2.コロナ禍とウクライナ紛争
1)コロナ禍は6月27日現在、世界全体で5億4300万人強。(死者632万人)、
米国8600万人強(死者101万人)、インド4300万人(死者52万人)、ブラジル3230万人(死者67万人)、 フランス3071万人(死者15万人)、ドイツ2777万人(死者14万人)が5傑でいまだ衰えを知らない。日本は924万人(死者3万100人)と一進,一退だ。コロナ禍で発展途上国を中心に世界経済が大きな影響を受けている中、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は4か月、120日を経ても、終結の見通しはつかず、場合によってはアフガン戦争のごとく長期にわたるとの見方をする人もある。
2)いずれにしてもウクライナ紛争が今後の世界政治、経済に与える影響は予想以上に大きく、特にエネルギー、穀物、食料への影響はヨーロッパ、アフリカ、中東諸国を中心に今後大きな問題になると思われる。
6月28日閉会した主要7カ国首脳会議(G7サミット)ではロシアへの制裁強化とウクライナへの支援拡大で合意し、途上国への食糧安定供給のため、45億ドル(約6000億円)を追加供出することで合意したという。(日経6月29日)
3)このG7会議では米国が主導、主要7カ国で拠出し、投融資を計画する「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を発表した。これは中国が2014年来注力してきた「一帯一路」への投資を主体とする「アジア・インフラ投資銀行=Asia Instructure Investment Bank(本店北京)」に対する地政学的なたくらみで目的は一帯一路を壊すことにあると中国外務省が反発。対抗措置として、BRICSのインドネシアなどへの拡大を検討。すでにアルゼンチンとイランがBRICS加盟を明らかにしたという。中国の習近平主席は新興国と発展途上国の連携強化を呼びかけ、既存の途上国援助基金に10億ドル(約1350億円)を拠出する計画を明らかにしている。
6月24日開催のBRICSオンライン会合には反米を掲げるイランや、親中のカンボジア、中立的な立場を取ってきたインドネシアやマレーシアなどの首脳もオンラインで参加。BRICSの拡大が話題となった。
BRICS開発銀行(資本金500億ドル)は本店を上海に構え、初代総裁はインド代表が務め、発展途上国向けのプロジェクト融資に活躍している。
4)ウクライナ紛争に関しては、遠藤誉・筑波大学名誉教授の『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』世界はどう変わるのかー(PHP新書)、および矢吹 晋・横浜市立大学名誉教授の論説がすぐれている。
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5)遠藤誉先生は「ウクライナは本来、中立を目指していた。それを崩したのは2009年当時のバイデン副大統領だ。ウクライナがNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持すると甘い罠を仕掛け、一方では狂気のプーチンにウクライナが戦争になっても米軍は介入しないと告げて、軍事攻撃に誘い込んだ。第二次大戦以降のアメリカ戦争の正体を正視しない限り、人類は永遠に戦争から逃れることはできない」と米国に手厳しい批判をしておられる。
一方、米国のイーロン・マスクはウイグル自治区を太陽パネルの基地にし世界最大クラスのEV工場建設をもくろんでいるとの情報にも触れておられる。(PHP新書)
6)矢吹 晋先生はバイデン政権のブリンケン国務長官グループの特にヌーランド国務次官補とウクライナとの癒着について独自の資料と情報収集力でウクライナ戦争を鋭く批判しておられる。 欧米のメデイア報道に惑わされることなく、独自の情報収集により、事の真相を究明する努力が肝心だと思われる。
7)ASEAN諸国は中立の対応で、ロシア批判に賛成したのはシンガポールだけである。アジアの一員である日本はアジア諸国の動向も十分踏まえて日本政府はウクライナ戦争に対処すべきだと思われる。欧米に引きずられ、国防費をGDPの2%に増額する意見が岸田政権にあるが、慎重にも慎重な対応が肝要である。
以上
主要参考文献;
『ウクライナ戦争に於ける中国の対ロシア戦略』~世界はどう変わるのか
遠藤 誉 PHP新書 2022年4月
『ロシアの興亡』河東徹MdN新書 2022年6月
月刊TIMES 月刊タイムズ社 2022・7
ウクライナ問題の「真相」と「深層」
「ウクライナ戦争の不都合な真実」鳩山由紀夫
「戦争回避を拒んだのは誰か-ウクライナ戦乱の虚像と実像―力による現状変更を強行する米の狙いは何かー植草 一秀
『プ―チンと習近平 独裁者のサイバー戦争』山田敏弘 文春新書 2022年4月
『ウクライナ危機』日経BP編 2022年6月
『プーチンの野望』佐藤 優 潮出版社 2022年5月
『文芸春秋』2022年5月号、6月号 他
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