奥 義久の映画鑑賞記
2023年11月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2023/11/01「ドミノ」☆☆☆☆
“冒頭5秒、すでに騙されている”の、キャッチコピー通り多重構造のストリー展開で見せるノンストップ・サスペンス。刑事ダニーの娘が誘拐される。娘の関与した手がかりを見つけるが、追いかける人間は人の脳を支配する特殊能力を身に着けている。ダニーは果たして娘を見つける事が出来るのだろうか?ダニーを演じるのはベン・アフレック。映像の魔術師と言われるロバート・ロドリゲス監督の革新的映像の世界は観るものを酔わせる。終盤の真相が明らかになった時、もう1度見たくなる作品である。
2023/11/02「唄う六人の女」☆☆☆★
鬼才・石橋義正監督の10年ぶりの新作は、人里離れた森の奥に迷い込んだ二人の男性を主人公に大自然の尊さを訴えた異色作。二人の男性には、竹野内豊と山田孝之、森に暮らす六人の女を演じるのは、氷川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈が扮している。他にベテランの竹中直人、津田寛治、白川和子が脇を固めている。幻想な世界を舞台に自然破壊を守る今日的テーマをサスペンス仕立てで描いている。
2023/11/03「ゴジラ -1.0」☆☆☆★
ゴジラ映画70周年記念作品として制作されたエンターテインメント大作。今回の舞台は太平洋戦争が終わり焦土となった日本。日本の復興を目指す中で凶暴なゴジラが東京に向かってくる。米ソの緊張の中で日本は日本人の手で守らねばならなかった。ゴジラに挑む人々を通して、大切な命の在り方を描いている。主演は神木隆之介、浜辺美波、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介。
「SISU 不死身の男」☆☆☆★
ナチスに祖国を焼かれた老兵コルビは金塊を見つけた帰りにナチスの戦車隊と遭遇する。元特殊兵の伝説の戦士コルビとナチスの戦闘が始まる。コルビの武器はツルハシ1本とSISU(折れない心)、
世界一幸せな国フィンランドから届けられたマッド・エンターテインメント作品。
2023/11/04「私がやりました」☆☆☆★
名匠フランソワ・オゾン監督の最新作は極上のミステリー映画。原作は1930年代の戯曲。パリの大豪邸で起こった有名映画プロデューサー殺人事件。容疑者で売れない新進女優が逮捕され、前半は法定サスペンス。無罪になると女優マドレーヌは一躍人気スター、弁護士のポリーヌも売れっ子弁護士になるが、ある日真犯人を名乗るかつての大スター・オデットが現われる。後半は犯人の座をめぐり、3人の女性の駆け引きが楽しめるクライムミステリー。マドレーヌ役には「悪なき殺人」で東京国際映画祭の最優秀女優賞を獲得したナディア・テレスキウィッツ、ポリーヌにはレベッカ・マルデール、そしてオデット役には、大物スターのイザベル・ユペールが演じており、3人の演技合戦も素晴らしく、極上の映画に酔わされる。
2023/11/09「おしょりん」☆☆☆
日本製メガネの95%は福井県で作られている。その始まりは明治末期、福井県の寒村は冬の収穫がなく出稼ぎが主流だった。麻生津村の庄屋の次男・増永幸八は勤め先の大阪から帰京して兄の五左衛門に眼鏡作りを進める。初めは反対していた五左衛門は視力の弱い子供が眼鏡を掛けて大喜びをする姿を見て、眼鏡作りに挑戦する決心をする。本作は眼鏡作りの品質、資金繰り等の苦心談の中で描かれる夫婦愛、兄弟愛、職人との信頼関係などの素晴らしい人間ドラマが描かれている。主人公五左衛門を支えた妻むねに北乃きい、幸八に森崎ウィン、五左衛門に小泉幸太郎が扮している。若い役者の熱演もこのドラマを盛り上げている。
2023/11/10「デシベル」☆☆☆★
潜水艦事故で生き残った海軍中佐カン・ドヨンに連続爆弾魔から電話がかかってくる。爆弾は騒音反応型爆弾。爆弾を止める為孤軍奮闘するカン・ドヨンだが、やがて本来のターゲットと隠された過去の出来事に行きつく。カン・ドヨンにキム・レウォン、爆弾魔にイ・ジョンスクが扮している。かつてない設定のパニックアクションとその裏で描かれている悲惨な出来事は見ごたえ充分な作品に仕上がっている。
2023/11/11「マーベルズ」☆☆☆★
アベンジャーズ最強ヒロインのキャプテン・マーベルの新たな物語。本作では、キャプテン・マーベルがモニカとカマラの3人でチームを結成。3人のチームワークで悪に挑む。少しだけ消化不良気味の作品だが、楽しめる作品はいつものこと。
「ぼくは君たちを憎まないことにした」☆☆☆
2015年11月13日パリのコンサートホール・バタクランで起きた銃乱射事件。郊外のサッカースタジアム、レストランでも自爆テロが発生。本作はこの事件で死亡した妻エレーヌの夫でジャーナリストのアントワーヌが息子のメルヴィルとの2週間の出来事を綴ったベストセラーの映画化。この事実を受入、息子と二人で前向きに生きるためアントワーヌはテロリストを憎まない事にした。悲しみに負けず、生き抜くことがテロにも負けない事だとの信念をつらぬく。但し、ラストのハンモックにゆられているアントワーヌの本音は悲しみに満ちた姿に映る。まだ人生はこれから、アントワーヌとメルヴィルの未来もこれからだから、ラストは何となく歯切れが悪く感じてしまう。
2023/11/16「法定遊戯」☆☆☆
現役の弁護士・五十嵐律人の小説「法廷遊戯」の映画化。法律家を目指すロースクールの模擬裁判で起こった殺人事件。弁護士・被告人・被害者(死者)となった3人には哀しい過去の出来事があった。
主人公の弁護士に永瀬廉、被告人に杉咲花、死者に北村匠海が扮している。若手の演技派が揃い、法律家の書いた法定サスペンスだけに見ごたえが十分。★が少ないのは、主役の永瀬の演技が杉咲、北村には負けている分。若手TOPの二人と比較するのは少し可愛そうかも知れない。
2023/11/20「正欲」☆☆☆★
50万越えの朝井リョウの大ベストセラー小説の映画化。家庭環境、性的指向等の異なった5人の男女の群像劇。主人公の検事に稲垣吾郎、水フェチの夏月に新垣結衣、同じ趣向を持ち、生きる希望を持てない佳道に磯村勇斗、ダンスに感情をぶっける青年に佐藤寛太、その男だけに興味を持つ男性アレルギーの八重子に新人の東野絢香が扮している。検事の息子のYouTubeが起点となり、人生が交差するが、難役の主人公を演じるには稲垣では役不足に感じた。新垣結衣が熱演しているだけに残念キャスティングである。
2023/11/21「ユリョン呼ばれたスパイ」☆☆☆
1933年、日本統治下の京城を舞台に抗日組織団のスパイ・ユリョンの総督暗殺計画を描いたスパイ・アクション。日本人役も韓国人俳優が演じているためにイントネーションに問題があったりして、せっかくの楽しめる作品が評価を落とす事になった。日本人俳優を使って欲しかった。
2023/11/22「蟻の王」☆☆☆★
イタリアの名匠ジャンニ・アメリオが芸術家アルド・ブライバンティとその恋人エットレの実話を描いた作品。詩人で劇作家、蟻の生態研究者でもあるアルドは弟子の一人エットレと惹かれあい、ローマで同棲生活を始める。エットレの家族はアルドを教唆罪で逮捕させ、エットレは矯正施設に入れられる。世間の好奇な目にさらされながら裁判が始まった。アルド役には名優ルイジ・ロ・カーショ、エットレはヴェネチアで新人賞に輝いたレオナルド・マルテーゼが扮している。イタリア・アカデミー賞12ノミネートの注目作品。
2023/11/23「首」☆☆☆★
北野武監督が構想30年をかけたという北野版“本能寺の変”。
戦国時代は戦場に女性を同伴できなかったため、男色の武将も多かった。本作では、織田信長、明智光秀、荒木村重が三角関係にあり、光秀の裏切りの一因にもなっている。主人公の羽柴秀吉はもちろんビートたけし(北野武)が演じているが、秀吉の小柄で猿似で小賢しいイメージとは程遠く、北野監督作品でも別の役者を使うべきだと感じた。西島秀隆、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋、遠藤憲一、岸部一徳ら豪華メンバーが揃っただけに主人公のミスキャストは残念といえる。(出演者の中では忍者役の寺島進あたりが秀吉のイメージ、火野正平に近い。)戦闘シーンの迫力はなかなかと言えるし、娯楽性は合格。
「ロスト・フライト」☆☆☆★
東京行きの飛行機が落雷のためにフィリピン沖上空で消息不明になる。飛行機は奇跡的にフィリピンのホロ島に不時着するが、その島は反政府ゲリラの拠点だった。機長のトランスは犯罪者のガスパールを連れて偵察に行くが、その間に乗客17人がゲリラに捕らわれてしまう。トランスたちは捕らわれた乗客を助けて脱出できるか?トランスを演じるのはジェラルド・バトラー、ガスパール役はマイク・コルター。元MI6のスパイ小説家の脚本がリアルなアクションを描き出している。