7.「国家安全保障局(NSS)経済班」中川十郎 2021年12月1日
政府の国家安全保障局に経済安全保障の司令塔を担う「経済班」が設置され、4月1日で1年がたった。政権内では国家安全保障戦略を改定し、経済安保を初めて盛り込む案が浮上しているという。(朝日新聞3月31日)
国家安全保障局は約90人、経済班は約20人で、総括調整班、政策第1,2,3班、戦略企画班、情報班に次ぐ規模だ。経済安保政策は大半が中国を見据えたものだとのことである。この経済班は新型コロナウイルスの水際対策も担っているという。
政府の主な経済安全保障政策は 1)安全保障上重要な土地の取引の規制 2)5Gやドローンなど国産開発 3)外資規制対象に医薬品と医療機器を追加 4)ドローンの政府調達から中国製を排除 5)政府が調査研究を民間委託する際の審査を厳格化し、米中が覇権を争う中、「安全保障」と「経済」の融合を目指すという。(朝日3月31日)
政府は経済班を30人に増員するというが、この小人数で、コロナ対策も含めた諸業務をわずか30人でできるなど不可能に近いのではないか。
政府は増員にあたり、厚労省のほか、農林水産省や水産庁の職員を投入することも検討。食糧危機への対応や、尖閣諸島周辺海域での中国公船の領海侵入を踏まえた海洋権益保護も強化するという。(SankeiBiz 2020年6月1日)
高々30人ぐらいの経済班でこのような多様な範囲の対策が可能なのか。人員的にも不可能だと思われる。そもそも日本政府の情報戦略は稚拙すぎると思われる。情報戦略に対する認識があまりにもお粗末すぎるということだ。
米国ではCIA(中央情報局)を中心とする情報機関は21、575の人員を擁し、年間150億ドル(約1兆5000億円)の予算で活動している。経済情報についても30年も前の1992年にゲーツCIA長官が業務の4割、予算の3分の2(すなはち1兆円)を経済分野にあてることを決定。さらに長官のターナー海軍提督は「冷戦後は軍事情報(ミリタリーインテリジェンス)よりも経済情報(ビジネスインテリジェンス)が国家の命運を決める」と唱え、特に日本
およびヨーロッパの経済情報収集を開始した。
日本では内閣情報官の総理大臣への直接報告は週1回、20~30分だとのことだ。米国ではCIA長官の大統領への世界政治経済報告は毎朝、1時間行われているという。ここでも日本政府の情報軽視、情報音痴の実態が表れている。
コロナ対策での内閣の後手、後手の対応ぶりを見ても、情報の収集、分析、活用の初歩
的対応がおろそかになっており、日本の情報後進国ぶりは目を覆うばかりだ。