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        季節のご挨拶、2024年春

         

        明けましておめでとうございます。半年ぶりのご挨拶となります。鈴木貴元です。

         

        今年の半分ずつ

        北京生活は7年半が過ぎました。この1年は、あたふたしているうちに過ぎてしまったような気がしています。初めの半年は、コロナ禍が終わってものごとがどう正常化するのかみていました。欧米のように「コロナ禍=我慢」であり、コロナ禍終了と共に自由の満喫を急加速させた国もあれば、日本のようにいろんなことに配慮してスロースタートした国もあり、中国はどうなるのかに関心がありました。結果については、当初の気分こそ急加速でしたが、よくよく振り返るとコロナ禍で家にいたけどすごく我慢していた訳ではなかったので、むしろ節約的になっていきました。外食が自由にできるようになって寿司屋や鍋屋に皆さん飛び込んでいった傍ら、家の冷蔵庫や納戸には備蓄した食料や消毒液、マスク、日用品などがたんまり眠り、また家をデコレーションした装飾や小家電も飽和し、こちらは調整に向かいました。中国では、コロナ禍の中で高級インスタント食品ブームや化粧品ブーム、スポーツウエアブームなどが起き、それこそ最もコロナ対策が厳しい時にEVブームが起きましたから、コロナ禍の後に「何が欲しい」と考えても、これといったものが浮かばない(旅行は夏休みまで準備が整わず、夏以降大ブーム)。それが春の後の足踏みだったのかと思います。また、中国ではコロナ禍でも千数百件のショッピングモールが開業、今年分を合わせれば凡そ二千件が開業(各省平均で約60件)し、新たなレジャースポットとなりました。しかし、ECが普及する中で、そのスペースを埋める出店は容易ではなく(1カ所250店舗とすると50万店舗)、開店半分休業となるモールが続出。地下のフード・ゲームエリア以外は販売が鈍く、そうした光景が消費意欲をさらに影を落としてしまう状況を作った。これも足踏みの現れではなかったかと思います。それは企業も同じで、コロナ禍の方がむしろ景気が良かったという企業もあったと聞きます。コロナ禍が終わって在庫の必要性が薄れ、受注や販売価格、生産が落ちてしまったからです。

        ※蛇足ですが、ECによるショッピングモール建設への影響は大きかったと思います。ECによってモールは買い物から下見の場所になりました。1店舗あたりの販売効率は低下。本来であれば、店舗面積の縮小が必要だったわけですが、集客のためにモールそのものは巨大化してしまい、モール全体の販売効率はより低下する構造になりました。各モールは集客効果の高い飲食や体験消費(ゲーム、VR、推理ゲーム、スポーツ、ペットなど)を一段と重視するようになっています。

        この時期、日本並びに欧米からは、ポストコロナ禍の中国を見に来ようという動きがありました。欧米の大企業は反応が早かった印象があります。但し、その後はまちまちになっていきました。

         

        年後半に入ると、7月は超猛暑が経済を一時停滞させましたが、それが仕切り直しとなり、8月からの経済持ち直しにつながりました。夏休みシーズンの旅行は久々の長期家族旅行、シーズン後の仕事復帰では国内・国際イベントラッシュとなり、人の往来は正常化の認識が強く定着したように思います。個人的に困ったのは、超猛暑以来、北京で「かび」が出たこと。砂漠の端っこと言って差し支えない北京で除湿器を購入することになるとは、、、。

        余計な思い出はさておき、夏から秋にかけては、「EVや蓄電池に強い中国」、「ロボットや半導体、AI等でキャッチアップを強め、困難を乗り越える中国」など、技術開発力の強いイメージが、EVの販売実績や華為のスマホの開発実績、博覧会などのイベントで宣伝され、国内での幾らかの自信や海外からの注目になったように思います。

        ただこの時期、大手不動産デベロッパーの破綻懸念が蒸し返され、不動産からの悪影響の方が強く意識されるようになりました。

        このように、ここ数カ月(2023年の後半)の中国は、コロナ禍を終えて、新しい産業で強みを発揮し、技術による発展に自信を持とうとしており、日本を抜き世界一になった中国の自動車輸出はその象徴となった訳ですが、中国全体を浮揚させる希望ははっきり見えてこない。むしろ、不動産の停滞感の強まりもそうなのですが、強いと言われるEVでさえも、過当競争で生き残れるのは一握りに過ぎない。みんなが成長する道筋がみえない。こうした不透明感が大きくなってしまったように思います。

        中国政府関係者が講演するセミナーなどに出ますと、中国は強いのだから「自信を持て」ということがよく言われました。こないだの12月中旬の中央経済工作会議でも「光明論」と、2024年の経済政策で重要なことの一つが宣伝と世論誘導だと主張され、党・メディアを動員して自信を持たせようとしています。財政金融を、景気を下支えるように運用しつつも、国としての健全性には十分配慮する。注目される不動産問題を、時間をかけて改善していく。そうした道筋は2023年後半の一連の会議で示されたように思いますが、多くの方がその内容を理解した、または信頼したとはどうにも思えない。時間がたてば浸透していくのか。2023年の年末時点ではそこを確信しきれない状況にありました。

        2023年は自信をもって成長軌道に戻りたかった。技術という材料があった、政府の呼びかけもあった。でも自信は中途半端で2024年に越年しましたとまとめられましょう。

         

        バブルの議論の話

        この半年、一番質問を受けたのはバブルの話です。中国の研究を始めるきっかけとなったのは97年からの国有銀行や国際信託投資の不良債権問題。つまり地方政府債務に関わる問題。そこから中国経済の高成長とその持続性がずっとテーマになって中国を見てきましたが、そのコアとなる問題は、不動産を含めた投資率の高さや、名目成長率から見て緩和的で安定した金利政策、名目成長率を大きく上回る債務の拡大、こうした状況を支えた支配的な国有経済・政府統制の存在です。コアとなるのは投資率の高さです。つまり、対GDP比で40~50%の高い投資であり、単位当たりの生産性が高まる一方であれば、過剰供給が起きやすく、生産性が高まらないまたは高めるものでないのであれば、それは合理的な投資とは言い難く債務問題が起きやすくなる。中国の場合、国有経済の信用や、国有経済が分配した住宅資産などが、相対的に低い金利や高い家計貯蓄を生み出し、中国がWTOに加盟した2000年以降は貿易・投資の資金流入があってこの状況を支えた訳ですが、足元は物価低下による実質金利の上昇や、投資資金の海外への逆流もあって、余剰な国内貯蓄を使って国内経済を支えざるを得なくなってきている。でも国内経済の状況を見回すと産業投資は過剰供給気味、インフラ投資などは債務問題が見え隠れ。消費は所得格差が都市低所得者を生んでおり、裾野を拡大しにくい。再分配政策は小幅にしか働かない。ということで足踏み気味な景気拡大は必至であり、ソフトランディングできるのか、ということになっているのかと思います。

        注目される不動産については、新築住宅の取引は、足元ピーク比6割の水準、価格は軟調気味。大手デベロッパーの一部は再建策の提示に追われる状況です。バブルが今後崩壊するのかというよりも、既に一部で崩壊しておりどこまで広がるのか。そういう話になってきています(但し、ゴーストタウンや未建設開発用地に関わる不良債権処理は以前から進められており、バブル崩壊を大きくしない努力はされてきました。政府が何もしていないというのは間違えた評価です)。

        そこでいえば、バブルはどこまで崩壊(大きく破裂?ゆっくり縮小?)するのか。バブルをどう定義するかに依りますが、重要なのは「潜在的・顕在化された利用価値」かなと思います。潜在的価値より顕在的価値、投機的な価値より利用価値の方がリスクが低いのは自明で、これは都市計画の厳格性、特に地籍の一体的利用ができるか、建築物の耐久性が高いか否か(耐久性が高ければ更新コストが低い)が重要です。そこで言えば、建築物の耐久性が高く、修繕費などが不動産価格にオンされ、都市計画が厳格に実施され、建設された建物の取引が中心となっている米国の不動産は、バブルが破裂しても、実質的な不動産利用価値が高いが故、修復の可能性が高いことが理解されます。一方、日本の80年代の不動産バブルでは、都市の再開発が中途半端な形で行われ、顕在的価値よりも潜在的価値の方に投資が向いた(典型的なのは首都圏郊外の住宅、職住一体型の産業パークの開発、地方政府の三セク開発、地上げと言われる現象)。バブルの処理もさることながら、土地利用がパッチワーク状になり、適切な都市・国土建設が妨げられたことが傷を深くしたといえないでしょうか。そこから見ると、中国は建物の耐久性の改善、厳格な都市計画、不動産の利用価値重視(土地の取引が制限されている)と言う意味でどちらかと言えば、上述の日本よりも米国に近いです。但し、地方に見られるように人口流出地域で大型開発を進めたり、巨大すぎる開発を進めたりと、合理的でない開発を地域レベル、地籍レベルの両方で進めてしまったところがあり、その部分の無駄遣い、価値の過大評価があります。今地方都市を中心に不動産建設の停止、超大都市も含めて商業用・オフィス不動産の空室室の高まりなどが起きていますが、ここは調整必至ということなのでしょう。救いかなと思いますのは、中国の場合、住宅建設に個人や一般企業は参加できないですから、リスクはデベロッパーに集中します。中国には日本や米国のような低所得者(サブプライムと言えましょうか)向けの頭金ゼロ住宅ローンはありませんから、低所得者はこの問題とは無縁です。賃貸住宅は北京、上海当たりを除けば安いので、「家が狭いなー」と言うくらいの問題です(北京の一般的なシェアアパートは1部屋10㎡です)。中国のバブルは、結局のところ金持ちのデベロッパーと個人の金持ち・中間層、それにつるんだ一部の金融機関と地方政府の問題と極論できるところがあります。景気が悪化するなど間接的な影響を除けば、全国民的問題ではないのが救いと言えるように思います。

        専門家の予測では不動産取引の低迷は2~5年かかるようです。ただ、商機に聡い中国の方はすでに一部の大都市で不動産買いに回っており、2023年11月の不動産販売では主要100都市中4割で価格が上がったようです。

        中国に住んでいる私から見ると、中国の都市は無駄は多いのですが、日本で見られるように利権が入り組んでいたり、所有者(責任者)不在だったりすることがなく、一方で立派な街を作ろうという行政やデベロッパーの意識があり、ヨーロッパのような歴史的建造物や都市に憧れ、それを作ろうと努力している。しかも都市中心部から同心円状に開発しているので、中心部に虫食い開発が残りにくい。こうした良いストックを残そうとする努力は認識する必要があるでしょう。

         

        2023年の中国で気づいたこと

        中国に閉じこもる、中国から出ていく

        経済に関連していろいろな問題の根っこになった問題に「中国に閉じこもる人、出ていく人」と言うのがあるかと思います。閉じこもる人は、海外に関しては、国際線の飛行機が少なくて物理的に海外に行けないというのではなく、海外では差別を受けたり、戦争などの危険に巻き込まれたり、誘拐されたりする(東南アジアで中国人が大量に誘拐されるという映画やテレビドラマがヒットしました)ので、中国が物理的に一番安全という考え方が若者を中心に広まりました。出ていく人は、中国国内の将来や子供の教育などを心配する若者より少々年齢の高い人に広まりました(絶対数で言えば、閉じこもる人の方が圧倒的に大きいです)。共通しているのは、よくわからないという不安感。一先ず中国にいれば生活は便利・安全、広い中国で楽しむというのが主流の考え方なのかと思いますが、「中国以外は危ない、よくない」といった優越論的な考え方も出てしまっており、コロナ禍で交流が分断された後、交流再開で相互理解を深めようといった動きが、草の根レベルではかえって抑制される結果となっているように思います。

        閉じこもるのは一時的。2023年末の海外旅行予約はコロナ禍前を超えたようですが。

         

        コロナ禍後のブーム

        コロナ禍では家に閉じ込められている中で、多くのブームがありました。元気森林(清涼飲料水)、タニシ麺、POPMART(小物)、パーフェクトビューティー(化粧品)、テスラ・BYD(EV)、NIO(バッテリー交換式EV)、スキー(冬季オリンピック関連)、豪華列車などです。他方今年は、マオタイ酒とアイス(蒙牛)、マオタイ酒とコーヒー(ラッキンコーヒー)、コーヒーとSPY×FAMILY(COTTIコーヒー)、POPMART×いろいろなど、単品の新ブランドではなく、コラボものが多かった気がします。中国ではECイベント、ライブコマースなどいろいろECが進化し、1カ月の宅配輸送量は100億個の月もあったようですが、消費額全体はここ4年の平均でも年4%台の伸びですし、EC大手のアリババや京東の売上はほぼ横ばいになっており、数量が増える一方で1件当たりの単価が大幅に下落する状況となっています。こうしたときに行われることは古典的ですが、当たり前の「高付加価値化」。とはいえ、ブランド構築が単価アップに繋がるかはクエスチョンです。そこで内外で有名なブランドと提携してプレミアム品を作る。こんなことが方々で起こったのかと思います。

        ここで忘れていけないことは、内外のプレミアムのあるブランドとコラボしても十分対応できる質の高い生産、高い経営を多くの中国企業ができるようになっているということです。

        今中国には和食レストランが10万店舗ほどあるそうです。寿司、とんかつ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、うなぎ、居酒屋あたりが中国の方に人気のジャンルです(但し、97%は中国資本です。2000年代の日本からの中国進出では牛丼、ラーメン、カレーなどが多かったですが、牛丼は日式牛丼として今や中国の牛肉飯の店でも割と普通に扱うようになるものとなりました。カレーも同様です。大人が食べるものというより、子供と一緒に食べるものという感じになっているように思います。ラーメンは中国企業の豚骨ラーメンチェーンが人気ですが、既に中国式か日本式か区別されていません。日式ラーメンは今や中国のラーメンの一部になっています)。( )に書いたように中国企業の和食だから似て非なるものということではありません。中国人向けにアレンジされる部分も少なく、すでに中国人の味覚の一つになってきています。これは北京や上海などの大都市だけでなく、地方の都市でも見られます。まあスタバやマックが外国人居住者ゼロのような地方都市にも数店舗ずつ出るような状況ですから、日本食は日本人が、、、というのは5年、10年前の話になっているのかと思います。そういう状況ですので、多くのコラボ商品が出るようになったのも納得できます。

        さらに蛇足ですが、中国の各種博覧会に行きますと、地方の農村の食品加工のレベルアップには感心します。パッケージの雰囲気は、欧米よりも日本に近く、日本のパッケージングを見習った形跡を見ることができます。

        いつの間にか日本の加工、包装技術を取り入れ、自分のものにし、さらに外国企業などとコラボできるようにまでなった。そういう様子がはっきり見られました。

         

        デジタルブームはどこに

        コロナ禍前の中国というと、深圳へのデジタル詣が世界からも日本からもありました。今は海外へのデータ移転制限や技術摩擦の中心ということで、中国から離れる企業が少なからずでている。またコンシューマー向けのデジタル技術が世界的な普及期に入り、中国の先行があまり気にならなくなっている。こういう変化のせいでしょうか?中国のデジタルに対する海外からの関心は薄れているように感じます。中国の開発力を活用したい企業は欧米の大手企業などになお多く見られるように思いますが、中国にある米国のインキュベーターなどを訪問しても、中国のデジタルというよりも、中国市場に入り込むための技術全般に関心があるようで、EV関連や新素材などの技術に欧米企業の関心が寄せられているように見えました(中国の得意分野が広がったと見ることもできるかと思います)。

        当の中国も、今デジタルが花形産業か?と問われればやや悩むところでしょう。ただ、中国は生産、監視・管理、物流、接客対応など人手のかかるところでの自動化やデジタル利用(DX)はかなり進み、デジタルを使うことが自然となっています(中国にもDXという言葉はありますが、殊更強調することはないです。「スマート〇〇」ということは多いです)。2023年の個人事業主を含めた起業数は3000万件強。デジタルを利用した簡易的な起業が活発です。このあたりの仕組みは日本も研究してみるべきと思います。日本では中小企業の後継者不足による廃業などが相次いでいるようですが、中国での起業の仕組みは、人手不足の中での事業継承をどう簡易に行うか、持続的な企業にするにはどういう仕組みが必要かなど示唆するところは多いと思います。

        ただ、AIやデジタルでもどうしようもない問題もいっぱい見えました。AIによる渋滞の解消は、都市計画や道路網整備の改善が基本的に必要で、最短経路を検索できても、それは渋滞の状況を知るだけ。観光地や高速鉄道のチケットも、中国は春節と国慶節以外には4日を超える連休がないので需要が特定の日時に集中。繁閑の差が地域の観光に混乱を生んでいます。EC企業はデータを使ってマーケティングといいますが、手数料をEC企業に払っている圧倒的多数の企業は、過剰在庫を抱え、我慢を続けるか、価格を下げるかしかない。デジタルでデータ化にしても、それを参考にしてリアルなところで改善をしなければどうしょうもない。デジタル導入後のリアルの改善はなかなか難しいと思ったところです。

         

        中国の中の外国企業

        2023年はコロナ禍が終わって中国政府が外資企業をどう扱うのか。ここの認識の不一致とゆれが大きかったです。2023年年初、欧米企業に関しては、本国では、まずオープンした中国を見にいこう。一方、中国内の欧米人駐在員は、上海ロックダウンの傷跡で「中国はどうだろう?」という調子でした。他方、日本企業に関しては、中国内の日本人駐在員は、「やっと普通に仕事ができる」と安堵。一方、本国では「中国に行ってみるべきか否か」、と懐疑的な調子でした。

        その後、中国内の欧米企業は中国のやりにくさ(ビザや渡航、越境データ移転、サービス業参入などが中心)を訴えつつも、中国に大きな投資をしている大企業から事業を積極化させたように思います。企業調査アンケートなどで投資状況などを見ると様子見も多いのですが、現地化が進んでいることもあり、現地のマネジメントの積極性が強まりました。一方、日本企業は中国のやりにくさは感じていたとは思いますが、上海ロックダウンや隔離の思い出は欧米駐在員ほど引きずっておらず、それよりも、日本企業の得意な自動車産業の不振や、日本から聞こえてくる対中感情に押されて、もっとアクションしたいと思いつつ、やや足踏みをしたというのが実態だったかと思います。

        中国政府は、経済的には外資企業「も」使いたいが、社会的、安全保障的には外資企業に「も」中国のルールに従ってほしい。外資も、不透明な「中国の慣行」ではなく、「中国のルール」なのであれば、社会的、安全保障的なところを明確に避けて積極的にビジネスできますよね、という認識と論理を持っています。これに対して、外資企業、外資企業の本国は、方々に仕掛けられた中国の社会的、安全保障的ルールが多すぎて、また中国の法律は基本的に「考え方」を示したものなので恣意的に運用されないかという認識を持ちました。欧米にはこういう場合、慎重になる企業もありますが、ロビー活動などで切り抜けようとする企業もあります。米国の商工会議所は2023年の行動計画で「中国に如何に伝わるコミュニケーションをさせるか」というのをトップイシューにしていました。米中が対立的であり、またコミュニケーションを欠いているので、これを改善してビジネスにつなげていこうと。政治的な対立はあっても、不透明なルールであっても、対話できれば突破できる。欧米企業の動きからはそういう「あるべき」強かさが感じられます。日本企業も今年はそうした欧米企業を追いかけました。

        とはいえ、2023年はEV、環境などから中国のブランドが目立ち、日米欧企業はそろって中国企業の陰に隠れた年だったと思います。中国政府は2023年一年を通して開放をPRしていましたから、2024年は中国政府と外資企業が、各々の行動と理解を接近させられるのか試されることになります。

         

        鈴木の2023年

        2023年は多くはないですが、いろいろなところに行きました。印象的だったのは哈爾浜です。コロナ禍前にも行きました。私は歴史的建造物が好きなので歴史の書かれたプレートなどをよく読むのですが、以前は、清朝時代(ロシアが日清戦争後、哈爾浜を本格開発した時期)、民国時代、満州時代、戦後、新中国と比較的詳しい歴史が書かれていたのが、今年見に行ったら日本関連のことはすっかり消されてロシア関係のことばかり。日本によってつくられたものはほとんど見られなくなっていました(おにぎり、おでん、たこ焼きなどは既に中国化しているので、存在していても日本との関係を感じませんでしたが)。日本との関係が強調されるのがあの街では都合の良いものではないのかもしれません。

        また哈爾浜では観光地になっている動物園(極地公園)に行きました。ここは動物園でありながら、USJのアトラクションのような高台からの飛び込みあり、バレエありのイルカショーや、恐竜のアトラクション、ロボットの撮影サービスなど、とにかく飽きさせない。中国の観光地は椅子が少なく、客を一カ所に集合して休ませないようにするのが一般的な傾向ですが、この動物園にしても、ほかの観光地、デパートにしてもちゃんと休憩用の椅子がある。観光地のスタッフはちょっと過剰と言えるほど客をよく見ている。ここの対応は、日本の観光地が見習うところがたくさんあると思いました。もっとも見習ってほしかったのは街の景観や観光を維持するためにちゃんとお金を使っているということでした。日本ではよく「街おこし、村おこし」のようなことがよく言われますが、この言葉はいつの間にか街の遺産を再発見したボランティア的なイベント・再発見・リサイクルと、お金のあまりかからないことになっており、100年、200年持続する、きちんとした街、村のストックを作ることからかけ離れるようになっています。哈爾浜はロシア、旧満州時代の建築物や都市計画をベースに街づくりをしています。黒龍江省自身は5年で人口が300万人も減少し、2050年には人口はピーク時の1/3まで減る可能性のあるところです。しかし、街の中心は100年前の風景を今も普通に残し、2024年の正月で一番の人気観光地となっています。

        ほかにも吉林の延吉、河北の承徳、江西の景徳鎮、吉林の延吉、寧夏の銀川、湖北の武漢、ほか沿海部の諸都市に行きました。観光地で共通していたのは、街おこし的な舞台劇です。承徳の劇は1日夜に2回。屋外劇場に馬が十頭以上走り回り、大型スクリーンや巨大舞台装置、ドローンなどを使って、、、出演者、劇場、劇場周りのレストラン街などを入れれば数千人の雇用を生んでいます。これが十年、二十年続くかわかりません。しかし、ディズニーランドやUSJに引けを取らない地域の文化資産になっています。

        私は日本の観光地を見ていると心配になります。歴史的ではなく、単に古い建物があちこちにみられ、電柱電線が空を覆い、ちょっと観光者が増えるとキャパシティーオーバーになる。住宅が余っているのに、人口は増えず。労働力になってくれる外国の方を地域は徐々に受け入れているのに、国は移民をまともに議論できず、一時的なインバウンドの増加を期待する。お客様の観光客ではなく、移民が増えて、同じ国民として一緒に考え、手を携えた方が多様な社会の創造にはプラスかと個人的には思っています(教育、いじめ、宗教、雇用、賃金、休暇、いろいろニュースで見る日本の問題の多くには、多様なのが当たり前な社会では起こりえない、逆に言えば日本では「どうしょうもない」と思われてしまいがちなものがあります。画一的を当たり前と思わないことで解決できることは多いです)。

         

        2024

        2023年は年央に本帰国になるのかなと思わせる出来事がありましたが、まだまた駐在は続きそうです。ただ、コロナ禍前の中国の経済、産業、地域、企業、社会などの発展を見る、予測すること、米中・日中関係の観察などをミッションとしていたところから、2024年は経済、地域などの発展とリスク、中国という国のシステムと行く末、中国の外交と改革開放の方向性、外資企業の中国での取り組みといったところに重心を移していく。こんな感じになりそうです。

        中国と日本が理解するに際して難しいことがあります。日本と中国にはいろんなことがありました。それに対して、日本としての解釈、中国としての解釈、さらにメディアや政治の慣性が働いた解釈と、行く通りの解釈があります。欧米と中国の間にも相互に違った解釈がありますが、日中が特に難しいのはいわずもがな。米中はこれから起きそうなことや、両国とも「自分が正しい」ということを変えられない性があることを考えると、「どう関係を正常化するか」というよりも、「どうコントロールするか」が重要です。ここでの企業の在り方を考えるのが基本なのかなと思います。

        個人的には2023年は東北、華北から中部をうろうろしましたので、久々に西に行きたいと思っています。

        まだご挨拶でお話ししたいことはあるのですが、いろいろ制約ができました。HPに掲載しているレポートも内部版がそのまま掲載できなくなり、一部省略版になったことからもお察しいただければと思います。そういうわけで、どこかでお会いするときにまたお話しできればと思います。

        ともかくも2024年もよろしくお願いいたします。

        皆様、良いお年をお過ごしください。ご健康、ご健勝お祈り申し上げます。

         

        鈴木貴元

         

        北京市朝陽区西大望路3号

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