日本ビジネスインテリジェンス協会
「大転換する世界―日本の“没落”、戦略の再生」2023年2月16日
進藤榮一(筑波大学大学院名誉教授・一対一路日本研究センター代表)
報告の前提
「年老いた金メダリスト」ニッポン/戦略力なき日本/対米従属の悲劇/アメフトと相撲/「武士道」と「孫子)/「局所最適」(零戦)と「全体最適」(グラマン)/囲碁とキッシンジャー
1,二重運動
世紀単位で進む「大転換」(ポランニー)/「前に進める動き」(脱軍事福祉化・環境化・デジタル化)と「後ろに戻す動き」(重武装化/原発/研究教育費削減)
「軍事同盟安全保障」から「人間社会環境安全保障」へ/重武装化/原発/研究教育費削減)/クワッド(米日豪印)から一帯一路(陸と海のシルクロード建設へ/亡国のリニア新線/安倍対露外交の無駄/尖閣・竹島奪還の虚妄
2,「日本が先進国から脱落する日」(野口悠紀雄)
なぜ日本は、「第一の敗戦」以後、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を経て、帝国アメリカに従い、プラザ合意(1985年)後、「第二の敗戦」をへて“没落の道”へ/民生福祉と科学教育と友好外交を軽視した国のかたち/ネオリベ(新自由主義)と竹中アベ・クロダノミクスという麻薬/「新しい資本主義の形」の空虚
3,「同盟の流儀」と「戦略力」と
「失敗の本質」(野中幾次郎)の本質/なぜ「海兵隊」礼賛か/「二人ゲームの落とし穴」/「暗黙知」という虚妄/「世界の中心は転移する」/「資本主義の終焉」(水野和夫「」から「資本主義の転移」(アリギ)へ/「北京のアダム・スミス」/「資本主義の新しい形へ」/「同盟」から「協働(パートナーシップ)へ/友敵から交伴へ/軍事から外交へ
報告の展開
1,三つの産業革命と21世紀グローバル化—アジア力の世紀へ
黒死病以後「パクス・イスパニア」、ペスト以後「パクス・ブリタニカ」、スペイン風邪以後「パクス・アメリカーナ」、そしてコロナ以後「パクス・アシアーナ」へ。時代の潮流——19世紀「産業革命」、20世紀「工業革命」、21世紀「情報革命」——が進める世界覇権構造の「大転換」。
3,「日米同盟の罠」
「永遠の友も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益だけだ」(パーマストン卿)。「日米関係は永遠である」(吉田茂)、「米国は御者で、日本は馬である」(谷内正太郎元駐米大使)。
バブル下、超円高(1995年1ドル79円)と為替差損(実勢価格との巨大格差)。超長期公定歩合(1998年以降~)の罠。「アメリカの繰り出す日米摩擦」。ジャパン・バッシングからジャパン・パッシングを経てジャパン・ナッシングへ/「日本衰退」へ
4,帝国の同盟戦略の実相—光と影、そして帝国自身の凋落へ
85年プラザ合意、88年バーゼルⅠ(BIS協定改定、自己資本比率8%―邦銀凋
落)、98年大店立地(大規模小売店舗法改定―地方中心街衰退)、02年社外取締役制度導入、「さらば・ぼくらのソニー」、そして米国流株主カジノ資本主義へ)、日本家電産業の衰退、韓・中・台の興隆。2016年TPP・11か国アトランタ署名(17年トランプ政権下米国離脱、未発効)/ 22年RCEP(地域的包括的経済連携)発効(米国を除き、中、韓を含むアジア太平洋15カ国,印は離脱)―東アジア初メガFTA.
5、米中“新冷戦”の台頭—虚構の中朝軍事的脅威と増大するアジア経済市場
「ソ連脅威論」から「北朝鮮脅威論」、「中国脅威論」へ。「帝国の軍事覇権基地」から「米兵器購入お得意様」ニッポンへ。「抑止論」という名前の共同軍拡戦略。中国・アジア経済の台頭と「増大する日本の市場と勝機」/「人口ボーナス」と「空間ボーナス」
報告の結論
1、中国は脅威なのか、それともアメリカが脅威なのか
中国空母3隻、原潜6隻、米国空母11隻(すべて原子炉駆動)、原潜72隻。財政支出に占める国防費(21年):中国5・0%、米国30%;海外軍事基地・中国ゼロ(ジブチ)、米国45か国、海外基地数515基地(大型基地数49)、うち日本120(大型基地数21).ドイツ119(大型基地数8),韓国70(大型基地6)。
1)一帯一路とAIIBに関する邦人中国専門家の見方:星座論中から「赤い竜の爪」、そして「貧者 を喰う国」論(中国崩壊論)、「AIIBのバスに急いで乗るべきでない。バスが来るし、電車も来る」
もう一つの見方—中国との共生(AIIB、トリプルAの高評価、アジア開銀を凌ぐ対途上国援)
2) 「マーシャル・プラン」を超える一帯一路。
1)2022年12月サウド国王・習近平会談―ペトロ・ダラーからペトロ・ユアンへ。「世界の工場」から「世界の市場」、さらに「世界の銀行」へ―2050年の世界。2)大転換の機軸
3) 19世紀領土ゲームから20世紀生産力ンゲーム、そして21世紀共生ゲームへ。「時代の先端をつかむことができるもののみが、歴史の勝者になりうる」(クルーグマン)
最後に――「ウクライナ戦争」とは何であるのか
1)国はなぜ戦争をするのか―「体制内矛盾の爆発」
第一次大戦後の「危機の20年」後、敗戦国ドイツの民族的ルサンチマン:米ソ冷戦後の「危機の30年」後。敗戦国ロシアの民族的ルサンチマン.大戦後ワイマール共和国以後、超インフレ下のドイツ、冷戦後GINI係数50%を超えるペレストロイカ民主化以後のロシア。激化する体制内矛盾。
2)「歴史の教訓」を読み違える。
1934年「ミュンヘンの宥和」(ズデーデン地方の対独割譲)、ヒトラー・ドイツのポーランド侵攻へ。2014年「ミンスクの宥和」(クリミア半島の対ロ割譲)、プーチン・ロシアのウクライナ侵攻へ。プーチン支持率83%の意味。太平洋真珠湾攻撃に始まる対米攻撃—「それでも日本人は「戦争」を選んだ」(加藤陽子)
3)「民主主義平和」論の延長上にある「ウクライナ民主化(マイダン革命)」—NATO東方拡大戦 略、米国民主化革命外交の失敗。ケナンの最後の遺言(1997年)
4)日本の活きる道
21世紀共生ゲーム(第三次産業革命/パクス・アシアーナ)を生き抜く。
三つの共生:①地球環境との共生、②近隣諸国との共生、③市民社会との共生。