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        BIS論壇 No.402『インドの台頭とインド太平洋戦略』中川十郎 23年1月10日

        23年11月にG20会議を主催するインドが23年にも人口で中国を抜いて世界最大の人口国になる。23年の経済成長も好調なベトナムと共に6%内外のGDP発展が予想され、3~4%内外とみられる中国に対し、ポストチャイナとして急速に脚光を浴びつつある。

        2014年のインド人民党の成立で、現モデイ政権は、「ネオ・ヒンズーイズム」を基盤として、積極的な外資導入や「メイク・イン・インデイア」政策の下、着々と経済、政治的影響力を強めつつある。インドはさらに中国とロシアが1996年以来25年以上にわたり注力している21世紀に発展するユーラシア大陸の上海協力機構(SCO)にもパキスタンと同時加入。有力国として活動を強化。さらに中国の広域経済圏構想「一帯一路」に積極的に協力している。一方、新興国コンソーシアムBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中國、南ア)のBRICS銀行(上海)にも総裁を送り込み、金融面からも活動を強化している。

        コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー、食糧危機を中心にグローバル経済が分断されつつある中で、かっての非同盟、中立外交を標ぼうする西南アジアの大国インドの動きに23年は注目する必要があろう。

        かかる背景下、21世紀前半は中国、後半はインドの時代が到来するとみられ、世界最大の民主主義国家を標ぼうするインドを含むインド太平洋戦略が脚光を浴びている。

        QUAD(米国、豪州、日本、インド)、日本が注力しているFOIP(Free and Open Indo Pacific =自由で開かれたインド太平洋=ASEAN10カ国に米国、インド、豪州、NZ, 日本、韓国の16カ国が参加)に続き、2022年5月に米国バイデン政権が発表したIPEF(Indo-Pacific Economic Framework=インド太平洋経済枠組み=米国、インド、日豪、NZ、韓国、インドネシア、タイ、フィリッピン、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイのASEAN7カ国と南太平洋のフイジの14カ国が参加)が中国に対抗するため、米国主導で動き出しており、インド太平洋は21世紀の世界経済、政治の競争激戦地域となりつつある。

        一方、日本、中国が注力のRCEP(東アジア包括的経済連携)はASEAN10カ国と日豪NZ,韓国、中国の15カ国で2022年1月に発効。特に中国が熱心に推進している。こちらは

        インドが脱退し、中国が中心となり、鋭意取りまとめに動いている。

        米国トランプ政権が脱退したTPP(Trans Pacific Partnership=環太平洋連携=現在

        CPTPP(Comprehensive and Progressive Trans Pacific Partnership=包括的斬進的環太平洋連携)は日本を中心に、ASEANのシンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイに豪州、NZに米州のカナダ、メキシコ、ぺルー、チリの11カ国での経済関係強化に加え、経済安全保障戦略で、中國への対抗、高度技術、特に半導体の禁輸など中国の分断を日米欧州が画策している。一方、EUを脱退し、アジア市場への進出に積極的な英国、さらに中国、台湾がTPPへの参加を申請しており、中国の出方が注目を浴びている。

        南カリフォルニア大学の国際政治経済学が専門の片田さおり教授は「中国を占め出したアジア経済圏はあり得ず、インド太平洋の枠組みを使い仲間を増やせ」と提言されているが、筆者も全く同感である。日本は隣国の中国との協力関係強化にこそまず尽力すべきだ。

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