2023年7月30日
ウクライナ危機と新しい日中関係
元国連大使・谷口 誠
1 ウクライナ危機
ウクライナ危機は、確かにNATOを中心とした米国、西側諸国とロシアとの抗争であり、第三次世界大戦に発展し兼ねない危険性を孕んでいる。2021年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから、すでに1年半経過しているが、未だに終結の見通しは立たない。その最大の原因は、現代の世界にこの危機を解決する見識を持つたリ-ダ-がいないことが最大の原因であろう。かつてのEUにはフランスのミテラン、ドイツのこおるコ-ル、米国のクリントン、ロシアにもエルチンなど錚々たるり-ダ-がいた。
ウクライナのゼ―レンスキ―は本当の意味の政治家とは言えないし、ロシアのプ―チンにいたつてはKGB上がりの人だとしか思えない。今から思うと、安倍晋三首相が27回も日本によく招いたものだと思う。
このままではウクライナ危機は解決しないで、最大の犠牲者はウクライナの国民であろう。またロシアの国民もプ―チンの下では困窮をつづけざるをえない。
かかる状況の下で、どの様な解決策があるのだろうか。去る5月広島で開催されたG7サミットには、ウクライナのゼレンスキ―も招かれたが、解決につながらなかつた。G7は44年前に設立された組織であるが、私は世界は大きく変化し、G7だけですべてのことが決定できるものではない。また決定権限を有する国連安全保障理事会も紛争当事国であるロシアの拒否権行使により否決された。私はウクライナ問題の解決は、78年前の国連発足時に5大戦勝国のみにあたえられた拒否権行使を改善し、修正できるかにかかつていると考えている。
ウクライナはNATO参加を急ぐべきではなく、長年かかつても
国連安全保障理事会の改革を待つか、ロシアの内部の改革を待つ
べきであろう。
日本は現在安全保障理事会の非常任理事国であるが、5大国、特に現在のロシアによる拒否権行使の制限、改革に取り組むべきである。
2 新しい日中関係
私は14,5年前は毎年中国の北京大学、清華大学、人民大学、
上海の同済大学、社会科学院などに招かれて、学術交流をしたことがあつた。しかし、最近は私の高齢化に加え、日中関係の悪化が目立つようになってきた。今年の5月の中国の新任大使の着任式に
出席したが、王毅大使のレセプションなど比較して閑散としており、日本側の出席のレベルも低く、現役の閣僚の出席者はあまり見られなかつた。かつての首相の福田康夫さん、鳩山由紀夫さんなどがきておられましたが、盛り上がりをかいていた。
創価学会の池田大作さんの大きな花輪のみが目立つた。
最近、日本の中国研究者たちも現在の中国との学術交流は極めて困難で、習近平国家主席体制のもとではとても研究はできないとこぼしていた。私が代表を務めている研究所でのZOOM会議でも
中国人の研究者はあまり発言しなくなつた。
このような状況は日中両国にとつて、極めて由々しきことで、戦後両国の先輩たちが営々として築き上げてきた努力と成果を水泡に帰すのではないかと恐れていた。
確かに最近の中国の政治体制は、独裁体制に近く不透明な点が多く、とくに中国にとつて重要な米国との関係悪化が懸念される。
2015年ごろより、習近平政権の目玉政策である「一帯―路」
構想が余りにも遠大すぎ、かつ資源搾取の傾向があるため、
スリランカや南太平洋の諸国の反発はんぱつを招いた。
このような事情を反映してか、中国の政府関係者が15年ぶりに
日本をおとずれる旧友を温めることが多くなった。
この様な傾向が真に日中関係の改善に資するものであるならば歓迎すべきであり、日本も千載一遇のチャンスとしてとらえるべきではなかろうか。以上私の長年にわたる国連、OECDなどの経験にもとづき、私見をのべましたが、ご批判をいただければ幸いです。