2023年4月30日
今週の所感
村田光平(元駐スイス大使)
4月23日 放射性汚染水の海洋放出
ドイツ在住のグローガー理恵様からいただいた下記情報を共有させていただきます。
<ドイツのレムケ環境大臣が、最近日本で開催されたG7会議で、”Germany ‘cannot welcome’ Japan’s radioactive wastewater dumping plan.(ドイツは日本の放射性排水投棄計画を歓迎できない)”と述べた、とのことです。
また、IPPNWの共同会長・ティルマン・ラフ博士も最近公表された論評の中で、日本の汚染水海洋放出の計画を”太平洋を放射性廃棄物の捨て場として利用 するという無責任な計画”と述べ、「見えないものは忘れられる」や「希釈が汚染の解決だ」という安直で、
だらしない取り組み法であると批判しています。
汚染水の海洋放出は、あと少なくとも何十年も続くということですが、このような対策は日本市民に対してばかりでなく、近隣国、
太平洋諸国の人々が抱く懸念を無視した、実に無責任な行為ではないでしょうか。>
上記グローガー理恵様からの報告にもうかがわれるように放射性汚染水の海洋放出に対する批判は強まる一方です。20日、東京新聞の記者より電話での取材 を受けました。当初から汚染水の海洋放出を勧めているIAEAにつき問われたので、2014年3月にIAEAの改革を求めた別添の共同声明案が時間切れで 発表されるに至らなかったものの大統領経験者、総理経験者など傑出した要人数名の同意が得られた経緯を説明いたしました。
グローガー理恵様から御教示頂いた下記の参考記事からかねてから一部識者が指摘してきた放射性汚染水の海洋放出は排他的経済水域において他国の権利行使 に適切な考慮を払うことを義務と規定する国連海洋法条約85条違反との見解(グリーンピース東アジア上級原子力専門官)が遂に公にされたことが注目されま す。
https://www.globaltimes.cn/page/202304/1289291.shtml
他方、下記の共同声明をBCC英文発信(こちら)で 発出したところ、元スイス中央銀行理事、大使で著名な経済専門家のJean Zwalen 氏より早速、<この素晴らしい理性の復権の呼びかけは
未来の世代を自らの延命のために奮起させるものです。
これが戦闘と戦争のことしか夢見ない支配層に届 くことを願うのみです。>との激励のメッセージが寄せられました。
市民社会を代弁する立場からの発信は今後とも全力を尽して参る
所存です。
皆様の御理解と御支援をお願い申し上げます。
4月23日 公表されなかった共同声明
傑出した方々のご了承を取り付けながら時間切れで公表されなかった別添の2014年3月11日付共同声明(下記)は今後の世界の存続に不可欠なヴィジョンを打ち出しており、その内容を改めて皆様に提示する次第です。
BCC英文発信(下記)で発出したところ、元スイス中央銀行理事、大使で著名な経済専門家のJean Zwalen 氏より早速、<この素晴らしい理性の復権の呼びかけは未来の世代を自らの延命のために奮起させるものです。これが戦闘と戦争のことしか夢見ない支配層に届 くことを願うのみです。>との激励のメッセージが寄せられました。
皆様の御理解と御支援をお願い申し上げます。
2014年3月11日を地球倫理国際日にするよう訴える共同声明
人間社会が受容できない惨禍をもたらしかねない科学技術は事故の可能性につき如何なる数値が援用されようとも完全にゼロでなければ使用してはならないというのが、福島の教訓である。
放射能汚染をもたらす行動はほぼ永久に人類と地球に計り知れない損害を与えるものであり、倫理と責任に欠けるものとして非難されなければならない。
日本は悲しいかな核エネルギーの軍事利用、民事利用双方の犠牲となった。福島の後、日本は放射能汚染に苦しむのみならず、事故の悲惨な結果の収束を図るために容易には克服できない諸問題に直面している。
核技術は不可分であり、軍事、民事に分けることが出来ないことは明確に認識されている。日本は今や民事、軍事を問わない完全な核廃絶を世界に訴える歴史的使命を有するものと信じる。これも福島の教訓である。
このような見地から次の提案を行うものである。
Ⅰ.核拡散の防止と原子力発電の促進という両立できない使命を与えられたI.A.E.A.は改革されねばならない。
2.現存する原子力発電所の安全に対する国際的管理は強化されねばならない。
現在人類が直面する危機は文明の危機である。支配に立脚した力の文明を、命に至上価値を置き、協力に立脚した和の文明に転換しなければならない。
人類が直面する危機の根深い原因はあまねく世界に広がった倫理の欠如である。未来の世代に所属する天然資源を濫用し枯渇させ、永久に有害な廃棄物と膨大な 債務を後世に残すことは倫理の根本に反するものである。自然と世界の資源は如何なる結果をもたらすかに配慮することなく利用されている。
地球倫理の確立なくして、未来の世代に美しい地球を残せるような人類の文明を創設することは出来ない。
このような考えからユネスコクラブ世界連盟(WFUCA)が呼びかけている国連倫理サミットの開催と地球倫理国際日の創設を強く訴えるものである。3月 11日を地球倫理ユネスコ国際日とすることを呼びかけたWFUCAの公式声明を全面的に支持し、国際社会に賛同を求めたい。同サミットはオバマ大統領の核 兵器のない世界のヴィジョンに向けて道を開くものと確信する。
この地球倫理国際日は、紛争を解決する手段として決して戦争に訴えないとの決意を毎年新たにすることを可能としよう。
核エネルギーを使用しない人類と地球の長期にわたる安全のために、ライフスタイルについて短期間の犠牲を払う覚悟が必要である。自然・再生可能エネルギーは倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する新しい持続可能な文明の基礎となり得よう。
April 20, 2023
Dear Friends,
I am sending you, herein attached, an unpublished joint statement, dated March 11, 2014, containing a vision for the world after the tragic nuclear accident in Japan.
The lessons of Fukushima are totally forgotten.
Civil society is coping with the realities by introducing the teachings of philosophy, believing in the will of heavens and the earth that protects humanity and the earth.
You will notice the wide gap between the new nuclear policy and the vision contained in this joint statement, and consequently growing popular criticism.
With warmest regards,
Mitsuhei Murata
Former Japanese Ambassador to Switzerland