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        2023年5月21日

         

        岸田氏のアフリカ資源外交 —モザンビークLNGの救援なるか

        海峡両岸論

                            独立コンサルタント エナジー・ジオポリティクス

        代表 澁谷祐

        ○ はじめに

        ゴールデンウイークのなか、アフリカ4カ国(エジプト、ガーナ、ケニアとモザンビーク)を精力的に歴訪した岸田文雄首相の最後の目的地は、東アフリカの新興資源国・モザンビークだった。

        その背景に、ウクライナ侵略によるロシア禁輸の結果、液化天然ガス(LNG)の代替供給ソースをモザンビークに求める欧州・アジア各国間の競争激化がある。

        岸田首相は、実質一日だけの首都マプトの滞在時間だったが、異例だったのはフランスの石油・ガス大手トタル社の事務所視察だった。

        7年に一度回ってくるG7の議長国の役割を担う岸田首相は、この機会を逃がさない。

        したたかな岸田首相の「資源外交の一日」を追った。

         

        ○ モザンビークLNG事業は「日の丸」方式

        2010年モザンビーク北部のカーボデルガード州の沖合でワールドクラスの天然ガス田が発見された。オーストラリア、カタール、ロシアと米国に匹敵する供給ポテンシャルがあると期待される。

        最初に天然ガスを発見したのは米国アナダルコ(後にフランスのトタルが権益を買収)だった。

        現在、トタルが(26.5%権益比)、三井物産(20%)、モザンビーク国営会社(15%)とインドONGCや国営タイ石油会社などが共同事業する「エリア1」LNGプロジェクトと呼ばれる。

        東京ガスや東北電力との間で、天然ガスの約3割を占めるLNG売買契約(予定年間生産能力1,312万トン)が結ばれた。日本にとって、初のモザンビーク産LNGの輸入となる予定だった。

         

        ○ イスラム武装勢力の襲撃と「不可抗力」宣言

        しかし、2017年以降モザンビーク北部では、イスラム武装勢力による襲撃事件が相次ぎ発生した。

        その最大攻撃目標の一つは、ロブマオフショア「エリア1」と呼ばれる天然ガスプラントだった。

        2021年1月、イスラム武装勢力による攻撃のため、トタルはモザンビーク北部からフランスが管理する小島に安全のため物流事業の拠点の一部を移動した。

        2021年4月、治安はさらに悪化したため全職員が現場から撤収して、「エリア1」の「不可抗力」が宣言された。〔1〕

        2021 年のルワンダ軍の参入をバックに反攻に転じ、また政府軍は野党勢力の軍事部門の指導者を殺害したため、形勢は逆転しつつある。政府は、武装解除・動員解除を一気に進めて、武装解除が完了したと発表した。

        2023年2月、トタルのCEOであるパトリック・プヤンヌがモザンビークに来訪し、ニュシ大統領と会談し、北部の治安回復の確認と操業再開の可能性について話し合った。

        しかし、現在も北部ではまだ根強い武装勢力の活動を続いているため、トタルは「不可抗力条項」を完全に撤回するに至っていない。

        日本政府が100%出資する日本貿易保険株式会社が発表するカントリーリスク分類表によれば、モザンビークの引き受け条件は最もきびしい「H評価」に分類されたままである。また、外務省によれば、同国は、「危険情報レベルを3(渡航中止勧告)」に指定された。

        他方、モザンビークは国連安全保障理事会の非常任理事国としてのプライドもある。

        その微妙な時期に、岸田首相がモザンビークやってきた。

         

        ○ 岸田首相の来訪のタイミング

        岸田文雄首相は、4日モザンビークの首都マプトにおいて、ニュシ大統領とランチを共にしながら会談した。

        岸田氏は、モザンビークはアフリカ有数の天然ガス埋蔵量を誇り、重要鉱物資源に富む南部アフリカの主要国であり、日本企業による民間投資を後押ししていく旨述べた。これに対し、ニュシ氏から、数多くの分野における日本からの投資促進への期待が示された。

        両首脳は、特に、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が支援を行い、三井物産が投資しているアフリカ最大規模の「エリア1」の生産設備の建設が近く再開できるよう、力強く後押しすることで一致した。

        なお、前掲のLNG開発事業のオペレーター(操業責任者)であるフランスのトタル社マプト事務所を同日視察し、事務所代表から説明を受け際、岸田氏は、同事業がモザンビークの安定と成長、我が国ひいては世界のLNG安定供給にとり、いかに重要であるか理解できたと述べた(首相官邸発表)。

         

        ○ 岸田氏「LNG再開と治安・人道支援のパケージ提案」

        岸田首相は、武装集団による襲撃により停止しているLNG生産設備の建設を再開できれば、モザンビーク全体の発展にも資する。このため、モザンビーク政府や関係国と連携しつつ、北部地域の治安向上に資する支援を重点的に実施してきていると寄稿した。具体的には、5つの国際機関に計760万ドルを拠出し、カーボデルガード州復興のための人道・開発支援事業の実施である(首相官邸発表「現地ノティシアス紙」への寄稿文=抜粋)。

         

        ○ 中国は「エリア4」で先行と誇示

        モザンビークの北部開発地域では、「エリア1」と競合関係にあるもうひとつの「エリア4」プロジェクト(コーラル・サウス鉱区)がある。

        「エリア4」は米国のエクソンモービル、イタリアのENI、中国のCNPCと韓国のKOGASなどガス企業から構成される国際コンソーシャムで、昨年11月浮体式洋上天然ガス液化設備が完工して、LNGタンカーの初航海にこぎつけた(なお、LNGプラント建設を日揮が受注)。

        中国のWEB情報誌「チャイナデイリー」は、次のとおり誇示した(2022年11月15日付け)

        (1)「エリア4」プロジェクトは、モザンビークがLNG大国として登場したことを告げる。

        (2)その最初の出荷は、中国のエネルギー安全保障に大きく貢献し、中国国営企業の一歩前進を記した。

        (3)「エリア4」プロジェクトは、北半球が冬に向かっているときにLNGを提供する。

        さらに、モザンビーク政府は、新たな鉱区の入札審査を開始し、ライセンスのオペレーター資格を、中国国営3社を含めて欧米有力企業に与える方針が固まった。中国勢の躍進ぶりが注目されている。

         

        ○ロシア「兵器とエネルギーの交換」

        2019年8月、ニュシ大統領がロシアを訪問した際、モザンビーク石油公社とロシアの石油最大手ロスネフチ間の協力が合意され、モザンビーク北部での天然ガス開発に、ロシアが直接関与することで一致した。これと引き換えに、ロシアは対モザンビーク債務の95%の放棄を約束したと報じられた(RFI外電による)。いわゆる「兵器とエネルギー」の交換取引である。

         

        ○米国輸銀・開発金融で貢献

        米国務省の資料によれば、エクソンモービルは前掲「エリア4」プロジェクトに投資しているが、最終的な投資決定はまだ進んでいないと米政府は判断している。

        また、米国輸出入銀行は、「エリア4」プロジェクトに7億ドルを融資することを約束し、さらに米開発金融公社は、米国のアフリカ大陸における最大の投資額となっている「エリア1」プロジェクトに1億ドルのソブリンリスク保険を提供している。[2]

         

        ○ まとめ

        モザンビークは、グローバルサウスの期待の星の一つである。

        モザンビークは、ウクライナ侵攻によるエネルギーの代替供給源としての期待がある上に、天然ガス埋蔵量(100Tcf推定)はナイジェリア、アルジェリアに続いてアフリカ内で第3位を誇る。加えて、モザンビークを含む東部アフリカ地域はインド洋に面していることから、欧州・南米・アジア市場への輸出も期待される。

        また、スエズ運河がコンテナー船座礁事故のため閉鎖された事案(2021年3月)では、欧州-アジア間の代替航路としてその重要性が再認識された。

        しかし、本題に戻れば、前掲「エリア1」プロジェクトの不可抗力宣言からまる2年経たが、まだ解除されず、建設工事は凍結されたままだ。これに伴う損害額も巨額に達しているため補償問題に発展して内部コミッティの調整が難航しているという。

        モザンビークの2つのLNGプロジェクトは、明暗がはっきりした。

        これについて、グローバルエンジニアリング企業の元経営トップらは、次のように語った。

        (1)「エリア4」の場合、陸上設備の場合の安全リスクと比較したところ、武装勢力からの襲撃リスクを考慮して、コストは割高ではあるが総合的にみて、洋上方式が合理的であると認めた。

        (2)「エリア1」は襲撃リスクを当然考慮したが、外部要因としてコストに反映しなかったのではないか。特に、日本側は、「エリア1」は官民のナショナルプロジェクトという認識であって「甘かった」のではないか。

        ところで、「外部要因」とは、武装勢力を封じ込める警備上の責任が政府側にあるという認識である。

        他方、「エリア4」に参加する中国国営企業は、スーダンで石油労働者が多数犠牲になったというトラウマがある(本誌「新・ジオポリ」4月号)。陸上設備ではなく洋上に移動したのは懸命であった、

        ともかく、岸田氏は「エリア1」プロジェクト救援のため、窮状打開と早期解除をもとめて、わざわざやってきたということだろう。■

        〔1〕「不可抗力」は、戦争、ストライキ、暴動、疫病など、当事者が制御可能な範囲を超えた状況により、契約上の義務を果たせなくなった場合に、責任・義務を免除するという契約上の一般条項。

        〔2〕U.S. Relations With Mozambique – United States Department of State

        <企画制作>

        独立コンサルタント エナジー・ジオポリティクス

        代表 澁谷祐

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