2021年4月2日発行
世界の最新トレンドとビジネスチャンス
第243回
人類は進化する人工知能(AI)との戦いに勝てるのか?(後編)
浜田和幸
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こうした動きは、外交、経済、技術といった各要素を一体化する戦略が世界の趨勢となりつつあることが影響している。さまざまな防衛装備品をステルス化・軽量化・無人化するためには、新素材の研究開発も欠かせない。
こうした分野でも、日米の官民挙げての協力が要となる。
とはいえ、こうした分野で技術の蓄積のある日本企業が
アメリカ企業の傘下に入りつつある現状はもったいないといわざるを得ない。
日本政府による自国企業支援策の強化が望まれる。
現在、日本はアジアの近隣諸国に対し、気象海洋業務・
航空気象分野・潜水医学といった分野で、防災や災害時の
救援活動を視野に人材育成や技術移転協力を行っている。
こうした分野においても、ロボット関連技術は極めて重要な役割を果たすものと期待が高まる一方だ。
言うまでもなく、原発の事故現場など危険な環境下では
ロボットの活躍が欠かせない。
その半面、ロボット兵士に対する不安や懐疑的な見方も
残っている。
まさに、故ホーキング博士が懸念したところである。
確かに、瞬発力や破壊力は人間の比ではないだろうが、感情を伴わないロボットの行動には、人間らしさが欠落しているために、どのような行動をとるのか、予測不能の可能性もあり、人間のコントロールがどこまで効くものか、不安視する声が出るのも当然であろう。
専門家の間では「キラー・ロボットは原爆に次いで人類を
絶滅の危機に追いやる恐れをはらんでいる」との見方も広がる。
AIを身につけると、超人的な情報処理や瞬時の判断力は人間を上回るに違いないが、人間を超える存在になった
キラー・ロボットたちが、人間を支配下に置くような想定外の行動に走る可能性も否定できないからだ。
国連の場においても、キラー・ロボットの導入に関して、
慎重な対応を求める声に耳を傾けるべきとの意見も出されているほどである。
ディズニーの夢の世界でドローンやロボットと非日常的体験を楽しむのは結構だが、現実の世界にロボットが
わが物顔で侵入してくる事態には歯止めをかけておく必要があるだろう。
故ホーキング博士に限らず、ITの先駆者であるビル・ゲイツ氏やスティーブ・ウォズニアック氏までもが「人工知能ロボットは人類の終わりを意味するかもしれない」と警鐘を鳴らしているからだ。
ノーベル文学賞に輝いた日系イギリス人作家のイシグロ・カズオ氏も同じような危機感を募らせている。
とはいえ、同氏の最新作『クララとお日さま』は人間とロボットとの愛憎物語となっており、太陽エネルギーで動く人型ロボットこと人工親友(AF)と人間との新たな出会いと
交流の可能性を示唆しているようも読み取れる。
いずれにしても、生身の兵士に代わるロボット兵士の登場は時間の問題であろう。今から備えておくべきは、そうしたキラー・ロボットに人間的感情が移植されるようになった
場合、どちらが主役の座を確保するようになるか、という
本質論である。
というのも、人間とロボットの一体化、いわゆるサイボーグやヒューマノイドが人類に取って代わる時代も間近に迫っているように思われるからだ。
2年前、サウジアラビア政府は世界で初めてロボットに
市民権を与える決定を下した。
労働力不足に悩む「アラブ世界の石油大国」では、これまで海外から優秀な人材を呼び寄せていたが、厳格なイスラム教のため、束縛を嫌がる欧米人に敬遠され、近年では必要な
人材の確保が難しくなってきた。そこで苦肉の策として、
ロボットに正式な雇用の場を提供することにしたわけだろうが、果たして、うまく行くのだろうか。
中国では自らが設計、製造した「理想のロボット」と結婚を認められたエンジニアも登場している。
こうしたロボット社会が広がれば、「人間に任せていたのでは地球環境は悪化する一方だ。今こそ、われわれロボットが地球を守るため、立ち上がらねば」という“ロボット革命”も起こるかも知れない。そうした近未来シナリオも考慮しておくべきだろう。なぜなら、感情を持ったロボットの研究開発も着々と進んでいるからだ。グーグルでもアマゾンでも
人間の記憶や感情をロボットに移植する研究が始まっている。
手遅れにならないように、人間とロボットの境界線を明確化させておく必要がある。
「あくまで人間が主役であること」を肝に銘じておかねば
ならない。
さもなければ、ロボットに主役の座を奪われてしまう日も
遠くないのではないか。
故ホーキング博士があの世で「それ見たことか。
俺が予言した通りだろう」と嘲笑っているようだ。
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