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        国際アジア共同体学会国際シンポジウム

        「米中新冷戦と日本の生き方~一帯一路構想・新疆ウイグル問題を中心に」

        に参加して

         

        中川十郎(国際アジア共同体学会学術顧問・名古屋市立大学22世紀研究所特任教授)

         

        鳩山友紀夫元首相、孔鉉祐 駐日中国特命全権大使、西原春夫早稲田大学元総長ほか各分野のそうそうたる研究者がご参加された本国際シンポジウムは創立以来15年を数える学会の研究会の中でも特に充実した会議であった。

        会議を準備された進藤栄一学会会長、朱建栄副理事長ならびに関係各位のご尽力に深謝申し上げたい。

         

        • 日本の対中国論調はマスコミも含めて偏っているのではないか。日本のマスコミの情報源は欧米、とくに米国からの情報が主流をなしているように見える。情報は注意しないと、意図的に操作された情報(Manipulated Information)が多く、情報の収集、分析には十分注意することが必要だと痛感された。さらに情報は現場情報が重要だ。情報発生の現場で情報を公平に収集、分析することが大切である。

        この点、中国を機会あるごとに訪問され、日中関係を冷静に公平に考察されている鳩山元首相、日本に駐在経験が長く、日中関係に通じておられる孔大使、過去40年で89回も訪中し、特にご専門の法的観点から中国を長年研究。2022年2月22日22時22分にアジア首脳のアジア平和宣言を目指し、ご尽力中の西原早稲田大学元総長などの日中関係に関するご提言は含蓄があり情報論的にも公平で傾聴に値する至言であった。

        遣唐使とも深い関係のあった聖徳太子の『和をもって尊しとなす』、孫文の『覇道でなく正道を求むべし』の先哲の言葉を今一度、我々はかみしめるべきではないだろうか。

        • 鳩山元首相は「民主主義対専制主義」「価値観外交」という対立概念でなく、対立をコ

        ントロール、制御し、価値観の違う国と仲良くし、米中平和共存に努力すべきだと強調された。日本が積極的に東アジアミサイル軍縮にもバッファーとして努力すべきこと。

        尖閣の領土問題は棚に上げてお互いに接続水域に入らないことなど提言された。

        筆者の郷里の大先輩二階堂 進・元官房長官は大平外務大臣とともに50年前の日中国交回復交渉で田中首相を補佐し、活躍されたが、後年、尖閣問題は棚上げし、解決は将来の世代に任せると事あるごとに話しておられたのを懐かしく思い出す。

        かって、筆者のコロンビア大学時代の恩師ノーベル経済学賞受賞のロバート・マンデル教授と深圳、香港を訪問時、同教授が「なぜ日本は無人の尖閣島問題で中国といがみ合っているのか。近い将来、米国に匹敵するか、それを凌駕するかもしれない一衣帯水の中国と日本は仲良くし、お互いに繁栄する努力をすべきではないか」とつぶやかれた

        ことを思い出している。

        • 日本語に堪能で日中関係ベテランの孔大使のご講演もすばらしく、深い感銘を受けた。日中間の過去の4つの交換文書の精神にかんがみ、日中は多国間の平和希求、コロナ対策、気候変動問題、テロ対策などお互いに開かれた対応をすることが望まれる。

        米中対立は新冷戦思考でなく、地政学的現実を見極め、戦略的に対応し、対話により中米関係を正しいものに戻すことが必要だ。日中平和友好条約の趣旨にのっとり日本が戦略的な自主性を発揮、建設的な役割を果たし、日中国交回復50周年の2022年を目指し強靭な日中関係を構築することを期待するとの提言は、われわれ日本人が傾聴すべき貴重な提言だ。

        • 石井 明・東大名誉教授の「一帯一路構想と新疆問題を歴史の中で考える」は長年にわたり中央アジアを研究しておられるだけあり、有意義な講演だった。一帯一路の背景に「上海協力機構(SCO)」の影響もあるとの発言には筆者も国際マーケテイングの観点から1996年の「上海ファイブ」の時代以来25年以上SCOを研究しているところより、参考になるところ多く、感謝している。

        実務家として長年、一帯一路を物流面から研究しておられる福山秀夫氏の発表もわれわれの予想以上のスピードでユーラシア、アジア間の物流が現実的に動き出していることを痛感させられた。

        国際法務の観点から一帯一路を考究しておられる範教授の発表もリスクマネージメントの観点からも論理的で有益であった。

        唱新教授の「中国ハイテク化と米国経済ファブレス化から見た中米冷戦の行方」も長年のユニークな研究の成果で裨益をうけた。

        林亮教授の「習近平外交の奮発有為戦略と東アジア安全保障・一帯一路構想」も長年の研究の成果で有益であった。

        • 第3部「新疆ウイグル問題と台湾問題をどう読み解いていくのか」は現場情報をもとに議論され極めて有益であった。

        特に大西 広教授の現場情報は新疆ウイグル問題の実情に迫れ、在日ウイグル人のパハルデイン氏の発言と合わせ、情報を多面的に収集、分析することの重要性を喚起させられた。第3部ではこのほかに丸川知雄東大教授の「新疆の人口問題の捉え方」、村田忠喜・横浜国大名誉教授の「新疆ウイグル論を検証するー”ジェノサイド”論批判」は長年の地味な研究の成果で、現地の実情を理解する上で有益で感銘を受けた。

        バルチ・バハルデイン在日ウイグル人、中日青年産学連合会幹事の新疆の現場情報は今後の新疆問題の実情を理解するうえで得難い有益な現場情報で、フェイク情報やSNS情報が氾濫している現状下、情報の蒐集、分析には今後大いに留意する必要があると痛感した次第だ。

        岡田 充・共同通信客員編集委員の「台湾有事の虚構を暴く」は30年にわたり情報論を研究している筆者にとって、そのすばらしい情報分析に関して特に感動した。

        渋谷 裕先生のG7とエネルギー面からのコメントはユニークで有益であった。以上

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