BIS論壇No.407『ダボス会議の動向』中川十郎 2023年1月30日
1月16~20日スイスの保養地ダボスで3年ぶりに対面開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)は20日閉幕した。G7ではドイツのシュルツ首相のみが参加。また例年になく空席も目立ったとメデイアは伝えている。一部には現下、世界的に最大の問題であるロシアのウクライナ侵攻、平和希求策についての十分な対話が行われなかったことに、批判的な見方もある。ロシアのウクライナ侵攻もあり、本年のダボス会議はロシアや中国のビジネスマンの目立った参加もなく、例年のごとき活況はなかったと報じられている。それでも50カ国以上の首脳と経営者など約2700人が参加した。
中国からは劉鶴副首相が参加。ゼロコロナ政策の修正で2023年の中国のGDP経済成長率は正常な水準に戻ると発言した。それでも3%内外の成長で、2022年末に人口で中国を抜き、世界一となった経済好調のインドはアジア開発銀行(ADB)の試算によると2023年の実質成長率7.2%と域内46カ国・地域で最高になると予測。IMFによれば、インドは22年GDPで旧宗主国の英国を抜き、世界5位に浮上。25年にドイツ、27年に日本を抜き、米中に次ぐ世界3位に躍り出るとみられている。ポストチャイナのインドの動向を今後、十二分にWatchが肝要だ。2023年9月にG20首脳会議を議長国として開催するインドは1月12~13日オンラインで準備会議を開催。約120カ国・地域が参加。インド・モデイ首相は特に南半球の「グローバルサウス」諸国に地政学上の緊張やインフレ、地球温暖化などの解決に途上国代表として臨む姿勢を鮮明にした。
米中対立やロシアのウクライナ侵攻で、世界の分断が加速化している現状下、サプライチェーン(供給網)再編や気候変動など、世界各国は地球規模の問題解決を模索中だ。脱中国の供給網構築、世界分断への対応策をめぐり、国家、グローバル企業ともに世界分断の先を目指し、世界経済での協力策を検討することが今こそ強く求められている。かかる現状から今回のダボス会議では「分断する世界での協力」を議題に討論が繰り広げられた。しかしながら民主主義陣営と強権国家の亀裂の深さが実感されたとの現地報道だ。世界分断化の現状下、コロナが世界経済に甚大な悪影響を与え、気候変動や食糧問題、人口減、供給網再編など地球規模の課題は世界が分断されたままでは解決は困難だと思われる。特に米中対立による先端半導体の中国への機材を含む輸出禁止は厳しさを増しており、米国、オランダ、日本連合での中国向け禁輸が、サプライチェン問題と並び、大きな影響を与えそうだ。
中國は海南島、青島、大連などで中国版ダボス会議を開催している。日本でも市川 周・一橋総研理事(BIS理事)が白馬会事務局代表として毎年秋に長野県白馬で日本版ダボス会議を地道に開催しておられる。BISとしても今後、できる限りの応援をして、白馬ダボス会議の成功のために協力したいと念願している。