BIS論壇No.434『日本の危機管理』中川十郎24・1・12
今般の能登地震災害救助対策に関し、対応が後手、後手にまわり、しかも小出しで批判が起こっている。
能登地震災害対策に際し、岸田政権の対策の要である「内閣危機管理監」の村田 隆・管理監は地震災害発生当時、入院中とのことで、出勤せず。出勤したのは、災害発生後、3日後の1月3日だったと報じられている。
その結果、能登地震災害対策は後手後手にまわり能登地震の7.6震度とほぼ同じ規模の7.3震度の2016年の熊本地震の際の災害救助派遣部隊の規模に比し、能登地震の派遣数が極端に少ないことが問題視されている。
16年の熊本地震の際は地震発生2日後に2000人、(能登は1000人)、5日目には熊本では2万4000人が派遣されたのに、能登へは熊本の5分の1の5000人しか派遣されていない。
災害発生の能登は冬で、積雪もあり、緊急なる救助活動が必要にもかかわらず、救助隊員が熊本に比し、極端にすくないのは救助活動上問題視されるべきだ。
その結果、災害派生後1週間たっても。「災害の現状がつかめていない」状態だ。これは危機管理上大問題である。林官房長官は能登近辺に自衛隊基地がなく救助隊員送付が遅れ、少人数だったと言明しているがこれは救助隊員派遣が少なかったことの理由にはならない。
道路が寸断され、支援に遅れが出たというが、3方海に囲まれた能登半島では迅速に海上自衛隊の海からの援助。航空自衛隊のヘリコプター、ドローンなどの支援、さらに衛星を活用した監視など実行すべきであったのではないか。
危機管理の要諦は日頃から危機を想定し、事前のシムレーションによる準備が肝要である。はたして内閣危機管理監および関係省庁は、地震大国・日本の事前対策が十分なされているのかはなはだ疑問である。日本では世界の地震の20%が発生しているのだ。能登地震で内閣の地震災害対策のずさんさが浮き彫りになった。地震・台風常襲地帯の日本で、原発をさらに増設するなどもってのほかである。
さらに岸田政権は防衛予算を過去の二倍近い年間8兆円への増額を国会でなく閣議で決定している。しかし、地震、台風が毎年襲う日本では防衛予算は過去のGDP 1%にとどめ、防衛予算増額分は災害対策、さらに教育費、少子化対策にまわすべきである。
米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)は7500人の人員を抱え、年間予算は2.2兆円以上で災害危機管理に迅速に対応している。日本の内閣危機管理官室も米国を見習い、さらなる人員増強、予算の増額を真剣に考えるべき時であろう。 以上