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        2023年7月30日

        「月刊日本8月号巻頭言」

         

        日米安保条約の破棄こそが、日本独立の必須条件だ

                          主幹 南丘喜八郎

         

        米誌『タイム』は今年5月22日・29日号の表紙に、岸田総理の写真を載せ、インタビューの見出しには「岸田総理は長年続いた平和主義を放棄し、日本を本当の軍事国家にしようとしている」と書いた。同記事は「岸田総理は影響力を増す中国を食い止めたいアメリカの後押しを受け、経済規模で世界3位の国に相応しい軍事的なプレゼンスを持つ大国に戻り始めた」と記していた。

        慌てた外務省は「標題と中身に乖離がある」として抗議したという。この『タイム』誌の記事から僅か1カ月後の6月20日、バイデン米大統領はカリフォルニア州の民主党支持者集会で、「日本の防衛費増額は自ら岸田総理に働きかけた成果だ」とアピールした。

        バイデン大統領曰く、「日本は長い間、軍事予算を増額して

        こなかった。しかし、私は日本の指導者(岸田総理)と、広島を含めておそらく3回、異なる機会に会い、私は彼を説得し、彼自身も何か違うことをしなければならないと確信した。

        日本は軍事予算を飛躍的に増大させた」 翻ってみれば、岸田総理は昨年5月、東京で行われた日米首脳会談で「防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する」とバイデン

        大統領に「公約」した。さらに昨年12月には安保関連三文書を閣議改定し、敵基地攻撃能力の保有に加え、米国製巡航ミサイル・トマホークの導入も決定、防衛費を今年度からの5年間で、

        これまでの1・5倍以上の43兆円にすることを決めたのだ。

        岸田政権は安倍元総理の亡霊に導かれるかのように、すべて米国の

        「指図通り」に、防衛費増強を決め、米国製兵器の「爆買い」を進めてきた。

         

        本誌は何度も指摘しているが、安倍政権下でトランプ大統領が初来日して以来、バイデン大統領やハリス副大統領、ペロシ前下院議長など、米国要人の米軍横田基地からの日本出入国が常態化し、定着してしまったかのようだ。

        彼らは出入国審査が不要、フリーパスなのだ。我が国の現状は、将に米国植民地の様相を呈しているのだ。

        4年前、横田基地から入国したトランプ大統領が米軍ヘリで

        海自横須賀基地に飛来、へり空母「かが」艦上で500人余の海自隊員を前に訓示したことがある。

        あたかも宗主国のトップが属国の軍人に訓示を垂れるかのような、屈辱的な光景が繰り広げられたのだ。 この屈辱的な日米関係を規定したのは、昭和27年、サンフランシスコで調印された日米安保条約である。安全保障を米国に依存し、経済活動のみに没頭する。

        爾来、我が国は「魂なき繁栄」に酔い痴れ、現を抜かすことになる。71年前の9月8日、講和条約の調印式はサンフランシスコの華麗なオペラハウスで行われた。

        一方、安保条約はサンフランシスコ郊外のプレシディオにある米陸軍第六軍の兵隊集会所で調印式が行われた。将校用クラブですらなかった。しかも、この第六軍はフィリピンで日本軍と戦い、敗戦後日本を占領した軍隊なのだ。

        条約に署名したのは、米国側はアチソン国務長官、ダレス国務相顧問、ワイリー上院議員、ブリッジス上院議員の4人、一方、我が国は吉田茂総理ただ一人だった。外交上異例のことである。

         

        さてこの集会所で調印された二国間条約だが、これは単に「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」とだけ記されている。

        通常、軍事同盟条約には必ず「相互」という言葉が入る。

        つまり二国は対等な関係にあると標記するのだが、この旧安保条約には「相互」という言葉は入っていない。

        主権国家間の同盟条約とはとても言えない代物だったのだ。

        米軍が講和条約発効後も日本を占領し続けるための証文に過ぎなかった。しかも米軍には「日本国における大規模な内乱及び

        騒擾を鎮圧するため」軍事介入する権利があり、加えて安保条約と

        表裏一体の行政協定(今の地位協定)では、米軍軍人、軍属、家族が犯す「すべての罪について、専属的裁判権を日本国内で行使する権利」を米国に与えているのだ。

        これではまるで植民地ではないか!独立自尊の日本国を取り戻すための必須条件は日米安保条約の破棄である。

         

        吉田茂の著書『回想十年』を読めば、吉田が「戦争で負けて外交で勝つ」道を必死に探っていたことは理解できる。

        だが、吉田は間違いを犯した。早逝した外交評論家片岡哲哉は著書『さらば吉田茂』で、こう喝破する。

        「吉田は筋金入りのナショナリストであった。

        だから彼は自分の快楽のために悪魔に魂を売ったファウストではない。彼は国のために国の魂を売ったのである」

         

        「国の凌辱せらるるに当たりては、縦令国を以て斃るる共、正道を踏み、義を尽すは政府の本務也」(西郷遺訓)

        私たちは独立不羈の精神を噛み締めつつ、米国植民地からの独立戦争を始めねばならぬ時が来た。

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