BIS論壇 No.370『IMFの最新世界経済見通し』中川十郎2022年1月27日
世界銀行の最新『世界経済見通し(GEP)』1月11日の発表に次いで、1月25日、IMF(国際通貨基金)が最新経済見通しを発表した。世界の実質経済成長率は22年には4.4%に減速すると予想。(世銀の予測は4.1%)これは21年の5.9%に比べ、1・5%の減小だ。23年には世界経済はさらに悪化し、成長率は3.8%に減速すると予測。(世銀は3.2%と予想)。
世銀の方がIMFよりも厳しい見方をしている。筆者は世銀の方が発展途上国の予測も含め、妥当ではないかと感じている。一方、IMFは変異株や二大経済国の米国、中国の減速、とくに米国のインフレが世界経済発展の重荷になると指摘している。
22年度の先進国は4.4%成長。米国4%、ユーロ圏3.9%。新興・途上国4.8%、中国4.8%、インドが21年に9%、22年も9%と最大の伸びを示すと予測。
これに引換え、日本は21年1.6%、22年 3.3%と先進国中で最低の伸びを予測。一方、日本の賃金もOECDの中で過去30年、最低の伸びで日本の衰退は止まるところを知らない。 岸田政権は3%の伸びを期待している。だが、これではとても先進他国に追いつけない状態だ。22年の予測はブラジルの0.3%に次いで日本は3.3%の成長で主要国で最低の成長率だ。IMFは22年の物価上昇率を3.9%と予測。これでは日本の実質成長率は0.6%マイナスとなる由々しき事態だ。かかる事態にも関わらず、日本の官民の認識はまさに「井の中の蛙」の状態で、日本の衰退の現状について、ほとんど認識しておらず、危機意識がなく、落ちるに任せており、日本のガラパゴス化は留まるとは思えない嘆かわしい状態だ。
かかる状況下、国土交通省の統計書き換え不祥事が発生。2020年度の日本のGDPに4兆円の過大計上がなされていると1月26日の朝日新聞が警告を発している。だが、岸田首相は馬耳東風だ。厚生省、財務省に端を発する書き換え問題は、総務省、国土交通省にもおよび、日本の行政府・内閣の体たらくには落胆を禁じ得ない。
2028~30年ごろにはGDPで中国が米国を抜き、インドが日本を抜き去るとの見方が現実味を帯びてきている。日本の真剣な対応策が強く望まれる。
2022年は高インフレが長引く米国と、北京冬季オリンピックを控え、新型コロナ封じ込めを優先する中国の経済成長率が下ぶれする。IMFは新たな変異株に警戒を示し、さらにウクライナや台湾を念頭に、東欧や東アジアの地政学リスクにも言及している。
1月 17日召集の通常国会の論点の一つが経済安全保障だ。同盟国・米国と中国包囲網を築く作戦のようだ。米国に従う日本の中国・香港向け半導体輸出は19年、20年と前年割れした。逆に、日本企業のシェアーを奪う形で、米国からの中国・香港向け半導体輸出は急増しているという。(日経1月12日)。日本が得意とする半導体メモリーも米国は大きく伸ばしている。安全保障と自由貿易を両立させ、日本の国益を守る戦略が強く求められている。