BIS論壇 No.398『ユーラシア大陸と一帯一路』中川十郎 2022年12月18日
12月15日、ホテルニューオータニでロシアNIS貿易会主催の中央アジアの有力国「カザフスタンを読み解く3つの視点~政治・経済・石油~」と題する産業協力・企業間交流セミナーが開催されたので参加した。2019年末からのコロナ禍もあり、ホテルオータニでの会議参加は3年ぶりであった。さすがにZOOMやOn Lineでの講演会と違い、迫力ある講演で、人と人が接するRealの会議は印象的で得るところ大なるものがあった。
余談ながら、会場で名刺交換した方が筆者と同郷の薩摩武家の名門、有村家後裔で幕末に桜田門で井伊大老を襲撃した有村家の子孫だとのことで話が弾んだ。これもReal会議の
余得だ。 筆者は愛知学院大学、東京経済大学で国際マーケテイング、国際物流、貿易論を担当、研究。1990年時代後半から中央アジアのSCO(上海協力機構)の研究を30年近く継続。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中國、南ア)と合わせ、中央アジアを中心とするユーラシアの物流、特に中国習政権が2013年来10年近く注力する「一帯一路」がユーラシアに於ける世界最大の国際物流・貿易圏に発展すると判断し、研究を深めている。
カザフスタンの政治経済専門家3人の講演は ①「新しい地政学的条件に対応するカザフスタンの石油・ガス戦略の行方」、⓶「カザフスタン経済~乱気流に見舞われた2022年と2023年の展望」、③「ウクライナでの戦争:ガザフスタンの地勢学リスク、課題。そして可能性」について極めて有益な示唆を与えられた。
印象的だったのはユーラシアに於いてウスべキスタンとともに影響力を有するカザフスタンを中心とする中央アジアが今般のロシアのウクライナ戦争で、ロシアの戦力の実情より、これまでのロシアの石油、ガスを中心とするエネルギー戦略から距離を置き始めていることを痛感した。これはこれまで、ロシアが中国とともに推進してきた、SCO(上海協力機構=その後、インド、パキスタン、本年イランも加盟)へのロシアの影響力が衰えつつあるとの感触を持った。さらにロシアがユーラシアに於いて結成したEEU(ユーラシア経済連合)への影響力も減殺されるのではとの疑念を持った。
これはロシアの中央アジアにおける影響力の後退を意味し、経済的には韓国より下位にあるロシアとしては、ウクライナ紛争の早期和平に努力しなければ、ロシアの中央アジア、ユーラシアに於ける影響力が益々低下するのではないかと痛感した。
英国の地理学者、マッキンダーの唱えたユーラシア・ハートランド理論によると21世紀の世界発展の軸となるユーラシア、アフロ・アジアでの中国の「一帯一路」広域経済圏構想はユーラシアの陸と海と空の三方からの国際物流網構築により、ユーラシアを通じ、世界の経済発展に大きく貢献することは間違いないと思われる。日本は今こそ「一帯一路」へ参画することにより日本の衰退に歯止めをかける時である。直ちに行動を開始すべきであろう。