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        「古武士(もののふ) 第50 手紙」

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        「古武士」は当初30話で終わる予定だったのですが

        100話まで書けと多くの方に叱咤され、ご迷惑をおかけします。

         

        道上は 6000~8000通の年賀状を手書きで毎年送っていた。

        几帳面な性格から来るのだろうか、銀のパーカー万年筆で1枚1枚丁寧に書かれた字は、やはり昔の人は達筆だったと思わせる。

        記憶力と几帳面さが人格には不可欠の様にみえた。

        道上はことあるごとに愚息に「手紙を書け、手紙を書け」としつこく言った。

        しかし愚息との意識のギャップは100年以上もあった。

        愚息は既にパソコンの時代を夢見ていた。

        仕方なく道上に手紙を書こうものなら赤字で誤字脱字の修正が送り返されてくる。

        その度に愚息に緊張が走った。

         

        小枝は書道の先生をしたほどであったが決して魂のこもった字を書いていたわけでは無い。

        ただ しばしば日本向けに送る道上の手紙を代筆をしていた。

        小枝はお正月ともなるとルーブル博物館、大使館、ニナリッチのウインドウ等々と大忙しでお花を飾っていた。

         

        ヨーロッパの人々はクリスマス・カード、年賀状を書く。

        そして日本の暑中見舞いの代わりにバカンス先から思い出カードを送っていた。

        道上にとって書く事は仕事の一環でもあった。

        弟子たちはそれらの手紙を宝物のように大事にしていた。

        フランス人は頭でっかちで やたらと見て覚えたがる頭先行型の習性があるが、 道上はそれを良しとせず、ビデオ撮りを一切させずに身体で覚えるよう指導した。

        一方取られた写真には求めに応じてサイン、また一言添えた。

        愚息やその他の子供たちに渡す手帳には必ず一言書かれていた。

        「少年よ大志を抱け」あるいはゲーテの一節から「勇気はもっとも重要な要素だ」

        毎日日記を事細かくつける事はもちろん、日々の手帳にはびっしりと細かく色々な事が書かれていたそれらの事始めがお正月である。

        道上の前には年の膨大なスケジュールが待ち構えていた。

        それを事細かく分析し処理していた。

        次女志摩子、愚息雄峰にはあまりにも真面目すぎる父親だった。

         

        次回は「パリでの食事」

         

         

         

         

         

        【 道上 雄峰 】

        幼年時代フランス・ボルドーで育つ。

        当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。

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