『我が国企業へのインテリジェンス・サイクル適用の必要条件、導入方法の調査研究・提言』
2003年1月17日
SCIP Japan 理事
東京経済大学 教授
(コロンビア大学院客員研究員)
中 川 十 郎
1.CIAなど諜報機関の情報処理手法インテリジェンスサイクルモデルの民間競合情報への適用
インテリジェンスサイクルモデル
1)Herbert Meyer(CIA-Real World Intelligence社)
①情報の選択―②関連情報の収集―③最終製品作成(報告)-④政策決定者へ提供
2)Mark Lowenthal (CIA-コロンビア大学院)
①企画と指示-②情報収集-③加工と開発-④分析と生産(報告書作成)-⑤配布
3)Ben Gilad(イスラエル警察諜報担当官―ラトガ-ス大学院―BI Academy )
①情報収集―②評価(情報源)―③蓄積―④分析―⑤伝達
4)Jerry P.Miller(シモン大学―Competitive Intelligence Center所長)
①システム構築―②情報統合―③リサーチャー―④データ構築―⑤分析―⑥知識構築―⑦意思決定
5)John Mcgonagle(Helicon Group社)
①必要情報の確定―②データ収集―③データ分析―④伝達―⑤行動―⑥フィードバック
( ①戦術志向CI, ②戦略志向CI, ③技術志向CI, ④目標志向CI )
2.主要情報情報システム比較 (戦術情報システムと戦略競合情報システム)
1)三井物産 2)セブンイレブン 3)トヨタ 4)Walmart 6)代表的米国競合情報システム
3.外国の競合情報教育の現状 大学=30年以上にわたり、ビジネス競合情報教育に従事。
実業界=1986年より国家諜報ソフト(競合情報モデル)の民間への移転(Privatization
of Intelligence)-国防総省ARPAで開発のインターネットシステムの民間への移転)
=軍,官、産、学の共同作戦。
1)コロンビア大学国際,公共関係研究大学院(SIPA)=Mark M.Lowenthal(CIA)
2)サンダーバード米国国際経営大学院=Paul Kinsinger (元CIA)
3)ボストン・シモン大学= Jerry Miller(SCIP 大学競合情報教育研究委員長)
4)ピッツバーグ経営大学院= John Prescott(元SCIP 会長)
5)ラトガ―ス大学経営大学院= Ben Gilad(元イスラエル警察インテリジェンス責任者
6)スウエ―デン・ルンド大学経済経営政策大学院= Stevan Dedijer(元CIA,KGB)
7)シドニ―工科大学院=Chris Hall(元SCIP Australia会長)
8)米国競合情報専門家協会(SCIP=会員の15%が元CIA関係者)
9)米 Academy of Competitive Intelligence(企業役員、軍高官の情報教育)
校長 Mr.Flud(米インテリジェンス会社FLUD社社長)
役員 Mr.Herring(元CIA高官―モトローラ競合情報システム構築者)
Mr. Ben Gilad(元イスラエル警察インテリジェンス部門責任者,ラトガ―ス大学)
10)SCIP Manhattan Chapter=情報専門家 20―25名 2ヶ月に一回の情報研修)
4.提言 競合情報教育の充実を(米国、仏、英、スエーデンへの早急なる対抗策)
―日本の政、官、財、学の緊急の対策が必要―
(追加資料)-1
米国『国際マーケテイング研究』テキストの中の「国際マーケテイング情報システム」概要 (コロンビア大学経営大学院図書館)1)
1)Susan P.Douglas,C.Samuel Craig
“International Marketing Research“ Parentice―Hall Inc. 1983
①国際マーケテイング情報システムの情報構成要素
②データ収集と加工
③情報システムの応用―3種類の情報
(1)2次データ(国別マーケットデータ源)
(2)企業データ(企業内部データ、ROI,広告・販売比率、販促効果など)
(3)一次データ(国、製品マーケット)
過去の実績についての歴史的情報、
一次(二次)データは未来戦略の指標を提供する。一次データはマーケテイング戦術意思決定に先立ち収集する。製品品目の拡大、ポジショニング、広告活動の標準化、販売促進の透明性、マーケテイングミックス、、企業の販売実績、戦略、マーケテイング戦略の意思決定を効果的実践するためのデータである。そのためには世界市場のマーケット情報の収集範囲を決定し、情報収集過程を組織化し、情報を経営陣が活用できる形に統合する事が大切だ。かかる観点から国際マーケテイング情報システムの構築が必要なのである。
二次データはアップグレードし、未来のマーケット機会の評価を継続的にモニターするために必要なデータである。このための主導的役割はマーケット指標、マーケット構造、
企業業績、マーケテイング戦略の結合に役立つ情報システムを構築する事が大切だ。
マーケット情報システムはマクロ経済、社会、政治、技術、製品マーケットに関連する情報、さらに競争相手のマーケット規模、構造、販売、マーケットシェア―などを含むべきである。
これらのデータは国のマクロ経済環境、GNP,人口規模、主要製品、供給状況、規模、
競合構造、マクロ経済データ、特定マーケットの企業販売、実績を含み、さらに長期的なグローバル経済、国内経済、金融、社会トレンド、労働不安、ストライキの数、建設着工数、一般的環境指標なども含むべきである。さらに下記指標も含むべきだ。
- マーケット規模と構造 *企業販売と製品別マーケット業績 *他情報源
―国際マーケテイング情報システムのためのデータ収集と加工―
*データ比較 *データ収集 *データ加工、分析と保存
―情報システムの応用―
*市場拡大機会の追跡 *プリズム(PRISM)
―海外投資関連指標―
政治的安定度 26%、 市民の自由 7%、 インフラの質 6.7%
国有化の可能性 6.3%
―さらに必要な指標―
金融の難易度 10.1%、 労働情勢 9.1%、 市場成長性 8.6%
通貨の交換性 6.6%、 一人当り収入 7.1%、 マーケット規模 7.1%、
インフレ率 6.8%、 生活の質 6%、
*企業業績の追跡 *国際環境調査 *市場参入実績 *変化の統合的把握
(国ごとの作戦形態、製品市場、目標細分化、 マーケテイング戦略)
参考資料―2
SCIP アナハイム会議(2003年3月12日―15日)のアジェンダ
会議タイトル; 『好結果を目指して―競争優位のためのインテリジェンス活用法』
- ワークショップ-1
*CIリーダーシップ *CI専門家のための個人的知識管理法 *必要な情報抽
出法 *ネットワーク分析図表 *CI効果評価法;Ci実践と効果測定法
*戦略開発のためのCI最高度活用法 *法務部門とCI部門の戦略的提携の促進
*KITのビジネスへの活用法 *見本市、会議での競合マーケテイング情報収集の
ためのABC *個人企業でのCI実践法 *警戒信号の見落とし
-資格授与講座―
*一次情報収集法 *分析法-1、 *分析法―2、 *二次情報収集法
- ワークショップ―2
- ナレジ・バリューチェイン *競争相手の原価;競争戦略開発のための基礎
- 他人の投げた卵が顔に当るのを避ける方法―CIビジネス同僚の人物概評
- 技術分野での意思決定と革新推進力を強化するための技術情報活用法
- 分析―そしてどちらをとるのか *CI分析者のための数量概念の応用
(資格授与講座)
*一次情報収集法 +二次情報収集法
- 本会議での会議議題
*見本市情報―ネットワーク的アプローチ *裏口情報―非伝統的手法によるCI機能の効果的実践法 *組織における倫理 *メトリック問題(財務情報実践法)
- SWOTをSWOTする *製薬業における戦略的同期警戒警報とシナリオの持続
- 利益の予言と予想;財務競合分析 *NAFTA地域におけるCI実践
- ユーザー主導CI;価値提案
- 主要論題(ビジネス倫理、ビジネス機能とCIのROI計数評価、CIソフトウエア―)
- CI開発法 *競争相手の会議議題、信号から秘密を暴く方法
- ゼロからのCIネットワーク構築 *新規市場参入機会の分析
- 法廷文書;正当な努力で最大の効果を挙げる方法
- 戦略的主導権により、財務の引きがねを引き出す方法 *裸のリーダー
- 中国市場情報収集法 *戦略的グローバルCIプロジェクト管理法;成功をもたらす代理店選択法 *今日の企業環境下でのCI活動成功法
- CI専門家のための個人的知識管理法 *意思決定者の行動予測のための心理分析活用法 *特許分析による市場予測法 *CIグループによる意見交換
- 公的部門のCI;産業,経済競争力を向上させるための私的部門との協力法
- 良好なCI結果をもたらすための予測管理法 *経営管理者の教育
- 主要トピックス(経歴、計画、コミュニケーション,防諜、CIサービスプロバイダ―との生産的関係、新情報源開拓法) *銀幕からのCI教訓―善悪醜―
- ライセンス取得者に焦点を定めた特許と市場分析の最高活用法
- CI専門家教育のアウトソーシング能力を高める方法
- 技術CIの重要性 *資源ベース面からのSWOT分析力向上法
- 知的資産管理―情報から知的所有権へ,そして利益獲得へ
- リスク管理におけるCIの役割 *製造対ッサービス会社―CIアプローチ法の差異
- 付加価値調査・分析能力創造のための最高実践法
(SCIP年次競合情報研究大会への筆者のコメント)
上記どうり最近SCIPの年次大会の議題と発表者もマンネリ化しつつあり、議題も細分化され、系統的な研究議題が少なくなり、またワークショップで初心者を対照にした講座が多く、「競合情報専門家協会」の専門家としての研究議題が少なく、お祭り大会的になっており、情報専門家からの参加が減少し、ビジネス本位になりつつある年次研究大会の再検討と革新が求められている。