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        「古武士(もののふ) 第46 シトロエン」

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        道上伯のアシスタント清水猛は自動車の運転が上手かった。

        道上先生を乗せている車だから細心の注意。

        いつ発進したかいつ止まったか分からないほどだった。

        彼はパリに渡仏するなり当時フランスで一番高い車を買いに行った。 シトロエンのデエス21が売り切れだったのでイデを買った。あいにく黒が無く紺のイデを現金で買った。

         

         

         

        当時のことで円をあまり持ち出せない時代だったがかなり隠し持ってきたようだった。 まずドルに換えたお金をフランに換えた。

        手数料で銀行に相当持っていかれてしまったが イデは最高の車だった。

        シトロエンの車はオイル・サスペンションで乗り心地は世界一だった。

        乗ると車体が大きく下がった。

        高速を飛ばすと道路に吸いつくように車体が安定した。

        その車で一人の時は時速190キロで飛ばしていた。

        メーターの数字は180キロまでしかないので針が右の端にパーン、パーンと大きく振れていた。

        当時フランスは世界でもハイテクのリーダー的存在だった。

        のちにTGV(最速電車)、コンコルド(最速飛行機)、ヘリコプターは世界の市場を圧倒していた。

        そんな時代に道上はアミ・シス(6人の友)というシトロエンに乗っていた。

         

         

         

         

        6人と言うものの5人がぎりぎりの小さな車だった。

        最高速度130キロで、他車を追い抜こうとするものなら身体を前後に揺さぶり勢いをつけなければ追い抜けなかった。

        道上はこの車でボルドー・パリ間(650km)をよく通った。

        ある夏の終わりの日、愚息を乗せパリからボルドーへ向かった。

        朝9時出発。途中パリから約270Kmのツール市(Tours)あたりで昼をとる。 

        ツール市、ブロワ市、アンジェ市はルアール川に面した古城が立ち並び、レオナルド・ダビンチも晩年を過ごした風光明媚な観光地。 又フランスでもっとも綺麗なフランス語を話す土地柄で言葉のアクセントに品位が感じられる。

         

        当時のフランス料理は美味しかった。

        最近のヌーベル・キュイジーヌのようなこねくり回した料理ではなかった。

        そして誰もが当然のように飲酒しても運転する時代だった。

        ボルドーの赤ワインを飲み、道上も上機嫌だった。

        やはり肉にはボルドーワインだ。

        ルアール川の赤ワインは軽すぎてコクが無いワインが多く、

        ルアールは白ワインの方が有名だった。

         

        塩味、脂身、コショウ味ときたら もうボルドーワインを飲まなくては食べられない。

        愚息はその飲みっぷりを尻目に、いつかは飲んでやるぞ、と心に誓った。

        勿論貧乏人のようにグラスワインなんてオーダーはしない。

        しっかり1本飲む。

        これはレストランに対する礼儀でもある。

         

        美味しい料理を食べ、ふたたび自動車に乗った。

        ハンドルを握った道上は突然愚息に向かって

        「雄峰 お父さんの運転は悪くないだろう」「特別上手いとは言わないが、下手ではないだろう」「今まで無事故だぞ」。

        愚息は御世辞が言えない要領の悪いガキ。黙ったままだった。

         

        その直後、赤信号で前の車が急停止したため道上は慌てて急ブレーキをかけた。

        ブレーキを3度強く踏んだ。 だが雨上がりの石畳は滑りやすく、

        むなしくも前の車に追突してしまった。

        道上は愚息に 「お父さんは3度ブレーキを踏んだのを見ただろう」と二度繰り返して言った。 愚息は静かにうなずいた。

         

        その後アングレーム市(Angouleme)経由でボルドーまで380Km、数時間の道のり。  二人とも無言だった。

         

        次回は「アルカッションの高校」

         

         

         

        【 道上 雄峰 】

        幼年時代フランス・ボルドーで育つ。

        当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。

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