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        ソムリエの追言 84「イメージを打ち破れ シャンパーニュ」
         
        ________________________________________
        ワインを楽器かなにかと勘違いしているのか。
        シャンパーニュで「ぽんッ」と音をさせるのは下品だ!・・・? 
        
        
        私がレストランで働いていた時、音をたてずに抜くのは当たり前のマナーだと教わりました。コルクをゆっくりとずらして「しゅー」と横からガスを抜く音は「シャンパンのため息」と呼ばれ、その音が小さいほど良い、とされています。
        それをスマートにこなすのがソムリエの腕の見せ所でもありました。 
        
        お祝いのセレモニーなど特別な場面はさておき、 「ぽんッ」と大きな音を立てるとガスが一気に抜けてしまい、 味わいが格段に落ちると当時の先輩からも常々聞かされていました。
        「シャンパーニュは繊細だから、扱いも丁寧に!」と。
        
        ところが先日、輸入業者向けのシャンパーニュ試飲会に参加した時の事です。
        私なんかよりも10,000回は多くシャンパーニュを開けてきたであろう、シャンパン・メゾンのオーナー達が、あっちでもこっちでもポンポン音を立てながら栓を抜いているのです。 
        
        気になったので聞いてみると、
        「地元(シャンパーニュ地方)では、そんな事気にしてワイン飲んでるヤツは一人もいないよ!」
        あっけらかんと言われてしまいました。
        シャンパーニュの生産者といえば気難しくて頑固者で、間違えて音なんか出そうものなら怒鳴りつけられそうなイメージを勝手に持っていた私ですが、 案外ヨーロッパではシャンパーニュがもっと気さくに飲まれているのかもしれません。 
        
        【シャンパーニュの特徴】
        世界にあまたある発泡酒とシャンパーニュの違い、それはふくよかな酵母の香りと味わい、持続性の長い泡立ち。この二点につきると思います。 
        
        
        酵母の香りは、磯の香り、パンの香り、バターの香りなどと表現されます。 葡萄から出来ているお酒なのに何とも不思議です。 
        
        MICHIGAMIワインのシャンパーニュ・ジョヴェール・ジラルダンは細かい泡が金色の液体を背景にして、長いネックレスのように上昇します。 
        
        シャンパーニュの泡はキメが細かく、フルートグラスから立ち登る一筋の泡のラインは、見ているだけで楽しい気分にさせてくれます。この泡を真珠や星にたとえる辺りが、なんともロマンチック。泡を楽しむという意味では、シャンパーニュに肩を並べるワインは、今後も出てこないのではないかと思います。 
        
        【シャンパン・サベラージュは本当に難しい!?】
        シャンパーニュと言うとお祝いやセレモニーで飲まれる事が多く、 この泡の気圧を利用して景気良く抜いた方が、その場が盛り上がる事も多いにあります。 
        
        
        その究極はやはり、「シャンパン・サベラージュ」ではないでしょうか? ホテルの披露宴などで、ソムリエが仰々しく登場して大きなサーベルでボトルネックを切り飛ばすパフォーマンスです。 
        
        18世紀後半、フランス革命戦争に勝利して凱旋帰国したナポレオンが、 シャンパンをサーベルでビンごと切り落としたのが始まりだとか。 その後ヨーロッパでは、航海の無事や幸運を祈る儀式として用いられたそうです。 
        
        さてこのシャンパン・サベラージュ。
        ソムリエ・コートに身を包んだプロのソムリエが 「世紀の一瞬をご覧ください」と言わんばかりに 仰々しくサーベルを振りかざして開けるのがお決まりのパターンですが、 実は、そんなに難しくないのです。 私も何度か経験した事がありますが、 3,4回練習すればコツが掴めます。
        
        ポイントは、
        ・ネック部を覆っているシールを剥がして、直前に留め金もはずす
        ・ボトルの継ぎ目のラインに沿ってすばやくサーベルを滑らせる
        ・力みすぎず、ボトルネックのでっぱりとサーベルが直角にぶつかるように振りぬく
        この三つです。
        
        ただし、失敗すると相当恥ずかしい(実は私も失敗した事が・・)
        
        成功してもサーベルの衝撃でかなりの量のシャンパンが吹き零れてしまうので、 披露する場面はやはり限られてくると思います。 
        
        ちなみに前述の、「シャンパンは繊細だから・・・」が口癖の先輩は、
        自他共に認めるシャンパン・サベラージュの名手でした。
        難しそうに見せる演技の「名手」です。 
        
        【デザートの6C】
        シャンパーニュがやわらかい泡の質感や喉越しから、 食前酒として相応しいのは周知の事です。 しかし、大手シャンパン・メーカーのブランド戦略も手伝ってか、 日本のホテル・レストランでは 「シャンパン=食前酒」というイメージの押し付けが強すぎるように感じるのです。 
        
        私は披露宴などに呼ばれて、乾杯酒にシャンパーニュが出てきて、しかもそれが美味しかったりすると、後はほとんどずっーと最後までシャンパーニュを飲んでいます。 途中、メインデッシュのお肉辺りで赤に替える事もありますが、 デザートの時にはまたシャンパーニュに戻ります。
        
        ヨーロッパ、特にフランスではシャンパーニュは食後酒としても、
        当たり前に飲まれる事もあります。 
        
        レストランでは6Cといって、
        デザート選びに迷った時に便利な6つの「C」があると言われています。
        ・シャンパーニュ(Champagne)
        ・チーズ(Cheese)
        ・チョコレート(Chocolate)
        ・コーヒー(Coffee)
        ・コニャック(Cognac)
        ・シガー(Cigar) 
        
        食後にシャンパーニュやシガーを嗜むのは、あまり馴染みがありませんが、 この中から二つ三つ好みに合ったものを選べば、レストランではかなりの上級者と目される事間違いなしです! 特に、食後のシャンパーニュはなかなかお洒落です。 
        
        私がレストランで働いていた時にも、 「おっ、この人は通だな!」 と思わせるオーダーをいただいた事があります。 その方は葉巻を燻らし、ディジェスティフ(食後酒)のブランデーを楽しみながら、
        チェイサー替りにシャンパーニュをオーダーしたのです。 
        
        よっぽどお酒に強くないと出来ない荒業ですが、 その仕草がなんとも様になっていて、 この貫禄は真似できないなぁと感心したのを覚えています。 
        
        シャンパン=食前酒というイメージにとらわれず、
        自分なりの美味しい飲み方を見つけてみてはいかがでしょうか?
        
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