┏◆◇━2023年5月━◇◆
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┃ 経営者のための 事業承継ミニ情報 ◇第86号◇
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┗◆◇━━━━━━━━━◆◇━辻・本郷 税理士法人━◇◆┛
会社の経営権である株式を、後継者にどう承継すれば良いのか?
その際に、どんな点に気を付ければ良いのか、
承継の際の税金について、どう取り扱えば良いのか?
そんな疑問の解決に役立つ情報を、毎月1回配信いたします。
このミニ情報をご覧いただき、
円滑で、そして税務上も有利な事業承継対策を実現していきましょう。
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事業承継の新常識!属人的株式を活用した事業承継対策
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事業承継を行うにあたり、予定していた時期までに後継者が承継する環境が
十分に整わない場合や、予定より早く事業承継を行うことになった場合など、
予期せぬ事態が起きることがあります。
これに備える方法として、「属人的株式」の活用が考えられます。現経営者や
後継者が保有する株式1株あたりの議決権数を複数に設定することが可能なため、後継者への株式承継後においても現経営者の議決権を確保したり、逆に
後継者への株式集約を行わなくても後継者の議決権を確保したりできる
など、さまざまな局面で有効な方法です。
【1】属人的株式とは
「属人的株式」とは、その権利・取扱い内容を「定款」に定めることで、
株主ごとに異なる扱いをすることができる株式です。
しかし、登記事項とはされないため、定款で定めた「属人的株式」の内容及び
それを発行したことは第三者に知られることはありません。
株主ごとに(属人的に)異なる扱いがされることから、「属人的株式」と呼ばれて
います。
【2】属人的株式の活用例
たとえば、発行済株式総数が1,000株で次の株主構成だったとします。
代表取締役社長A:900株
取締役(後継者)B :100株
会社法の原則は、1株につき1議決権であるため、各株主の議決権数と議決権
比率は次のようになります。
代表取締役社長A:900株 900個(議決権比率90%)
取締役(後継者)B :100株 100個(議決権比率10%)
仮に、Aの保有株式のうち800株をBに承継したとします。すると、各株主の
議決権数と議決権比率は以下のようになります。
代表取締役社長A:100株 100個(議決権比率10%)
取締役(後継者)B :900株 900個(議決権比率90%)
ここで、株主Aが保有する株式1株につき議決権は20個とする属人的株式を
設定したとします。すると、各株主の議決権数と議決権比率は以下のように
なります。
代表取締役社長A:100株 2,000個(議決権比率69%)
取締役(後継者)B :900株 900個(議決権比率31%)
株主が保有している株式数は変わっていませんが、議決権数が変動しています。
代表取締役社長であるAの保有株式数は、後継者であるBよりも少ないですが、議決権数はAが多い状態になっています。Aは、自分の議決権割合を十分確保しながら、Bに株式を承継することができます。
【3】メリット
(1) 現経営者の保有株式数が少なくても、議決権数を多く設定することで
経営権を確保することができます。
(2) 後継者に納税資金や株式購入資金が十分にない場合、承継後の後継者の保有
株式数が過半数に満たなくても、50%超の議決権を確保することができます。
(3) 現経営者の突然の相続によって相続人間で株式が分散した場合でも、後継者が経営権を確保することができます。
【4】属人的株式の設定で必要となる手続き
(1) 株主総会の開催
総株主の半数以上、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の特殊決議
(2) 定款変更(登記は不要)
【5】活用上の留意点
(1) 属人的株式の設定に関する株主総会の決議内容が「著しく不当な決議」の
疑いがある場合は、その決議が無効になる恐れがあります。
(2) 設定には特殊決議が必要であるため、現オーナーが健在であるうちに
早めに検討をする必要があります。
(3) 属人的株式を設定できるのは、非公開会社(株式譲渡制限が付されている会社)に 限られており、公開会社については属人的株式を導入することができません。
(4) 属人的株式は、株式自体ではなく、特定の株主に特別な権利を認めた株式で
あるため、定款で定めた株主以外が持つと、それは通常の普通株式になります。
(担当:八田 佳桜里)
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