BIS論壇No.435『米国の輸入先変動』中川十郎24・2・10
これまで米国の最大の輸入先だった中国が23年に15年ぶりに2位に転落。隣国のメキシコが米国の総輸入額の15.2%を占め、第一位に躍り出た。中国は22年比20.3%(1090億ドル)減り、総額4272億ドル(63兆円)に落ち込んだ。
。3位はカナダ(13.7%)、日本は4位のドイツ(5.2%)にも抜かれ、4.8%で第5位に転落。 日本はGDP(国内総生産)でも2023年人口3分の2のドイツに抜かれ、第4位に後退。このままでは日本は26~7年にGDPでインドにも抜かれ5位に衰退するとみられる。
筆者がかって日本商社NY駐在員として勤務していた1980年代後半には日本は世界GDPの16%近くを占め、天にも昇る勢いで、世界第一位の米国に肉薄していた。それが30年で様変わりとなり、日本の衰退は留まるところを知らない。
このような事態にも関わらず、日本の政界は自民党の裏金醜聞に明け暮れている。財界も危機意識希薄で、4割の非正規雇用で労賃を抑え込み、実質賃金は2008年の年間355.7万円から22年326.3万円と毎年目減りを続けている。これに対し、企業は22年に511.4兆円もの内部留保金を積み増している。
官僚も小粒となり、かっての日本の国家戦略樹立など長期的総合政策もないまま、目先の短期的な対応に明け暮れている。教育界も文部科学省の長期総合戦略もなく、アジアでも中国、韓国は言うに及ばず、シンガポール、香港などの大学の後塵を拝している現状だ。このような状況では日本の衰退には歯止めがかからないだろう。
かって日の出の勢いだった日本の最近の衰退ぶりを見て、東南アジアでは日本は『オールド・ゴールドメダリスト(年老いた金メダリスト)』と揶揄されているそうだ。
かって筆者が80年代後半NY駐在時、日本に追い抜かれそうだった米国は日本に学ぼうと大学や、経済調査機関が日本の躍進の秘訣を教えてくれと、主要大学、調査機関、貿易研究所、民間調査機関などが競って、JETROや日本企業の幹部を招聘し、セミナーを開催。米国経済の立て直し、米国企業の輸出拡大策を躍起になり研究していた。
筆者もJETROに協力し、米国の主要大学、貿易協会などで度々総合商社の輸出拡大戦略などの講演に、米国各地を訪問した。
日本もこの機会に、21世紀総合戦略樹立のために、人口問題、少子、高齢化問題、地方過疎地対策、格差拡大対策、食料自給対策、エネルギー対策、原発対策、AI、技術振興対策、災害予防対策など21世紀を見据えた日本未来国家総合戦略を今こそ官民の叡智を集めて
確立することこそ急務であろう。自民党の裏金問題などに明け暮れている時ではない。
衰退を続ける日本に今こそ歯止めをかける国家戦略を確立すべき秋だ。