BISB論壇 No.421『一帯一路10周年記念シンポジム』中川十郎
10月13日、首記「一帯一路」10周年国際シンポジウムが都内のホテルで開催され、参加した。 中国、カンボデイア、スリランカ、パキスタン、タイなどからも駐日大使、一帯一路研究関係者などが参加。日本からは福田康夫・元総理大臣、二階俊博・日中友好議員連盟会長、経団連副会長・佐藤康博氏などが参加。5時間近くの会議で熱気あふれる討論が行われた。主要討論は①シンクタンクの観点から『一帯一路』の国際貢献、未来の展望、第3国市場に於ける日中協力、②アジア太平洋対話、中パ経済回廊、『一帯一路』融資課題、「インフラによる相互接続」
③メデイアフォーラムでは「一帯一路実体験」についてメデイアからみた「一帯一路」などが討論され、有益であった。
討論終了後、関連団体による協力覚書調印式も行われ、日本からは筆者も関与している「一帯一路日本研究センター」代表の進藤栄一・筑波大学名誉教授、国際アジア共同体学会会長が調印式に日本を代表し参加された。今後、中國、日本、ASEANを中心に一帯一路研究協力がさらに促進されることを期待したい。
「一帯一路」(今後、BRI (Belt & Road Initiative )と略す)は 世界最大の自由貿易協定(FTA)で創設以来10年を経て、世界の7割近くの132カ国が参加。三国市場協力や、道路、鉄道、港湾などインフラ建設にも実績を上げている。ラオスやインドネシアでは高速鉄道が完成。スリランカ、ギリシア、カンボデイアなどでは港湾建設で実績を挙げている。中国と欧州を結ぶ「中欧班列」では25カ国、215駅を結び、中國・欧州の物流革命が起こっている。
B&RIでは物流のみでなく、とくに発展途上国と 教育、環境、文化、メデイア協力にも注力している。 パキスタンでは経済回廊、発電所建設、ラオスでは鉄道建設など実績を挙げている。2028年にはタイまでの鉄道網も完成予定であるという。スリランカのハンバントタ港は、欧米で「債務の罠」論で批判されているが、港の建設費債務はスリランカの対外債務の10%に満たず、金利も低利に抑えてあると、当時このプロジェクトに関与されていた呉江浩 中國駐日特命全権大使が強調されていた。呉大使はBRIは軍事面での提携ではなく、多国間国際貿易投資拡大。共同発展を目指すものであり、「人類運命共同体」の構築を目指すものである。Derisking,、Decoupling、分断を目指すものではない。逆に対話、団結、協力、Win-Win の関係を目指す未来志向の構想であると力説しておられたのが印象的だった。
この意味で、日中に於いても第3国市場で相互協力し、日中協力をさらに進めたいとの強い意向が示された。10月17~18日には北京で第3回 一帯一路(B&RI)首脳会議が10周年を記念して開催され、習近平主席が主催される。この会議には世界から130カ国の首脳、30の国際機関代表も参加する。
B&RI 10周年を迎え、日本はメデイアを含め、B&RIに批判的論調を見直し、未来志向で、一衣帯水、隋、唐時代からの日中友好関係をさらに拡大強化し、21世紀のシルクロード建設に尽力
することが強く求められている。それが30年以上にわたり衰退しつつある日本経済の再建、再構築にとっても喫緊の命題であることを官民ともに強く認識すべきであろう。 以上