BIS論壇 No.401『世界10大リスク』中川十郎 2023年1月5日
米国ユーラシアグループ(イアン・ブレマー社長)は1月3日恒例の『世界10大リスク』を発表した。ユーラシアグループが予測する2023年の「10大リスク」は下記だ。
特にロシアのプーチン大統領と中国の習近平主席をリスクの1、2位に挙げた。
「ならず者国家ロシア」は欧州、米国さらに世界全体に深刻な安全保障上の脅威をもたらすと指摘。2番目のリスクは「権力が最大化された中国の習近平国家主席」を挙げた。
習主席は新たな最高指導部のメンバーを関係者で固め周囲が反対意見を言うことができないことから、大きな間違いを犯す可能性があると指摘。今年の世界10大リスクは下記だ。
1)「ならず者国家ロシア」~ロシアは世界で最も危険な「ならず者国家」になり、世界全体に深刻な安全保障上の脅威をもたらす。
2)「権力が最大化された習近平国家主席」~昨年10月開催された共産党大会で習主席は建国の父とされる毛沢東以来の権力を掌握。
3)「テクノロジーの進歩による社会混乱」~AI=人工知能の技術的進歩は社会の信頼を損ない、ビジネスや市場を混乱させ、ポピュリストなどが政治的利益のため、AIを武器化し、陰謀論や「フェイクニューズ」を広める。
4)「インフレの衝撃波」~社会的不満と世界各地での政治的不安定につながる。
5)政権に抗議するデモが相次いでいる。政権崩壊の可能性は低いが、過去40年間のどの時点より高くなっている。
6)「エネルギー危機」~エネルギー価格の上昇は消費者と政府に負担をかける。
7)「阻害される世界の発展」~新型コロナウイルスの流行、ウクライナ侵攻、世界的なインフレなどが続き、経済的、安全保障的、政治的な利益がさらに失われる。
8)「アメリカの分断」~アメリカは世界の先進国のなかで最も政治的に偏向し、機能不全に陥っている国の一つで政治的暴力のリスクが続いている。
9)「デジタルネイチブ世代の台頭」~1990年半ばから2010年初めに生まれた若者を指す「Z世代」がアメリカやヨーロッパなどで新しい政治勢力になる。
⒑)「水不足」~水不足が世界的かつ体系的な課題となる。しかし、各国政府はこれを一時的な危機としてしか扱っていない。
以上に加え、筆者は日本のリスクは岸田政権の平和憲法を無視した最近の傍若無人の「敵基地攻撃論」や「防衛費倍増」、「原発新設」、「運転期間延長」などの動きが日本のリスクを高めていると危惧している。世界的投資家のジム・ロジャーズは近著『世界大異変』(東洋経済新報社)で、『人口減少に何も手を打たない日本はこのままでは恐ろしい未来が待っている。すぐに消滅することはないが、経済破綻した他国と同じように、外資に買われまくる運命をたどるだろう。大多数の中間層は今よりも貧しくなり、穏やかで豊かな社会は維持できなくなる。』(81ページ)と警告している。