2023年10月22日
今週の所感
村田光平(元駐スイス大使)
2023年10月19日・世界の核危機と日本
10月14日上智大学で別添の要領で行われた講演会のレジュメをお届けいたします。
注目されたのは下記諸点です。
1.徳田悠希(上智大学4年生)はジェンダーの視点から見る
核問題を誠に要領よく説明され、誠に頼もしい未来の世代の代表としての今後が期待されます。
2.島薗 進先生の<現在タンクにためられている水の7割弱で、トリチウム以外の62の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍>というご指摘は福島処理水の海洋放出問題の今後に決定的影響を及ぼすと思われます。
3.脱原発を核廃絶の前提条件とすることについては核廃絶への
動きの活発化に貢献するとともに、放射能の危険性をトーンダウンする動きを牽制することに資すると期待されます。
市民社会の脱原発運動と核廃絶運動の間の連携の樹立にも貢献することが期待されます。
追伸
14日の講演会は質疑のところでテレサテンの大ファンである私から難問に対して「時の流れに身を任せ」と回答して満場から喝采を頂いたことは驚きでした。
世界の核危機の真因としての倫理の欠如(レジュメ)
1、原発の安全に責任を負う体制の欠落
原子力規制委員会の立場(責任なし)
総理大臣の立場(責任なし)
驚くべき現状は不道徳・無責任であり倫理の欠如そのもの
2、原子力の平和利用と軍事利用の区別は不可能
平和利用の促進は軍事利用の実現をもたらす。(原発=原爆)
脱原発は核廃絶の前提条件とすることが重大課題となる。
この認識を欠くIAEA条約の改正は不可欠であり、その実現は
国際社会の緊急責務である。
これを放置することは世界の核危機を招いた真因としての倫理の欠如に他ならない。
3、神宮外苑の再開発により脅かされる都市の緑の問題を思うにつけ、改めて福島原発事故の教訓は経済至上主義から生命至上主義への移行であることが想起される。
哲学の教え(天地の摂理、歴史の法則、老子の天網)から予見すれば、その実現は歴史の必然とみなし得るといえよう。
4、経済至上主義を支えてきたのはグローバリゼーション及びGDP経済学であるが、人間性の復興を目指し、基本的な道徳的倫理価値を増進する文化の逆襲が今こそ求められる。
(ロマ救済のため欧州文化会議の創設運動に尽力したメニューヒン)
5、文化は文明の見直しに重要な役割を果たしうる。
最大の課題は力と支配に立脚する現在の父性文明を和と連帯に
立脚する母性文明へ移行させることである。
父性文明は破局を招くことは歴史が示している。
宗教は文化と文明の根底にあるものの一つである。
宗教に関心を持たない人も、市民社会の一員としての良心という部分で、良識ある宗教に共通している倫理と一致する。
宗教と良心が倫理を統一すると言えよう。
日本の母性文明は14000年の平和を実現し、
ますますその実態が高く評価されつつある縄文文明を源泉としており、国連倫理サミットの開催実現を通じて核廃絶の実現に貢献し得ると考えられる。
6、国連倫理サミットは地球倫理の確立・戦争を招く父性文明から母性文明への転換・核廃絶の実現という三位一体の目標を掲げるものであり、拒否権問題で窮地に 立たされている国連の存続はその開催実現にかかっていると言えよう。
(了)