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        BIS論壇 No. 378『経済安全保障推進法について』中川十郎 2022年5月15日

         

        自民党政権岸田内閣が準備中であった「経済安全保障推進法」が5月11日参議院本会議で賛成多数で可決され、成立した。本法案の内容について当日本ビジネスインテリジェンス協会はメリットとデメリットの面から昨年末から研究を開始。当協会と協力関係にある日本コンペテイテイブインテリジェンス学会(会長:高橋文行・日本経済大学大学院教授、情報学博士)とも共同研究を開始。昨年12月7日に第1回合同研究会を開催。今後も共同研究を継続する予定である。

         

        本法案の背景には米中貿易戦争があるとみられ、日本政府には米国への配慮があるようである。特に中国を念頭に、高度先端技術の流出防止や医薬品など経済や生活に欠かせない重要物資の確保のため、政府が企業の設備を審査するほか、先端技術研究にも関与し、罰則も設けられる。さらに警察庁が大幅に関与することについても、公正で透明な運用をどう担保するかなど、対象の不明確さ、運用などでの問題点も指摘されている。よって、今後の動向については慎重な対応が求められる。

         

        この経済安全保障推進法は「4本柱」からなり、1)医薬品や半導体などを安定的に確保するサプライチェーン(供給網)の強化;半導体や医薬品、レアアース、蓄電池など、2)サイバー攻撃に備える基幹インフラの事前審査;電気、電気通信、放送、郵便、鉄道、航空分野など広範な14分野にわたる 3)先端技術の官民協力;宇宙、海洋、 AI, 量子、 バイオなど、4)特許非公開;先端技術や高度な武器に関する特許の非公開;原子力や武器関連の技術などが含まれる。違反した企業などには最大で2年以下の懲役か100万円の罰金が科される。この法案は2023年以降に段階的に施行される見通しという。だが、米国の経済スパイ防止法の罰金、個人6500万円、懲役15年、企業13億円の罰金に比し、軽すぎる。

         

        岸田政権が本法案の整備に動いた背景には、米国と中国の先端技術をめぐる覇権争いがあるとみられている。日本でも自民党が主導し、情報や高度な技術が流失しないための法整備を高める声が強まっていたという。しかし経済界では基幹インフラの事前審査は規制色が強いとして、懸念の声がある。どの企業の何の施設が審査対象になるのか分からず、政府の恣意的な運用を問題視する見方も根強い。

         

        ウクライナ紛争にも関連し、アングロサクソン5カ国のスパイ組織、「ファイブ・アイズ」(別名「エシュロン」梯子の隠語)の動きも脚光を浴びており、日本とファイブ・アイズとの安全保障共有など話題に上がっている。だが、あくまでも日本企業の国内外の企業活動を制約しないような配慮が必要だ。当協会でも本法案の推移には十二分な監視が肝要だ。

        制作協力企業

        • ACデザイン
        • 日本クラシックソムリエ協会
        • グランソールインターナショナル
        • 草隆社

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