BIS論壇 No.413『躍進するインド』中川十郎 2023.4.25
インドは2022年に人口で中国を抜き、世界最大の人口大国となった。GDPでも22年旧宗主国の英国を抜き、世界第5位に躍進。2025年にはドイツを、2027年には日本をも抜き去り、米国、中国に次ぎ、世界第3位のGDP大国になると予測されている。
その為か、最近書籍、メデイア、テレビでもインドが話題を浴び、さかんに特集や特別報道番組が目白押しだ。 5月には広島でG7が、9月にG20がニュデリーで開催されることもあり、インドがグローバルサウスの盟主として活発に動いており、世界的に脚光を浴びている。3月20日には岸田首相が訪印。同じ時期に中国の習近平 国家主席がロシアを訪問。くしくも日印、中ロ首脳会談が同時開催され世界から注目された。G7にはインドのモデイ首相が招待され、訪日参加する。9月のG20には岸田首相が訪印。日印関係がさらに強化されるとみられている。
もともと日本は故安倍首相が「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を打ち出し、さらに「QUAD」(米国、豪州、日本、インド)で中国に対抗。22年5月に訪日した米バイデン大統領は、二番煎じ乍ら、「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を提唱。太平洋島国のフイジ-を含む14カ国が参加。中国への対抗経済圏構築に乗り出した。
2030年を控え、経済、政治、軍事的にも大国となるインドがこのところ世界最大の民主主義国家としても急に注目されつつある。かかる趨勢から、最近出版された『第三の大国 インドの思考』~激突する「一帯一路」と「インド太平洋」笠井亮平 著(文春新書)は『インドが分かれば世界が分かる! 独自の論理で動くインドが米中覇権争いのカギを握る! 伝統的非同盟、人口第1位、実利優先の国民性、軍事費世界第3位、ロシアと深い関係、中國をしのぐ経済成長率 。インドにはカースト身分制度など問題はあるが、独自の論理で発展しよう。「一帯一路」と「インド太平洋構想」の二大経済圏構想のキープレイヤーでもあるインドは米中に次ぐ大国として存在感を増している。ロシアとも長年の関係あるインドはウクライナ戦争でも中立的な動きをしておりその動向が注目されている。』と指摘。
上記著作に20日遅れで4月10日に出版された『インドの正体』~「未来の大国」の虚と実~伊藤 融 著(中公新書ラクレ)は「インドは信用できる国なのか?」、「IT大国」「人口世界一」?「ロシアの味方」「厄介な国」? と笠井亮平氏のインドにやや肯定的な論評に対し、伊藤氏は『「最大の民主主義国」と礼賛されるインドはロシアと西側諸国の間でふらつき、カーストなど人権を侵害し、自由を弾圧する国だ。本当に信頼していいのか』と影の部分にメスを入れている。両著を味読しインドの「光」と「影」、「表」と「裏」を精査し、躍進するインドの実態を冷静に慎重に考究することが肝要ではないかとインドに商社マンとして5年駐在しビジネスをしてきたBIS論壇の筆者は痛感する次第だ。