BIS論壇No,396『BIS理事今井正幸博士逝去を悼む』中川十郎 22年12月5日
国際開発の専門家としてBISで国際開発担当理事として、長年ご協力、ご指導頂いた
今井正幸 経済学博士が4月17日85歳で永眠されたと11月末奥様から連絡があった。
BISを代表し、心より哀悼の誠をささげる次第である。
令和4年の年賀状で「令和3年7月リンパ腫の手術をし、4か月入院したが、現在自宅静養中で、またBISの皆様とお会いできる日を楽しみにリハビリに励んでおります」と連絡があり、回復を祈念していた矢先であった。
数年前のある日、今井氏より電話があった。東京外語大の後輩だが、筆者の住む狛江の近くの調布市に住んでおり、折り入って話があるので面談してほしいとの依頼だった。狛江駅近くの喫茶店で面談した。
外語で筆者の学んだイタリア語と同じロマンス語系のフランス語学科国際関係コースを卒業。その後、京都大学法学部大学院政治学科入学。さらに東京大学法学部公法学科卒。東洋高圧(現三井化学)入社。フランス政府給費留学生として名門ソルボンヌ大学で経済学博士号授与。海外協力基金を経て、日本福祉大学教授として開発経済学、国際援助、開発金融を担当。さらにフランスポール・セザンヌ大学客員研究員としてフランスに留学。
ついては日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)に入会し、さらに研鑚を積みたいとのこと。BIS国際開発研究担当理事として入会願いご専門の国際開発について何度かご講演をいただいた。今井氏は勉強熱心で、研究会終了後も二次会に参加。人脈開拓に尽力された。
博士論文は『日本の開発途上国への政府開発援助と民間投資』。著書としては『ブルガリア国鉄鋼業の再構築と近代化』(国際協力事業団)、『入門国際開発金融』(亜紀書房)、『市場経済下の苦悩と希望』彩流社、『日本のエコノミストはアジアの繁栄の世紀を語る』(ヨーロッパ大学刊―フランス語)など名著を精力的に執筆された。
2020年5月に発刊された『エコノミストの眼』~開発の世界に埋もれて~(彩流社)の20年 7月のBIS研究会での発表を楽しみにしておられたが、急遽入院となり、講演が実現できなかったことは誠に残念であった。この本の帯には「プラント輸出マン、援助機関スタッフ、開発経済学者として各国で活動した著者の時事評論と体験的エッセイ集!」とある。
「読者の皆さまへ」と題し『自分は数年前から歩行が困難になったので、意識が明朗である間に生涯この人間好きに慣れ親しんでくれた人々にお別れの言葉を献上したいと念じつつ、東京を襲ったコロナの台風のうち、個室に籠ったままで筆をおきたいと思います』
2020年4月吉日 今井正幸 と絶筆となった本の初めに記しておられる。BISとしては惜しい人をなくした。断腸の思いである。今井正幸博士 安らかにお休みください。 合掌