BIS論壇No.418『TICAD30周年』中川十郎23・8・27
本年はTICAD(アフリカ開発東京国際会議)が1993年に発足して30年になるところ
より、外務省の主催で発足30周年記念行事が都内のホテルで開催された。
筆者は米コロンビア大学留学時、発展途上国論の有名教授で、当時国連事務総長の顧問もしていたジェフリーサックス教授の「国際関係、発展途上国論」の講義を傍聴していた。
当時のコロンビア大学にはノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル教授、ステイグリッツ教授など多彩な教授が多く、彼らの講義も傍聴し、国際貿易論について意見交換などさせていただいた。特にロバート・マンデル教授とは後年、日本のO社の社外特別委員を一緒に2期4年務めたことから、親しくなり、O社の日本や中国の研究所、工場の見学を一緒にしたこともあり、長年公私ともにご指導を頂いた。
筆者の勤務先の東京経済大学創設100周年記念講演会にははるばる米国から来日いただき500名を超える聴衆が「アジア共通通貨について」の講義に感銘を受けた。
さて、上記ジェフリーサックス教授はアフリカ問題の専門家でもあり、横浜でのTICAD会議で講演するというので、講演に参加した。以来、そのご縁で3回ほどTICAD会議を傍聴することになり、TICADとの関係が生まれた。
8月26日のTICAD30周年記念講演会は林外務大臣、森元首相などの講演もあり、有意義であった。とくにアフリカはポスト・チャイナ、ポスト・インドとして21世紀後半から22世紀にかけ、最も発展する大陸として世界の注目を集めている。
TICADには世界銀行やUNDP(国連開発計画)やAU(アフリカ連合)など国際機関も関与しており、各代表の講演には、アフリカの将来に対する自信がみなぎり、感銘をうけた。
アフリカは地球上で最後の残された発展市場とみなされ、米国、EUのみならず、中國、インド、ロシアなども注目している。衰退しつつある日本として未来市場のアフリカに注力する必要性を痛感した。アフリカは21世紀末には人口25億人、22世紀には50億人に達し、世界の人口の半分を占めるとみられる。54カ国が存在するアフリカは日本からは地理的にも遠いが、丸一日で行ける距離にあるとのこと。資源大国でもあるアフリカとの協力強化に、日本としても官民でなを一層の長期的な対応が要請される。
日本としてはTICAD30周年を迎え、グローバルサウスとしても力をつけつつあるアフリカとの戦略的対応が必要だ。2024年には日本でアフリカ首脳会議が、2025年には横浜で第9回TICADが開催される。この機会にアフリカとの関係がさらに強化されることを期待したい。