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        BIS論壇 No.390『インド太平洋経済枠組み(IPEF)』中川十郎22年 9月15日

        5月に日本を訪問したバイデン米国大統領は23日に岸田首相との会談、24日のQUAD(米国、豪州、インド、日本)の首脳会談で、IPEF(Indo Pacific Economic Framework=インド、太平洋経済枠組み)なる米国の新たなインド太平洋戦略を提案した。これはトランプ大統領時代に米国が撤退したCPTPP(包括的斬進的環太平洋連携)に代わり21世紀に発展するインド、アジア太平洋諸国を取り込み、中国の広域経済圏構想Belt & Road Initiative(一帯一路戦略)への対抗軸にしようとのバイデン政権が主導する新たな太平洋通商貿易戦略だ。

         

        アジア太平洋地域で米国が中国に対抗すべく米国主導のインド太平洋大経済圏IPEFの正式交渉となる初の閣僚級会合が9月8日ロスアンゼルスで開催された。

        日本を含む全14カ国が参加した。経済面でも近年とみに存在感を強める中国への対抗を念頭に、米国が経済安全保障の協力関係を強化する狙いがあるものとみられる。

        IPEFには日米豪印、韓国、ニュージーランドのほか21世紀に急速に発展しつつある東南アジア諸国連合(ASEAN)からもインドネシアなど7カ国、さらに南太平洋のFujiを含む14カ国が参加した。

        IPEFは ①デジタル経済を含む公平な貿易の推進。⓶半導体などのサプライチェーン(供給網)強化。③脱炭素に役立つインフラ整備。④税逃れや汚職防止の4分野を柱としている。

        (東アジア)地域包括的経済連携(RCEP)から脱退したインドはIPEFでも貿易分野での交渉には不参加を表明。2025年にも中国を抜き、世界最大の人口国となり、ITを中心とする情報分野でも躍進しつつあるインドは伝統的に全方位外交を目指している。

        9月15~16日ウスべキスタンで開催される中国、ロシア主導の上海協力機構(SCO)にはインド太平洋の有力国としてインド、パキスタンが参加。インドは国連のウクライナ侵攻ロシア非難決議にも参加せず、伝統的な非同盟、中立的な立場を保持している。

        21世紀前半は中国の時代、後半はインドの時代としてポストチャイナの有力国として急速に浮上。脚光を浴びつつあるインドの動向に日本としてはさらなる注目が肝要だ。

         

        アジア経済に詳しい朝日新聞の吉岡桂子・編集委員によれば、①米国が中国への対抗で創設したIPEFの成否はASEANの支持がかぎをにぎる。⓶中国の一帯一路はピークアウト。インフラ整備などで共通ルールに取り組む好機だ。③アジアの経済連携は重層性が強み。

        多くの枠組みに参加する日本は媒介役を目指せと含蓄ある卓見を披歴しておられる。(朝日8月29日)。筆者も同感だ。15カ国参加のRCEPは経済規模32兆ドル、TPPは11カ国で12兆ドル。10カ国参加のASEANは3.4兆ドルだ。これに比しIPEFは14カ国ながら経済規模は39兆ドルと最大だ。21世紀に発展するアジア太平洋に於いては米中の二大国が対立するのでなく聖徳太子の『和をもって尊となす』の精神で「競争と協力」を目指すべきだ。

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