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        「古武士(もののふ) 72話 道上の心配」

        ________________________________________

        道上は相変わらず愚息を叱っていた。出来の悪い愚息に我慢がならなかった。

        その眼は本人の意識とは裏腹に迫力ある目であった。

        まるで憎んでいるかのように。

        何故こんな阿呆が息子なのだろうかと歯がゆい思いをぶつけるかのように。

         

        1980年代前半頃のある日道上があまりにも愚息を叱るもので、見かねた次女志摩子が 「お父さん、雄峰は会社も創業しお母さんの面倒も見ているんですよ。」

        「麻薬の密輸でもやっているのか。」

        これには愚息もひっくり返るほど笑ってしまった。

        確かに商品として扱っている貴金属や宝石は、女性にとって麻薬の様な物だ。

        しかし愚息は法に触れるようなことは一切やっていない。

        しかも母親には生活に十分な金額を20数年間毎月渡していた。

        さらに次女志摩子はその倍以上の援助をしており、本当の意味で母親の面倒を見ていた。

        このときの志摩子の一言で道上は愚息をあまり叱らなくなった。

        しかも愚息が外食の代金を払うことが許されるようになった。

         

        愚息は喜んで毎回美味しい店に案内した。しかし道上は決して喜ばなかった。

        愚息が調子にのって高い店ばかり連れて行ったからだ。

        「雄峰、勘定を見せろ。」 値段を見せるたびに雄峰は叱られた。

        志摩子にも叱られた 「領収書は半値で切ってもらいなさい、何度言ったら分かるの。」嘘のつけない不器用な雄峰であった。

         

        道上の声に金縛り状態になってしまう。嘘などつける訳がない。

        蕎麦屋で一人1万2万するような所へ案内する愚息に対して、駄目だと言わんばかりに 「君はこんな事ばかりをやっていて日本の社会で通用すると思っているのか。」

        さらに睨みつけながら「絶対にやっていけないぞ。」

        愚息は意味が分からなかった。

         

        中華、鮨、蕎麦と色々な店に案内したが叱られなかった店はたった2件しかなかった。

        東京六本木にある本むら庵という蕎麦屋と日本で一番高いと言われているやはり六本木にある鮨屋である。

        本むら庵は当時決して高そうに見えない店構で値段はリーズナブル。

        そこへ二人で行った。 だから道上は気軽に喜んだのか、「此処のお酒は美味しいな。」とにっこり笑った。愚息は嬉しかった。

        菊正宗の樽酒だった。蕎麦も4種類ほど食べ、お皿にこぼれる升酒を5杯飲み、その足でまた他の店に食べに行った。 (後に数回一斗ずつほど譲ってもらい、ワインを切らした時に道上は孫娘(志摩子の娘)の夫孝二と二人で毎晩1人一升半から二升飲んだ。)

         

        鮨の方は弟武幸も一緒だったからだろうか、愚息を叱らなかった。

        道上が美味しいと言ってくれたので愚息は喜んだ。

        愚息は喜びに満ちていた。

        腹いっぱい贅沢なもので満たしたいと思うのは下品な事だろうか?

        空虚だからなのだろうか。

        贅沢よりも中身で勝負できる本物の人間になれということだろうか?

        道上は

        「茶はさびて心はあつくもてなせよ道具はいつも有合わせにせよ」

        と言っていた。

         

         

         

        【 道上 雄峰 】

        幼年時代フランス・ボルドーで育つ。

        当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。

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