奥 義久の映画鑑賞記
2022年3月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2022/03/01「ハード・ヒット 発信制限」☆☆☆★
銀行支店長ソンギュの車に爆弾が仕掛けられた。運転席の下に仕掛けられた爆弾は車を降りると爆発。犯人は多額の金額を要求。後部座席は二人の子供が乗っており、絶対絶命。主演の支店長にチョ・ウジン、娘役イ・ジェイン。二人の好演が光る。ノンストップ・アクションの醍醐味が堪能出来る作品。
2022/03/03「選ばなかったみち」☆☆☆
本作はサリー・ポッター監督が若年性認知症の弟の介護の経験をもとに書き下ろした作品。映画では父娘の設定の24時間の物語になっている。認知症の父は過去の記憶の初恋とギリシャ一人旅と現在の境遇を並行して描いている。この難役をオスカー俳優のハビエル・バルデム、娘役をエル・ファニングが演じている。二人の実力派俳優の真っ向勝負の演技は素晴らしいが、映画自体は重苦しさが残る作品である。
2022/03/04「余命10年」☆☆☆★
難病を抱えた作家小坂流加の自伝ベストセラー作品の映画化。余命10年のまつりの退院から始まり、同窓会で出会った和人との切ない愛の物語を軸にまつりの10年を描いている。まつり役の小松菜奈、和人役の坂口健太郎の初共演だが、若手のTOPクラスの演技派だけに息もピッタリで、泣かせる感動作に作りあげている。
2022/03/13「ザ・バットマン」☆☆☆☆
1939年にコミックで誕生したバットマンはコミック史上もっとも頻繁に映画化されている。近年では1989年、92年にティム・バートン監督、マイケル・キートン主演の2作とクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」シリーズ3作が有名である。本作は2017年製作の「ジャスティス・リーグ」以来5年ぶりの新作となる。「猿の惑星:新世紀」のマット・リーヴス監督が悪のはびこる街・ゴッサムシティでバットマンとなった青年ブルース・ウェインが史上最強の知能犯リドラーと対決する物語である。暗黒の街が舞台のため暗いモノトーンカラーで描いているが、後のキャットウーマンとの出会い等のラブストーリーもある。コミックの映画化作品の中でも大人の作品として見ごたえのあるエンターテインメント作品になっている。今作でバットマンを演じるのは、ロバート・パティンソン、セリーナ(キャットウーマン)役はゾーイ・クラヴィッツ。他にコリン・ファレルがペンギン役、ジェフリー・ライトが警察官役を演じている。
2022/03/20「ガンパウダー・ミルクシェイク」☆☆☆★
殺し屋だった母親は、娘サムを組織に預けて逃亡する。成長したサムは育てられた環境から凄腕の殺し屋になっていたが、ある時ターゲットの娘を助けたことから組織に命を狙われるはめになる。ハードボイルドアクションの巨匠から前作で才能を認められたナヴォット・パプシャド監督がタランティーノ監督に負けないバイオレンスアクションを作り上げた。主役のサムを演じるカレン・ギランの可愛い顔してクールな殺し屋は人気沸騰?
2020/03/25「ベルファスト」☆☆☆☆☆
本年度アカデミー7部門ノミネートの最高傑作。北アイルランドのベルファスト出身のケネス・ブラナーが自身の幼少期を投影して描いた作品。9歳の少年バディは大好き町で突然プロテスタントの過激集団からカトリック住民への暴動を目にする。住民すべてが家族だった町は、この日から恐怖の街となる。ロンドンへの移住を考える父に対して、優しい祖父母、友達、初恋の女の子の居る街は離れがたかった。家族は決断を迫られる。本作の主人公バディは新人ジュード・ヒル。祖母役は大女優ジュディ・デンチ、両親を演じるジェイミー・ドーソンとカトリーヌ・パルマや祖父役のキアラン・ハインズをはじめ主要キャストは北アイルランドの俳優たちである。本作は当時のベルファストのイメージがモノクロ映画に適しているとして制作されている。(劇中の映画「チキチキバンバン」はカラー作品なので、カラーを使用、「真昼の決斗」「リバティ・バランスを射った男」はモノクロ作品である。)
2022/03/26「オートクチュール」☆☆☆★
ディオールのアトリエを舞台に引退を目前としたお針子と手先の器用な移民の娘の人生が交差する人生賛歌の物語。ベテランのお針子役はフランスの大女優ナタリー・パイ、弟子となる若い娘役には「フレンチ・ディスパッチ」で注目をあびたリナ・クリード。フランス映画らしい洒落た感覚を楽しめる作品。
「アンビュランス」☆☆☆☆
「アルマゲドン」「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ監督の5年ぶり最新作。帰還兵ウィルは妻の治療費を稼ぐため犯罪者の兄ダニーの銀行強盗を手伝う事にする。誰も殺さないはずが予期せぬ出来事から激しい銃撃戦に巻き込まれ、逃走車として奪ったのは救急車。ロスの町で救急車とパトカーのカーチェイスが始まる。見せ場たっぷりのノンストップ・アクションは、これぞアクション映画といえる大満足の映画。主人公ダニーにジェイク・ギレンホール、人質となる救命士にエイザ・ゴンザレスが扮している。
2022/03/28「二トラム」☆☆☆☆
1976年4月28日にタスマニア島ポート・アーサーで起きた無差別殺人事件を題材にした作品。ポート・アーサー事件を起こした二トラムの半生を描き、何故無差別殺人事件を起こしたのかを追求している。孤独と劣等感の中で生きて来た男が中年の大金持ちの女性ヘレンと出会い、人生が変わったかに見えたがヘレンの事故死をきっかけに屈折した男の本性が現れる。映画では惨たらしい事件を起こす直前で終わっている。この屈折した男を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技は今年度のカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得した。作品もオーストラリア・アカデミー賞8部門受賞の高評価を得た。
2022/03/31「ナイトメア・アリー」☆☆☆☆★
「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞4冠に輝いたギレルモ・デル・トロ監督の最新作。本作ではショービジネス界の華やかな光の裏にある人間の欲望を描いている。主人公スタンはカーニバルの一座で読心術を身につけ、2年後カリスマ性のあるショーマンとして人気を得ていた。ショーの観客として知り合った心理学者リリスとの出会いがスタンを破滅へと導いていく。スタン役にブラッドリー・クーパー、リリス博士には2度のオスカーに輝くケイト・ブランシェット、スタンのパートナーにルーニー・マーラ、他に演技派のトニ・コレット、ウィリアム・デフォーが共演している。本作は残念ながらアカデミー賞獲得は出来なかったが、本格的サスペンス・スリラーとして高評価される映画である。