BIS論壇 No.403『世銀の23年の成長見通し1.7%に激減』中川十郎 1月12日
世界銀行は10日、2023年の世界経済成長率予測を1.7%に大幅な下方修正を行った。
物価高や利上げがリスク要因との見方を示した。
半年前の22年6月の予測から1.3%の大幅な下方修正となった。特に米欧は0 %台の低成長に落ち込みそうで景気後退の可能性が濃厚とみられる。ウクライナ危機の長期化による世界的なインフレなど複数の要因が重なり、主要国の落ち込みが目立つ。
09年と20年の景気後退期を除くと過去30年近くで最も低水準となり、由々しき事態だ。
世銀は22年の予想成長率を2.9%と推計しており、23年は22年よりも1.2%大幅減速となる。一方、24年は2.7%と23年比1%増と予測している。
22年6月の見通しから、成長率が下方修正された国は先進国で約95%。新興、途上国で70%に及ぶという。
大幅利上げを継続する米国は23年0.5%(前回予想比、1.9%減)と大幅減速を予測。これに比し日本は0.3%減の1.0%との見方である。だがこの見通しは甘いように見える。
エネルギー不足が懸念されるユーロ圏は成長率0 %(22年6月予想比1.9%減)と予測され、場合によってはマイナスになる公算も大とみている。
ゼロコロナ政策をやめた中国は不動産市況の落ち込みなどで4.3%(前回比0.9%減)と予測。世界経済の推進役であった中国は1月21日からの春節を控え、ゼロコロナ政策の転換からコロナ感染者が増大すればさらなる経済の減速を余儀なくされようとの見方である。
「中央銀行の利上げの影響が拡大することや、ロシアのウクライナでの戦闘や経済大国の低迷を背景に、多くの国が景気後退に陥る可能性があるとの見方を示し、さらに状況が悪化すれば、世界経済は景気後退に転じかねない」と世銀は世界景気後退の可能性を警告している。「先進国経済の大幅減速により、前回の新型コロナウイルス流行による景気後退から3年もたたないうちに世界経済は再び景気後退に陥る可能性がある」と指摘。
さらに世銀は「経済状況が脆弱である以上、予想を超えるインフレやその対策としての急速な利上げ、新型コロナ感染拡大、地政学的緊張の高まりなど新たな逆風が生じると世界経済は景気後退に陥る」と声明を出している。
重い債務負担と弱い通貨、鈍い所得上昇、企業投資の鈍化を背景に、特に厳しくなる見通しの新興市場や発展途上国は、24年までの投資の伸びは3.5%と過去20年間のベースの半分にも満たなくなると予測している。一方、中国の成長率は23年に4.3%に回復すると予測。新型コロナ禍による混乱の深刻さと外需の弱まりで22年6月予測を0.9%下回っている状況だ。1月21日からの春節の大型連休の動向を注意深くWatchすることが肝要だ。