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        『捨てられる日本』中川十郎

        21世紀はアジア・中国の時代だとの信念でNYからシンガポールに移り住んだ世界3大投資家の一人、ジム・ロジヤ―ス氏が近刊『捨てられる日本』~恐怖のシナリオが始まった!をSB新書から発刊した。「未曽有のインフレ、史上最大の下げ相場、捨てられる日本円。

        日本円は捨てられる。膨大な負債を抱え、日本は沈没する。金利上昇と通貨切り下げで、日本経済は大打撃を受ける。インフレで競争力が低迷する。低迷する食料自給率が新たな危機を生む。人口減少、少子高齢化で国力が地に落ちる」と日本に警鐘を鳴らしている。

        『海外投資家たちはこの国を見捨て「円売り」の動きが加速しつつある。「一流国」から「二流国」に転落したかのように思われる日本に待ち受ける「新たな危機」。最終的に損をするのは国民だが、私の見る限り、大半の日本人にはそれほど危機感がない。今起こっている現実をしっかりと見ることができていないのかもしれない。』(58ページ)と日本人に警告を発している。

        昨年11月鹿児島に帰省時、鹿児島空港から隣の席に同席した元証券会社に勤務していたというインテリ女性に、日本はこのままでは衰退すると話したところ、日本で生活している自分にはそのような危機感はない。通常に生活できており、これで結構だとの感想を聞き、

        日本国内で生活している主婦などには日本衰退の危機感はないのだと認識を新たにした。

         

        ロジャース氏は『日本は未曽有の危機に直面している。かって経済成長を遂げた日本の栄光は見る影もない。国が抱える、月まで届きそうなほど積みあがった負債。先進国の中で最も深刻な少子高齢化。新たな産業が育たず、イノベーションが生まれる土壌がない。平成以来続いている「失われた30年」は終わる気配がない』と警告を発している。『「一流国」から「二流国」へ転落したかのように思われるこの国に逆境の嵐が吹き荒れた。円安だ。

        アべノミクスの「第一の矢」である金融緩和が尾を引き、日本銀行は紙幣を際限なく刷り続けた。これが近年の円安を誘導した。』とアべノミクスに強烈な批判を加えている。

         

        エコノメトリクス的な見地から近著『2040年の日本』(幻冬舎新書)を出版された野口悠紀雄氏は「日本はよほどの努力をしないと年率1%の実質成長率の実現は難しい」と予測しておられる。(9ページ)。野口氏はさらに日本の教育の重要性について触れておられるが、ジムロジャース氏も同様「教育」に注力し、外国人留学生を増やせと強調しておられる。

        同氏は今後の日本は「教育」に加え、「観光」、「農業」に注力すべきことを力説しておられるが卓見だ。今後米国を抜いて発展する中国、さらにインドとの協力を強調しておられる。

        昨今の岸田政権の近視眼的な経済政策、さらには時代に逆行する原発政策、防衛費倍増などを見直し、日本衰退を止めるための総合的、かつ長期的な抜本的経済対策を樹立することに全力を注ぐことこそ日本にとって喫緊の課題ではないか。猛省を促したい。

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