BIS論壇 No.419『浅草のニューオリンズジャズ』中川十郎
BIS理事の三冬社・佐藤公彦社長のご紹介で、8月28日に浅草公会堂で開催の「ニューオりンズフエステイバル」に参加した。筆者は商社のNY駐在中、米国競争情報専門家協会国際会議がニューオリンズであり、その講師として招待されたおり、幹部とジャズクラブ
に案内され、その時、初めてニューオリンズジャズの魅力に圧倒された。そのジャズを30年ぶりに浅草で聴くことができ、感無量なるものがあった。
演奏はトーマス・フィッシャーとニューオリンズジャズオールスターズで歌手のヨランダ・ロビンソンさんをいれて7名のメンバーで素晴らしい本場のジャズ演奏を堪能した。
前場は浅草で毎日曜日演奏しているという外山喜雄とデキシーセインツ6名の演奏があったが、これも素晴らしく聴衆は感銘を受けていた。
筆者がジャズに最初に触れたのはNY駐在中、マンハッタン・シェラトンホテルで演奏
していた楽団のジャズだ。その後、日本からの訪問客を案内し、ダウンタウンのソウホウのジャズクラブ・「ブルーノート」にもたびたび通った。
かって、ブラジルで親しくしていた小野田寛郎元陸軍少尉が奥様とニュ―ヨークを訪問された折、NYの「バードランド」に案内。小野田さんを称え、「孤軍」を作曲された秋吉敏子さんを紹介したことがある。
その後、「ブルーノート」が六本木に出店。東京で小野田少尉を奥様ともどもご案内し、秋吉さんとご主人のタバキンさんに紹介。名作の「イエローロード」とともに秋吉さんの傑作といわれる「孤軍」を特別に演奏いただいた小野田少尉が大変喜ばれたことを思い出す。
浅草のジャズフエステイバルは当初、浅草の町おこしに、20社以上の浅草おかみさん会が中心となり30年以上も前にジャズの本場、ニューオリンズから誘致し毎年、浅草で開催している。浅草の皆さんが手作りで、民間ベースで米国との文化交流に努力している。
このおかみさん会はロンドンの赤い二階バスを浅草に導入したり、ブラジル・リオのカーニバルを招聘していることでも有名だ。浅草のおかみさん会は地域おこしの先駆者だ。
このことに関連し、9月1日には山田洋次監督作品で、吉永小百合、大泉洋主演のおかみさんを主体とする『こんにちは、母さん』も封切られるという。
ジャズ終演後、佐藤公彦社長におかみさん会代表の富田さんをご紹介いただいたが、頭の低い、控えめな態度に感銘を受けた。
ニューオリンズジャズでは浅草の皆さんが米国、日本一体となり、ジャズを盛り上げており、ここにインバウンド観光振興による地域おこしの神髄があるように思えた。ニューオリンズジャズと浅草の皆さんの文化交流、友好促進がさらに深まることを祈念したい。