらいたいものだ。一刻も早い治療薬とワクチンの

        開発、製造という共通の目標に向け、内外の研究者と医療機関、製薬会社が共同作業に向けてのビジョンを打ち出す時である。

         

        「アメリカ・ファースト」ではなく、「世界人類ファースト」という発想こそが欠かせない。さもなければ、人類共倒れという最悪の事態に陥ることもあり得る。外交に弱いと危惧される菅総理にとって新機軸で世界を味方につけるチャンスになるはずだ。そのためには、先ずは日本の有する対米、対中、対朝鮮半島カードを総ざらいし、掛け声倒れに終わってきた安倍外交の弱点を乗り越えて欲しいものだ。

         

         

         

         

         

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        著者:浜田和幸

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