2023年12月25日
話のタネ
干支と動物
元国連事務次長・赤坂清隆
さて、来年2024年は、干支(えと)で辰年、
タツすなわちドラゴンの年です。漢字では、「辰」「竜」「龍」、みんな「タツ」と読みますが、ドラゴンを意味するのは「竜」と「龍」ですね。インターネットで調べると、竜は、龍の簡略化された漢字ですが、使用された歴史は「龍」よりも「竜」の方が古いようです。「竜」は、頭に冠をかぶった大蛇をかたどった象形文字ということで、それに装飾が加えられて「龍」という字になったとのことです。
日本では戦後、国語改革の結果、「龍」が簡素化されて「竜」に戻り、常用漢字として登録されました。
ただし、「龍」は、人名用漢字として登録されていますので、名前に使えます。他方、「辰」というのは、十二支の一つにすぎず、「草木のかたちが整った状態」を意味しており、ドラゴンという意味は何ら含んでいないのです。「えつ?」と驚かれませんか?「辰」を「たつ」と読むものですから、ドラゴンの意味もあるのであろうと、わたしなどが、頭を混乱させて、誤解を生じてしまう原因になっていると思われます。
12月5日付のニッポンドットコムの記事に、「辰」と「竜」にまつわるあれこれが紹介されていますhttps://www.nippon.com/ja/japandata/h01820/?cx_recs_click=true
その記事によれば、干支(えと)は、古代中国の思想、陰陽五行説から発生したもので、もともとは、年、月、日、時間、方位などを示すために使われていたものということです。ですから、「辰の刻」は、午前8時前後で、辰の方角は東南東。だから江戸時代、江戸城から南東の方向にある深川あたりの芸者衆は「辰巳芸者」と呼ばれたのですね。
辰は、本来ドラゴンとは何の関係もないのですが、想像上の動物のドラゴンがあてはめられて、日本では、ドラゴンの年に結びつく漢字ということになりました。
ひょっとして、これは、ドラゴンがあてはめられたので、
日本では「辰」を「たつ」と訓読みするようになったのでしょうか?
(PIXTA)
十二支、すなわち子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥が先に存在し、これを覚えやすくするために、
あと付けで動物がそれぞれにあてはめられたとのことですが、こんな基本的なこと、知らぬはわたしばかりで、皆さんはご存じだったでしょうか?。
わたしは、「あれ?、この歳になるまで、こんな初歩的なことになんで気がつかなかったのだろう!?」と、穴があったら入りたいほど恥じ入りました。
なるほど、それで干支(えと)の漢字は、それぞれの動物と関係があるような、ないような気がしていたこれまでのもやもや感が解消した気がします。
十二支の漢字と干支(えと)の動物とは、基本的に無関係なのですね!
では、なぜ一番の「子」にネズミが、2番の「丑」にウシが割り振られたのでしょうか?諸説があるようですが、
わたしの気に入った寓話は次の通りです。昔々、神様が動物たちに「元日の朝、わたしのところに最初に到着したものから順番に、1年交代で大将にしてあげよう」とのお触れを出しました。
元日となり、歩みののろい牛は誰よりも早く出発するのですが、牛小屋の天井にいたネズミがこっそりウシの背中に飛び乗り、神様の家に着くやいなやウシの背中から飛び降りて
一番になりました。
それゆえ、ウシは2番となり、そのあと他の動物が続きました、というものです。
他にも、ネズミが一番動き回るのはこの時間帯(午後11時~午前1時)だから、という説もあるようです。
辰時(午前7時から9時まで)に竜が割り振られたのは、
その時間帯は、竜が雨を降らせる時間だからという説もあるようです。
ここら辺は、ご関心がおありの向きは、インターネットや
チャットGPT(自信をもって間違いますからご用心)、
解説本などで詳細をお調べください。
「竜」の話に戻りましょう。竜宮城、将棋の竜王戦、竜神、登竜門、天竜川、竜頭蛇尾、画竜(がりょう)点睛、竜巻、恐竜など、竜にちなんだ言葉はたくさんありますね。
坂本竜馬(りょうま)は、本来は、「龍馬」だったのですね。ニッポンドットコムの上述の記事に出ていますが、
司馬遼太郎が、独自のリョウマを描くために、小説「竜馬がゆく」で、「龍馬」を「竜馬」と代えたのが人口に膾炙したようです。
宮沢賢治の幼児向け絵本に「竜のおはなし」というのがあります。巨大な竜が、村人や他の動物の幸せのために、きれいな皮をはがれ、肉を食べられるという苦渋を我慢して骨だけの姿になり果てるのですが、結局は天に召されてお釈迦さまになるというお話です。
他の人や動物のために自己犠牲をいとわない宮沢賢治の
心情がよく表れた作品といわれます。
自分のことがまずファーストのトランプ米前大統領に読んで聞かせたい内容のお話です。
小説「花と龍」は、火野葦平の作品で、いくつも映画化されました。
実は、1970年、東映が、京都の西にある太秦(うずまさ)映画製作所で、「花と龍」のシリーズ作品である「日本刺客伝昇り龍」を撮影した時、当時学生だったわたしは、エキストラとして出演しました。
高倉健が主演で、鶴田浩二、中村玉緒さんらが出演する豪華キャストの映画で、わたしも「ご一緒に」出演したわけです。といっても、わたしは明治時代の芝居小屋の観客の一人としての端役で、眼鏡や時計をはずし、浮浪者のようなぼろ着を着せられました。
その芝居小屋に刀を振りかざした高倉健さんや鶴田浩二さんらがなだれ込んできて、大立ち回りが始まり、わたしたちは逃げまどうという役でした。
一日のエキストラのギャラは、当時としては悪くない千円でした。
恐竜といえば、映画「ジェラシック・パーク」や「ゴジラ」も面白かったですが、現実にスコットランドにあるネス湖に恐竜がひそんでいるのではないか、という噂は今も消えていないようです。
2023年8月23日のCNNニュースが、「スコットランドの『ネッシー』、50年ぶりの大捜索作戦実施へ」との記事を流しました。
約100人のボランティアが現地を調べ、さらに約100人のチームが映像を通して遠隔参加するとのことです。
わたしも昔、ネス湖に友人たちと一緒に足を運んだことがありました。
夏の最中だったのですが、確かに、ネッシーが頭をもたげて出てきそうな不気味な湖だったことを覚えています。
辰年にちなんで、そろそろ出てきてほしいですね。
辰年は、万物が動いて、活力旺盛となる最も縁起の良い年だと言われているようです。
政治にも大きな変化や動乱が多い年のようで、戊辰戦争(1868年)、日露戦争(1904年)、ロッキード事件(1976年)、リクルート事件(1988年)などが、辰年に起きています。
辰年に生まれた人は、マイペースでわが道を行くタイプで、活動的で行動力があり、チャーミングで、勇気、粘り強さ、知性を備え、熱狂的で挑戦を恐れない、自分に自信を持った人が多いようです。
攻撃的なぐらいに、強い夢や憧れに向かって邁進する人も多いとのこと。
来年の辰年は、過去数年のコロナ禍の苦しみから解き放されて、リベンジとばかり、狂騒の年になるような気がします。願わくば、明るいニュースが多い年になってほしいですね。何事においても、積極的に、竜のごとく躍進する年になってほしいものです。皆さんのご健勝とご活躍を祈ります。
どうぞ良い新年をお迎えください。(了)