奥 義久の映画鑑賞記
2021年11月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2021/11/05「エターナルズ」☆☆☆★
アベンジャーズがいなくなった地球が新たに脅威にさらされた時、数千年の時を経て地球の守護神エターナルズが現れた。地球滅亡までのカウントダウンが始まった中、バラバラになっていたエターナルズが結集した。だが、そこには衝撃の真実も待ち受けていた。
新しいマーベルのヒーローチームを映像化するのは「ノマドランド」でアカデミー賞監督賞を受賞したクロエ・ジャオ、主演はジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、マ・ドンソク等の多彩な顔触れが揃った。アベンジャーズに劣らない新ヒーローの楽しめるエンターテインメント大作が生まれた。
2021/11/06「リスペクト」☆☆☆★
“史上最も偉大な100人のシンガー”の第1位に選ばれた伝説の歌姫アレサ・フランクリンの一生を描いた音楽エンターテインメント作品が誕生した。アレサ・フランクリンは18回のグラミー賞を受賞している歌唱力の天才である。そのアレサを演じるジェニファー・ハドソンもグラミー賞を獲得した素晴らしい歌唱力を持っているとともに、演技力も「ドリームガールズ」でアカデミー賞助演女優賞を獲得している。アレサを演じるのにジェニファーほどの適任者はいないと思える。アレサの父親役には名優フォレスト・ウィテカーが熱演している。
2021/11/11「ほんとうのピノッキオ」☆☆☆
1883年に発表されたイタリアの児童文学“ピノッキオの冒険”は
ディズニーのアニメで広く世に知られている。本作は原作に忠実に悪童ピノッキオの旅で起こすトラブルを素晴らしい映像美で描いた大人のファンタジーである。いささかエンターテインメント性に欠けているが、ピノッキオのメイクアップはアカデミー賞にノミネートされており、興味のある人は一見の価値はある。
2021/11/13「フォーリング 50年間の想い出」☆☆☆
「ロード・オブ・ザ・リング」「グリーンブック」で知られる名優ヴィゴ・モーテンセンの初監督作品の話題作。認知症を抱えた父親ウィリスと再会した息子ジョンは、保守的で横暴な父とはそりが合わなかったが父の世話をする中で過去の想い出が交差しながら親子の絆を再生していく。ウィリスにランス・ヘンリクセン、ジョンにはヴィゴ・モーテンセンが演じている。クリント・イーストウッド作品を思わせるヒューマンドラマの誕生。
2021/11/14「カオス・ウォーキング」☆☆☆
パトリック・ネスの傑作SF小説を「ボーン・アイデンティティー」のダグ・リーマン監督が映画化。主演は「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランドと「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でヒロインを演じたデイジー・リドリー。二人の敵役を名優マッツ・ミケルソンが演じている。西暦2257年汚染された地球を捨てて移住した〈ニューワールド〉では、頭の中で考えたことで意思疎通が出来る世界で女は一人残らず死に絶えていた。ある日宇宙船が墜落し、生存者が女一人であった。村の首長は女を利用して母船を呼び寄せようと考えていたが、村の若者トッドは彼女を守ろうと逃避行を続ける。思考での会話という新感覚と男だけの謎の世界というミステリーで描くSFエンターテインメントの面白さが堪能出来る作品。
「アイス・ロード」☆☆☆
爆発事故で26人の作業員が地下に閉じ込められた。救出装置を3台のトラックで運ぶ事になるが、30時間のタイムリミットと氷ついた湖の道を横切るリスクがある。さらには、この事故のもみ消しを図る一団の妨害工作が待ち受けていた。アクションスターのリーアム・ニーソン主演のノンストップ・アクション。名作「アルマゲドン」の脚本家の参加により、見ごたえのある作品に仕上がっている。
2021/11/18「皮膚を売った男」☆☆☆☆
タトゥー作品“TIM”に影響を受けて作られた作品。シリア難民サムは大金と自由を得るために、背中をキャンバス代わりに売り渡した。自由を得て、離れ離れの恋人を取り戻そうと考えるが思わぬ出来事からサムは精神的に追い詰められていく。サムを演じるのは映画初出演となるヤヤ・マヘイニ、恋人役にフランスの舞台女優ディア・リアン、イタリアの人気女優モニカ・ベルッチがサムのエージェント役を演じている。シリア難民の悲惨さと自由を考えさせられる作品だが、決して政治ドラマでなく男の一途な恋人への想いを描いたラブロマンス作品といえる。珍しいチュニジア映画だが、フランス、ベルギー等との合作であり、映画の中でもアラビア語、フランス語、英語が使われている。
2021/11/20「囚人ディリ」☆☆☆★
インド映画の定番のダンスと歌のシーン、回想シーンがない本格的アクション・エンターテインメント作品。主人公ディリは妻を暴漢から守るため殺人を犯してしまい10年の服役を終えたばかりだったが、運悪く強盗団が警察本部を襲う事件に巻き込まれてしまう。ディリを演じるのは、タミル語映画界の御三家の一人スーリヤの弟カールティで、本作でブレイクした俳優である。インド映画では冒頭に書いた歌とダンスの場面があることで、物語が中断されてしまっていたが、本作はそのシーンがないためにノンストップ・アクションが楽しめる。インド映画の新たなチャレンジを歓迎したい。
2021/11/23「モスル あるSWAT部隊の戦い」☆☆☆★
イラクに実在するSWAT部隊をモデルに「アベンジャーズ」の監督ルッソ兄弟がプロデュースした本格戦争映画。荒廃したイラク第2の都市モスルでイラクSWAT部隊11名は本部からの命令を無視して独自の戦いを行っていた。その目的は?途中ISの襲撃から救われた新人警察官カーワを仲間に入れて、部隊を率いるジャーセム少佐は目的遂行前にISの拠点を襲撃する。ジャーセム少佐を演じるのはスヘール・ダッバーシ、カーワにはアダム・ベッサ。アダムはチュニジア出身の若手有望俳優だが、ジャーセム少佐役をはじめ部隊のキャストはイラク人キャストで構成され、撮影前から軍事訓練を受け、ドキュメンタリーと思える本物の戦闘シーンを見せている。90%が戦闘シーンの本作だが、彼らの目的が達成された時に感動が伝わる秀作である。
「ファイター、北からの挑戦者」☆☆☆
韓国で暮らす脱北者3万人強と言われている。本作は未来を信じ脱北者に勇気を与える作品である。韓国ソウルで暮らすリ・ジナは中国に残した父を呼び寄せる為に食堂と清掃員の掛け持ちをしてお金を稼いでいた。ある日、清掃の仕事先のボクシングジムで館長との出会いがジナの運命を大きく変えていく。ジナを演じるのは大ヒットドラマ「愛の不時着」で存在感をみせていたイム・ソンミ、女優歴14年目の初主演だが、期待に応えて釜山国際映画祭で主演女優賞を受賞した。脚本が今一つのため映画の面白さが欠けているのが残念。
2021/11/25「信虎」☆☆☆
武田信玄公生誕500年記念映画として、信玄亡き後追放されていた信玄の父信虎を主人公に制作した作品。信虎は信玄の危篤を知ると甲斐帰国を目指すが信濃高遠城で足止めされる。ここで“甲陽軍鑑”にも描かれている勝頼との対面がなされる。信虎が主導権を握る事は出来なかったが、甲斐の国を守るため、上杉謙信、北条氏直らに書状を送り、後事を託し大往生を遂げる。信虎を演じるのは寺田農、他に榎木孝明、永島敏行、渡辺裕之、隆大介、谷村美月が共演している。信虎の晩年にスポットを当てた事に興味は持てるが出来ばえは今一の作品。
2021/11/27「ディア・エヴァン・ハンセン」☆☆☆☆
2016年のブロードウェイ初演、翌年トニー賞6部門を獲得し、チェットは連日完売の大ヒット・ミュージカルの映画化。物語は主人公エヴァン・ハンセンがうつ病治療のため自分宛に書いた手紙を同級生のコナーに持ち去られてしまう。翌日コナーが自死して、手紙を持ってた事から、コナーの両親に息子のことを話して欲しいと頼まれる。本当のことが言えず両親への思いやりの嘘からエヴァンはコナーの親友として、コナーの追悼集会でも話をすることになる。その話がSNSで拡散され、エヴァンは注目の的となるが、思いがけない事件に発展していく。エヴァンを演じるのは、ブロードウェイ公演初代エヴァン役のベン・プラット、エヴァンの母親役にジュリアン・ムーア、コナーの母親役にエイミー・アダムスの2大女優が競演している。音楽スタッフは「ラ・ラ・ランド」のチームで本作でもグラミー賞を受賞している。孤独に悩む都会の若者に“ひとりじゃない”というメッセージが込められた“You Will
Be Found”は心に残る素晴らしい曲。若者たちに見て欲しい映画である。
「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」☆☆☆
2017年一枚の絵が史上最高額で落札された。日本円で約510億円。本作は通称男性版モナリザと言われる“サルバート・ムンディ”の
発見・絵画の修復・ルーブル美術館による化学検証・落札者は誰か?等々のミステリアスなドキュメンタリーである。ルーブルはこの絵をレオナルド・ダ・ヴィンチの描いたものと認証したが、今なお、ダ・ヴィンチの弟子の作品という説を信じるものもいる。この映画の鑑賞した人々は、どのような印象を持つのだろうか?非常に興味深いミステリー・ドキュメンタリー映画といえる。