2023年3月17日
独立コンサルタント エナジー・ジオポリティクス
代表 澁谷祐
「どうなるガス供給プロトコールの運命は」
やはりウクライナ、ロシアとEUが決めるのが先決だ。
ウクライナ、ロシアとEUの暗中模索
○ 3者契約と25年期限問題
ウクライナ-侵攻1年、幸いロシア-ウクライナ-欧州を結ぶガスパイプライン・ネットワークは、(東部の激戦地の一部を除き)安全が確保されている模様だ。双方の安全管理当局は厳重な監視下、コミュニケーションを欠かさない。
ウクライナ全土の電力インフラが攻撃され、5カ所にある原子力発電所の安全が危機にさらされている。他方、ガスのパイプライン・ネットワークが安全に機能しているのはなぜか—。
パイプラインは、ロシアの「特別軍事作戦」の攻撃目標ではない。ロシア、ウクライナ及びEUによる3者間のガストランジット契約(プロトコール)が抑止力になっている。
○ 卓越した「パイプライン大国」論
ところで、クライナの国営ナフトガスの総裁(当時)のユーリー・ヴィトレンコ氏は「パイプライン大国としての役割と抑止力」について、米ワシントンポスト紙(2022年3月28日付け)のインタビューに対して次のとおり、率直かつ明確に語った。
「ロシアからのトランジットのパイプラインを続けるのか、あるいは止めるのかの問題は、ウクライナの政治の最高レベルで議論されている非常に政治的に敏感なトピックだ」。
「もしウクライナが一方的に戦局の主導権を握り、ロシアからの
天然ガス供給の輸送を止めることができても、ガスは他のパイプラインに迂回使用されて、いずれ欧州にたどり着くだろう」。
「しかし、それを認めれば、ウクラナがロシアによる攻撃の脅威から一段脆弱することを意味する。
従って、(逆に言えば)ウクライナのパイプラインを使うことが、ロシアがさらなる爆撃や破壊を行わないよう抑止力となる」。
(筆者注:ヴィトレンコ総裁は22年11月に辞任した。表向きはナフトガス再建の失敗の責任を取って解任されたという)
○ 筆者のコメント
ヴィトレンコ総裁(当時)の主張はパイプライン・ポリティクスの核心をついているのではないか。
3者プロトコールは、2024年までの5年間(年平均450億立方メートル)、通過料金は輸送距離100kmで千立方メートル当たり2.66 ドルとする合意内容である。
このプロトコールがあるかぎりロシアは攻撃できないという「抑止効果」がいまのところ(一部離脱はあるが)効いている。
では期限が切れる25年以降はどうなるか。そのときもし、失効してEUがウクライナからパイプライン使用権を取り上げたらどうなるか?
EUはロシア産を27年までに輸入ゼロとする目標設定で約束しているという。
果たして25年と27年のそのときまでにウクライナ戦争の停戦ができるだろうか。ヴィトレンコ氏の主張を読み直すとしよう。■
(本稿は、16日開催されたマンスリーコロキウム、早稲田大学研究院・総合研究機構・「次世代ロジスティクス研究所」(事務局長・岩間正春氏)における筆者講演「ロシアのウクライナ侵攻とエネルギー分断」の発表に一部加筆しました)
<編集発行>
独立コンサルタント エナジー・ジオポリティクス
代表 澁谷祐
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