道上の独り言
「幼年時代の旅行 第14話 エジプト」
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スエズ港到着。
早朝、用意されていたバスに乗りカイロへ向かう。
6時間くらい乗っていたか、8時間くらい乗っていたか、とにかく長く感じた。
辺り一面ただの砂漠でアスファルトの道路の上まで砂が被っている。
そこを砂塵を巻き上げながらバスは猛スピードで走っていく。
窓際に座っていた僕はクーラーの風をもろに受ける。寒い。真夏なのに寒い。
田舎者の僕には生まれて初めてのクーラーだ。
しかしこんなに我慢しなければいけないものなのか。
クーラーの吹出口を閉めればよいのだがガキの僕にはそんなことは分からない。
出来る事は我慢する事だけだ。
今はだいぶ慣れたがそれでも香港のタクシーのクーラー、デパートのクーラーが堪らなく嫌だ。香港のホテルに着くと真っ先にやることは部屋のクーラーを切ることだ、それでも廊下から冷たい風が入ってくる。
西洋人がクーラーが効き過ぎるとよく文句を言っているのを聞くがまったく同感だ。
熱い国ほどクーラーが強い。
そんな我慢の中やっとの思いでカイロのエジプト国立博物館に到着した。
でっかい3階建てのようだが天井がすごく高い。
何故だか分からないがこの旅行で一番印象に残ったのがこのエジプト博物館だ
(カイロ博物館と言う人もいる)。
土から掘り出したばかりの様な貴金属、汚れた茶色の包帯から飛び出しているようなミイラはまるで「その辺の木の欠片が合わさったかのような」様相を呈している。
天井が高いせいか、室内の照明が暗く感じる。エジプトの太陽の光は強い。
日本とは明るさが違う。その強い窓からの光が無ければ建物の中は不気味なほど暗い。しかしそれがかえって神秘を感じさせる。何かエネルギーを感じる。
ガイドがエジプト史について語っている。でも何を言っているのかよく分からない。
上エジプト、下エジプト??。
どうやら地球儀で見るカイロに近いところが下エジプトで南のアスワンダムに近いところが上エジプトだそうだ。要するにナイルの上流が上で下流が下だ。
日本の小学校ではミシシッピー川が世界で一番長いと教わった。
しかしフランスの小学校の教科書ではナイル川が世界で一番長いとなっていた。
本当のところは今でも分からない。
ただフランスの小学校ではどちらが長いかで言い合いになった事があった。
それはさておき、説明の中でやたらとラムセスという名が出てくる。どんな人物なのか?ただ壁画・象形文字に出て来るエジプト人の顔と現在のエジプト人の顔が違う。
そうだ、エジプトの民は追いやられてもう居ないのではないか?
トルコに追いやられ、アラブに追いやられ、現在有るのは遺跡だけ。
そして住んでいるのは濃い顔をしたアラブ人だけだ。
ヨーロッパでは移動民族にたいして様々な呼び方が有る。
べドウイン、ボヘミヤン、ジタン(ジプシー)。
共通しているのは彼らにパスポートは無い。
パスポート無しでいろんな国へ行き来している(行き来できる)。
義務教育の学校にも行っていない。その中でもジタンは観光地によく出没し、日本人観光客もしょっちゅう襲われている。あまり風呂に入った事のない顔。
女性は主に長いスカートをはいている。
田舎ではその辺で放し飼いにしている鶏をスカートで隠し盗む為だそうだ。
そんな馬鹿な!
ヨーロッパでは中央ヨーロッパ(ルーマニア)からスペインの方へ往来していると聞く。昔からハンガリーの泥棒学校は有名だ。スペインの方ではジタンはギターが上手いということで有名だ。フラメンコなども相当影響を受けているはずだ。
南仏アビニヨンの方ヘ行くとジタンばかりの村が在る。
そこのジタンを集め、モロッコ生まれのキーコがジプシー・キングという音楽グループを作った。「ボラーレ」という曲はかなりヒットした。
♪ボ~ラーレ~♪・#オ~オ・カンタ~レ♪・Ьオオオ~♪
キリンビールのCMソングにもなったのでご存知の方も多いだろう。
もしかしてジプシー(ジタン)とは唯一のエジプト人かも知れない。
ジプシー、エジプシー、エジプト、である。
その証拠に水晶玉占い、タロット・カードはエジプト文化で最も原型を残したまま残っている物です。
実は後にエジプトに8回も行った。そしてタロットカードを日本語に訳した事も有る。
非常に難解だったので何日も徹夜をした末の翻訳であった。
後年そんな事になるなどとは想像だにしないまま、ナイルに向かって日が沈む西に多くの墓が有り、東には神殿が在るなどの説明を聞き、エジプト博物館を後にした。
またバスに乗り、ギザに。 そう、ピラミッドだ!
エジプトに来てピラミッドを見なければ何とやらです。一番大きなクフ王のピラミッド。ところでピラミッドの形(四角錐)の中に果物を置いておくとなかなか腐らないそうだ。
クフ王のピラミッドの中に何が有るのだろう?
物理学的に言うと中のエネルギーを外に発信する場合はドーム型を要する。
だからお祈りをする場所は(ゴシック建築の場合も)屋根がドーム型の場合が多い。
そう、イスラム教のモスクは殆んどがドーム型だ。
逆に天空のエネルギーを取り入れるのにはピラミッド型が多く使われている。
カソリックの大聖堂で司祭の立つ位置は本来屋根がピラミッド型だ。
ラテン語で司祭の事をサセルドーテと言う。「サ」は力(ちから)又はエネルギーを表す。「セルド」とは豚、即ち変換を意味する。なぜなら豚は汚い物を食べ、変換して自分の肉を食べさせるから。
そして「テ」は神を表す。即ち天空界のエネルギーを、司祭の媒体(身体)を通じて、変換する。天空界に手の平をささげエネルギーを受けパンとワインに注ぐ。
これは何もカソリックだけではないと思うが、この様な意味だと言われている。
そんな神殿なのか、お墓なのか分からないピラミッドへ向かう。
続く
【 道上 雄峰 】
幼年時代フランス・ボルドーで育つ。
当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。