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        ウクライナ紛争とロシアの国連での拒否権

         

        2022年3月6日

        元国連大使 赤阪清隆

        前略、

         ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国連憲章違反で、断じて許せない暴挙です。連日のニュースを見るにつけ、怒りがこみあげてきて、腹の虫がおさまりません。ウクライナの首都キエフには、20数年前に一度だけ訪れたことがあります。

        街に人はまばらなのに、立派な地下鉄があるので驚いた思い出があります。その地下鉄が、ロシア軍による爆撃を避けるためのキエフ住民の防空壕となっているとのニュースに、心を痛めております。

         

         文明が進んだはずのヨーロッパで、このような野蛮な戦争が展開されるとは、心底驚きです。メルケル前独首相は、プーチンのことを、21世紀にあって19世紀型の方法を使う指導者だと評したことがあるようです。元外交官で評論家の宮家邦彦氏は、

        「最初の4日間で、ウクライナは悲劇の主人公となり、セレンスキー・ウクライナ大統領は英雄となり、ロシアの名声は地に堕ち、

        プーチン大統領は「悪の権化」と化した。

        ロシアは「得るもの」よりも「失うもの」のほうが大きいだろう」と喝破されています。慧眼(けいがん)ですね。

         

         それで、今回の「話のタネ」は、現下の「ウクライナ危機」ですが、ロシアや東欧の政治、軍事事情は専門家にお任せして、

        この危機に対する国連の対応にしぼってお話させていただきます。結論を先に申し上げれば、これまでのところ、国連は今回の危機に際して、様々な制約を抱えながらもやれることは精力的によくやっている気がします。

        確かに、国際の平和と安全の維持が任務の安保理は、

        ロシアの拒否権のために機能不全に陥っていると言えるでしょう。しかし、これは想定内のことで、今さらこの時点で拒否権云々を

        議論しても仕方がありません。

        安保理が、ロシアに対する非難はおろか、経済制裁や武力制裁を

        決議できなかったからといって、国連が全く無力だと決めつけるのは早すぎます。

         

         それよりも注目されるのは、世界の国々を結集し、国際的な世論を作り上げるというソフト・パワーを持った国連が、今回はその

        能力をいかんなく発揮していると言えることです。安保理では、

        ロシアが拒否権を行使しましたので決議案は通りませんでしたが、その後、40年ぶりに安保理の要請という形で、

        国連総会の緊急特別会合が2月28日から3日間開かれました。

        その結果、ロシアの「侵略(aggression)」を最も強い言葉で

        「遺憾」とし、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求める決議が、141カ国の賛成で採択されました。反対したのは、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、およびシリアの5カ国だけ。中国、インド、キューバ、ベトナムなど35カ国は棄権しました。

        国連加盟国は全部で193カ国ですから、圧倒的多数で、ロシアの侵略が国際的な非難を浴びたと言えます。

         

         3月3日付の朝日新聞夕刊は、この決議採択を受けて、

        ウクライナの国連大使が、「国連はまだ生きている。

        私は国連を信じている。ウクライナの市民にとっても、国連を信じる理由がより増えた」と語ったと報じました。

        4日付の日経新聞社説も「これが世界の声だ」と断じ、総会決議には法的拘束力はないものの、多数の国々が結束して、ロシアの国際社会の中での孤立は鮮明だと記しています。

        バイデン米大統領は、採択後の声明で、決議は、世界の怒りの

        大きさや前例のない結束を示すものだと強調しました。

        星野俊也大阪大教授も、国連は「限られた時間で考えられることはやったと言える。満点に近い」と高く評価しています(3月4日付朝日新聞)。満点かどうかは異論があるかもしれませんが、国連の限界をよく知る人から見ると、今回は、安保理、総会とも、動きは迅速で、国連でなければできないことをやっていると高く評価してもよいのではないでしょうか。

         

         グテレス国連事務総長の動きについては、当初情勢が緊迫しても仲介に動く姿勢は見せず、状況を注視するにとどまってその動くは鈍かったと批判する声もありますが、ロシアがウクライナに侵攻してからの強いメッセージは、世界の世論を結集するのに役立っていると思います。すでに100万人以上のウクライナ人が近隣諸国に避難しており、難民緒方貞子さんがおられた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)なども、緊急支援を強化しています。

        国連人権理事会は、ロシアの武力侵攻に関連する国際人道法違反などの人権侵害について、現地で調査する独立委員会を設ける決議を採択しました。

         

         特に注目したいのは、オランダにある国際刑事裁判所(ICC)が、3月2日、39カ国の加盟国からの要請を受けて、ただちに、

        主任検察官が捜査を実施すると発表したとのニュースです。

        同裁判所は、「集団殺害犯罪」、「人道に対する犯罪」、「戦争犯罪」および「侵略犯罪」のいずれかの罪を犯した個人を、国際法に基づいて訴追処罰することができます。小田滋さんや小和田恒さんがおられた国際司法裁判所(ICJ)では当事者が国家だけなのに対し、国際刑事裁判所(ICC)では個人の犯罪を扱います。

        ですから、プーチン個人を訴追、処罰することができます。

         

         そうはいっても、ICC職員がモスクワに踏み込んでいって、

        「プーチン、逮捕する」ということができるわけではありません。国際刑事裁判所(ICC)の設立を決めた基本条約のローマ規程には、日本を含む123カ国が締約国になっていますが、

        ロシアもウクライナも、ともに締約国ではありません。

        しかし、ウクライナは、2015年にICCの管轄権を受け入れることを表明しています。

        犯罪行為の実行地または被疑者の国籍国のどちらかがローマ規程の締約国か、あるいは、どちらか一方がICCの管轄権を認めれば、ICCが管轄権を行使することができます。

        ですので、ICCの検察官が「人道に対する犯罪」、「戦争犯罪」あるいは「侵略犯罪」の容疑でプーチン起訴を決めれば、プーチンが

        ウクライナやICC加盟国の領域に入れば、彼を逮捕してICCで裁判にかけることが可能となります。

        プーチンとしては、将来海外旅行をするとしても、北朝鮮かシリアあたりにしておかないと、いつ何時逮捕されるかもしれないという、怖くて孤独な状況に置かれることになりますね。

        もはや枕を高くしては眠れないー自業自得と言いたいですね。

         

         このように、国連およびその関連機関は、目下のところ、

        ウクライナ危機に際して一所懸命に対応しているのがわかります。日本の国連に対する好感度は、2020年に29パーセントと、

        歴代最低の数字を出しました。

        昨年は、41パーセントと若干持ち直したものの、アメリカですら59パーセント、欧州の各国は軒並み6割から7割の人々が国連に高い好感度を示しているのに比べれば、日本の数字はあまりに

        低すぎます。

        確かに、安保理の改革はいつまでたっても見通しがきかず、

        常任理事国を目指す日本には不満がたまります。

        しかし、今回の危機に対する国連の動きは、メディアも大きく取り上げていますし、評価する声も見られ、これらを見て、

        「国連はなかなか良い仕事をしているじゃないか」という国連への好感度が日本でも高まることを期待しています。

         

         国連は「腐っても鯛」と言っては身もふたもありませが、

        村の鎮守の神様を祀るお社(やしろ)のようなもの。

        この普遍的な理念と理想、世界中からの加盟国を擁した国際組織にとって代われるものはありません。

        「国連なんぞつぶしてしまえ」という人も、つぶした後に、

        同じような国際的な組織を必要とする時がすぐ来るのを痛感するでしょう。今回のウクライナ危機で明確になった安保理の機能不全は、安保理改革の国際的な機運を再度高めることが期待されます。そして、何よりも、日本にとって死活的な重要性を持つ東アジアの安全保障、特に台湾統一の名のもとに中国からの侵攻が起きた場合に考えられる国際的な対応について、大事な教訓を与える演習が日々行われつつあるとも見るべきかとも思います。

        その意味で、今後ウクライナ危機がどのように展開していくのか、それに対して、国連や国際社会はどのような対応を見せるのか、

        毎日世界のニュースから目を離せません。

        心と頭、胃が痛む、深刻な「話のタネ」で恐縮です。(了)

         

        2022年3月8日

        元国連大使 谷口誠

        赤阪清隆様

         私もロシアによるウクライナ侵略は、国連憲章違反であり、

        世界の平和を守るべき立場にある常任理事国の一国であるロシアが、あのような暴挙を行つていることに対し、強い憤りを感じます。去る2月22日、外国特派員協会で、東アジアの平和を守る会の報告会があり、元早稲田大学総長西原春夫先生 明石康さん、私の3人がパネリストとして参加しました。

        外国特派員協会の幹部の方が議長を務めましたが、報告会の終わりに議長から、「現在の国連の安保理常任理事国の拒否権について、どう思うか」との質問がありました。

        明石さんは、賛成だと答え、私は現在の拒否権のあり方については反対だと答えました。これで会議は終了したのですが、その後この問題につき私から、明石さんに、どう考えても現在の安保理における5大国による拒否権のシステムは、国連の果たすべき役割を麻痺させている、現在世界が直面しているロシアのウクライナ侵略にしても、5大国の一国であるロシアが首謀者であり、国連総会で

        ロシア非難決議を141か国の賛成を得て採択しても、決定権は無く、安保理では、ロシアは拒否権を行使した。

        確かに、国連は無いと困るのですが、五大国の中に、今のロシアのプ-チンのような権力者が出てくると、国連の機能は発揮出来なくなる。これは国連が第二次世界大戦大戦から引継いだ負の遺産だと思います。1986年の国連総会で、中曾根康弘総理が、国連憲章の敵国条項(53条、77条、107条)を削除し、安保理の改革を提案しようとされたのですが、外務省が明石さんの敵国条項などは有名無実で、手を付けない方がいいとの意見を入れて、発言を控え目にした経緯があります。

        中曾根総理は、敵国条項を削除し、安保理改革を強く発言できる

        最後の総理だったのにと悔しがっておられた。

        国連憲章には、依然として敵国条項は残っており、国連改革をしたくない5大国は、今でもよく敵国条項を引用しており、敵国条項は死んではいない。外国特派員協会で話したように、世界の平和に

        貢献しているのは、必ずしも5大国に限らず、かつて敵国であつた日本、ドイツ、さらに北欧、カナダ、などの諸国も世界の平和に

        貢献していると考えます。

        共に外務省、国際機関などで働いてきたものとして、これからの

        国連のあり方について考えて行きたいと考えています。

                           元国連大使 谷口誠

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