令和5年4月23日
“民主主義体制”と“権威主義体制”との狭間におけるグローバルサウスの台頭とは?
伊藤正
その原点は、南北問題がはじまりと言える。
「南北問題」という用語の概念は、イギリスのロイズ銀行会長職にあったオリヴァー・フランクスが、1959年にアメリカ合衆国で行なった講演「新しい国際均衡―西欧世界への挑戦」に端を発するものである。フランクスは、イデオロギーと軍事の対立である東西問題に比肩する重要課題として、地球上の北側に位置する先進工業国(Industrial Countries)と南側に位置する開発途上国(Developing Countries、発展途上国ともいう)における問題提起を行うとともに、世界のバランスの中心が西ヨーロッパから新たに発展しつつある国々に移るであろうと述べた。
南北問題という言葉は1956年から使われ、1960年代に入り認知されるようだが、問題自体はかなり前から存在していたと言われている。
また国連を中心として、途上国への経済格差・インフラを促進する取り組みが積極的に行われてきた。
世界銀行が定める定義によれば、2015年時点では1日1.90ドル未満で暮らす人々を最貧困層としている。同基準は国際貧困ラインと呼ばれており同基準は国際貧困ラインと呼ばれており、MDGs(ミレニアム開発目標)の最重要指標でもあったが、MDGs以降、新たな世界共通目標であるSDGsへと移行している。
1989年のベルリン崩壊後、経済のグローバル化が追い風となって世界経済を急成長させてきた。2022年にはじまったロシアのウクライナ侵攻が「NATO(北大西洋条約機構)諸国対ロシア」という古い冷戦構造を蘇えりさせ、世界経済をまさに分断しようとしている。
「グロ-バルサウス」と呼ばれると途上国は、「経済のデッカプリング」に強く反対の声を上げている。世界は、その声を無視出来ないまた存在自体を認めざるを得ない時代を迎えと言える。
ここでバイデンが進める「民主主義サミット」について触れたい。2023年3月29日から2日間オンラインで2回目サミット開かれた。日本やヨーロッパ諸国など120の国や地域首脳が
出席した。中国やロシアは前回同様に招待されていない。このサミットの狙いは、アメリカ流の民主主義が世界的な不人気に歯止めをかけるとことにあるようだ。民主主義の行末は、前途多難ではないだろうか?
今や米国1極の「G1」世界から「Gゼロ」世界への移行が顕著です。そんな中2021年には6回のクーデターが発生している。有名なものは、ミャンマーの軍事クーデターデ、それ以外にチャド、マリ、ギニア、スーダン、ブレキナファソで発生し、民主政権から権威主義へ移行していることに注目しなければならない。-また、同年1月にはアメリカで大統領選の結果に不満な暴徒がホワイトハウスに乱入する前代未聞の事件も起っている。
民主主義の状況を測定しているスウェ-デンの機関「V—Dem研究所」は、2022年の報告書で、世界各地で二極化し、分断が進んでいることが権威主義化を推し進めている大きな点だと指摘している。直近の2019年の世界の民主主義国・地域は87ヵ国に対し、非民主主義国は、92カ国となり18年ぶりに非民主主義国が多数派になったとの報告がある。
21世紀になってから民主主義から権威主義への移行は、主に選挙によって行われてきた。
しかし、通常のクーデターは1.2回/年と低いが、2021年はその5倍にあたる6回である。また、一部には暴力化している傾向が散見される。 その背景にある世界の潮流としては、「衰退するアメリカ」と「台頭する中国」に集約出来る。端的に言うとその鍵を握るのは中国の台頭がどこまで進むのかではないだろうか?
単に米中覇権戦争だけを問題視している訳ではないが、「グロバールノース」と「グロ-バルサウス」の勝者がこれからの世界の行く末を握るのか、それはさせていけない事だと結論づけたい。
以上