BIS論壇No.428『IPEFインド太平洋経済枠組み』中川十郎
11月13日からサンフランシスコで開かれていたIPEF(インド太平洋経済枠組み)14カ国首脳会議はもともとは中国の特に「一帯一路」構想に対抗する米国のバイデン大統領の提唱で、アジア太平洋関係国14カ国が参加し22年5月に発足。9月に正式交渉が開始された。23年5月には重要物資の供給網強化で合意した。
今回のサンフランシスコでの首脳会談では交渉4分野の内、脱炭素を推進する「クリーンな経済」と脱税逃れを目指す「公正な経済」が合意した。
残りの「貿易の円滑化に向けた手続の統一」は難航し、特に「デジタル貿易を促進するルール作り」は米国の反対で先送りとなった。
IPEFは関税の撤廃や削減を交渉の対象としておらず、米国への輸出を目指す加盟新興国は利点がなく、環境や雇用で厳しい基準を科されることでは新興国からのIPEFへの参加の魅力は薄れている状態だ。IPEFはトランプ政権がTPPから脱退した米国がアジアへの関与を続けるための枠組みで、このままでは空中分解の危険がつきまとうとの見方もある。(日経11月20日)
米国はTPP(環太平洋連携協定)からも脱退し、発展する太平洋との貿易関係にも影響を受けている。それに対し、中國が力を入れる[RCEP(アジア地域包括的経済連携)]では中国が主導的役割を果たし、特にグローバルサウス諸国との貿易はインドネシア、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカなど有力国は輸出入ともに中国との貿易が最大になっている。
一方、インド、ナイジェリア、アラブ首長国連邦などは輸入で中国が最大だ。(ニューズウイーク 23年9月19・26日号)。このままでは米国のアジア太平洋諸国、グローバルサウス諸国との貿易は「一帯一路」で躍進中の中国の後塵を拝する可能性大だ。
中国、ロシアなどが注力してきたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)は
さる8月24日、南アでの首脳会議で、20カ国以上が加盟を希望する中、湾岸産油国も含めた6カ国の新規加入を認めた。欧米に対抗し、資源国との経済関係強化を狙っているとの見方だ強い。2024年1月に新規加盟する国は中東最大の産油国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、人口1億人を超えるアフリカの大国エジプト、エチオピア、南米ではGDP22位のアルゼンチンが選ばれた、新規6カ国参加で1Ⅰカ国に膨れ上がった。BRICSは今後「南」の代表として、欧米に対する発言権を強化するものとみられ、その動向には十分なる注目が肝心だ。
BRICS5カ国の22年の世界経済GDPに占めるシェアーは26%。主要7カ国(G7)は44%で購買力平価ベースではG7を上回るとBRICSの躍進に自信を示す声がBRICS首脳会議でブラジルのフル大統領を中心に相次いだという。拡大BRICSの動向に注意が肝要だ。