BIS論壇 No432『2024年10大リスク』中川十郎24.1.9
米調査会社 ユーラシアグループは1月8日「2024年世界10大リスク」を発表した。
1位・米国の分断
2位・瀬戸際の中東
3位・ウクライナの事実上の割譲
4位・AIのガバナンス欠如
5位・ならず者国家の枢軸
6位・経済回復できない中國
7位・重要鉱物の争奪
8位・インフレの足かせ
9位・エルニーニョ再来
10位・米国でのリスキーなビジネス を挙げている。
1位に米国の政治的分断を選んだ。11月の大統領選挙に向けて米国の分断はさらに悪化すると予測。民主党はバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領のどちらが勝利しても社会や政治制度が損なわれ、米国の国際的な地位が低下するとみている。
報告書は「米国の政治システムは他の先進的な民主主義国家よりも機能不全に陥っている」と指摘。二期目に86歳になるバイデン大統領もトランプ氏も、いずれも大統領には不適格と指摘。一方、トランプ氏が共和党候補に指名された瞬間から、その政策方針は論争を巻き起こすと懸念している。
2位にはイスラエルとハマスの衝突が続く「瀬戸際の中東」情勢は米国やイランなど多くの国が関わり、『ガザでの戦闘は24年に拡大する紛争の第1段階に過ぎない』。一方、紛争がイランに波及すれば、原油の流れが阻害され、原油価格が上昇すると予測。
第3のリスクは「ウクライナの事実上の割譲」だ。「ウクライナは24年、事実上の分割統治を受けることになる」と予測。ロシアは戦場で主導権を握っており、物資面でも優位に立っている。ウクライナが対策を取らなければ「早ければ25年にも『敗北』するとし、今年が「戦争の転換点点になる」と厳しい予測をしている。国際政治学者のユーラシアグループ・ブレマー社長は「米国の分断や、イスラエルとハマスの戦闘、ウクライナ侵攻に対して、「どの指導者もこれを終わらせようとする意志もなく、能力もない」と厳しく指摘。
そのほか「AIのガバナンス欠如」、「中國についても経済回復はできない」、「EV時代を控えた重要鉱物の争奪」、「世界のインフレ」など危機要因を挙げている。2024年は日本でも能登地震など激変があり、日本の政治、経済面での真剣な対応が強く要請される。