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        2024年3月23日 

        話のタネ

        人口

         

                元国連事務次長・赤坂清隆

         

        前略、

        日本の人口が減っているので、心配する向きも多いですね。そこで人口問題を今回の「話のタネ」に取り上げたいと思うのですが、わたしはこの問題の専門家ではありませんので、素朴な疑問をぶつけ、関連の最近のニュースなどを拾ってみたいと思います。

         

        まず、世界の人口ですが、「今世界の全人口は?」と大学での講義の際に学生に問いかけても、首をかしげるか、スマホで探そうとする人が多いですね。

        世界人口は、2022年11月に80億人を上回り、現在では81億人に達していると思われます。2023年にインドの人口が中国を抜いて世界第一位になりました。2023年の両国の人口は、ともに14億2千万人台ですが、インドの人口が増え続けているのに対し、中国は前年から約20万人減少しました。3位がアメリカ(3億4千万人)、4位がインドネシア(2億8千万人)です。日本は、1億2,330万人で、世界のランキングでは12位でした。

         

        世界の人口は、1950年の25億人から、1960年に30億人、1975年に40億人、1987年には50億人を突破し、2011年には70億人に達しました。70億人に達した時は、わたしは国連におりましたので、大きなニュースとなったのを覚えています。国連人口基金がアメリカの大学生を動員して、当時はまだ目新しかったフェイスブックなどのSNSを使い大キャンペーンを張ったものですから、

        ちょっとした騒ぎになりました。それからわずか10年余りで、世界人口は80億人を超えたのですが、その時はあまり大きなニュースにはならなかった気がします。国連の推計では、今世紀末までに100億人を超えると予想されていますので、世界人口は、過去150年間で4倍に膨れ上がることになりますね。さて、この先どうなるのでしょうか?

         

        人口の話といえば、英国経済学者マルサスの「人口論」。

        1798年に出版された同書の翻訳版を図書館で借りて読み返してみました。彼は二つの前提を立てたのですね。

        一つは、食糧は人間の生存に必要であること。

        二つ目は、男女間の性欲は必然であり、将来も変わらないと思われること。わたしも、わが身を振り返ってみて、

        この二つの前提は間違ってないと確信するのですが、

        いや、間違っているかもしれません。

        というのも、2014年1月14日付のニッポンドットコムの記事に、「既婚者の68.2%がセックスレス傾向

        全国4000人調査:それでも夫婦仲は悪くない?」https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01882/

        というのが出ています。食欲は別にしても、男女間の性欲は必然というマルサス説は、フランス人の間では今なおその

        通りだとしても、現在の日本人の間ではもはや必ずしも正しくないのかも知れません。

         

        閑話休題。マルサスは、彼の前提が正しければ、人口は、制限されなければ、等比級数的に増大する(2倍、4倍、8倍、16倍。。。と)が、食糧は、等差級数的にしか増大しない(2倍、3倍、4倍、5倍。。。と)との命題を立てました。そうすると、今年は、「人口論」が発表されてから226年目ですが、彼は、225年で、人口対食糧の比率は

        512対10になると計算しました。その結果、飢餓や貧困が増加するが、この不均衡からどうすれば逃れられるのか?マルサスは、「すべての生命あるものを支配しているこの

        法則のおもみから、人間がのがれることができる道をわたしは知らない」と、無責任というか、投げやりな悲観論を示しました。

         

        マルサスの生きた1800年ごろの世界の人口は、およそ10億人と推測されています。現在の世界の人口は約80億人ですので、当時に比べて約8倍になっていますね。

        他方、現在の食糧生産量は、FAO(国連食糧農業機関)によれば、世界の人口を賄うに足りることができると見てよいようです。ただし、現実には、需要と供給のバランスに問題があり、不平等な分配やアクセス、食糧ロス、紛争や災害の影響などで、まだまだ世界には飢餓に苦しむ人たちがたくさんいる状況です。

        ガザ地区のパレスチナ人や子供にも飢餓の危険が迫っているといいますが、これはまったくの人災ですね。

        とすると、現実には、人口は格段に増加したものの、食糧も大きく増加して、200数十年前のマルサスの悲観的な予測は、幸いにも現実には生じてこなかったと言えるでしょう。

         

        しかし、この先も人口が増え続けるならば、食糧の消費量も増大し、世界各地で食糧危機の心配が生じてこないでしょうか?人口増に伴う地球資源の枯渇を心配する向きも少なくありません。その観点から、石毛直道国立民族学博物館

        元館長は、「現在進行中の『少子高齢化』は、人類という種の未来にプラス効果をもたらす事柄だと言えよう」と冷めた見方をされていますね。人類永続のためには、モノの豊かさから心の豊かさを楽しむことへ、生き方を切り替えることが

        必要である、とも主張されています

        (雑誌アステイオン099)。

        それでは、世界の人口は、今後どこまで伸び続けるのでしょうか?驚くなかれ、世界の人口は、そう遠くない時期にピークを迎え、その後は減少し、ひょっとして人類が滅亡するような事態も危惧しなくてはならなくなるという推計もあるのです。

        これは、占い師の予言ではなく、れっきとした国連の推計の一つです。それによると、世界人口は、2050年を過ぎたあたりから再生産水準を下回るようになり、2086年に

        104億3千万人でピークを迎え、それからは減少が始まるというのです。特に、欧州、アジアおよびラテンアメリカの諸国は、少子高齢化と人口減少の危機に直面します。

        アフリカの人口は現在の3倍の34億人まで増加しますが、やがて2100年ごろには均衡状態に近づくだろうと推計されています。

        (出所:2021年8月23日付日経新聞)

        日本の人口を見てみましょう。

        国連の推計では、日本の総人口は、2050年には

        1億400万人に、2100年には、7400万人に減少すると予測されています。日本の国立社会保障・人口問題研究所は、2020年の国勢調査をもとに、日本の人口は、2056年には1億人を下回り、2100にはおよそ6300万人にまで減少すると、国連よりも少なくなる推計を行っています(2023年4月26日付けニッポンドットコム記事「縮むニッポン : 50年後の人口8700万人、4割が高齢者に―国立社会保障・人口問題研究所推計 | nippon.com)。

         

        2024年1月、民間の有識者でつくる「人口戦略会議」

        (議長、三村明夫日本商工会議所前会頭)は、日本の人口を2100年に8千万人で安定化させよとの提言をまとめましたね。2100年には、高齢化が約40%にも高まると

        予測され、市場の縮小、格差と対立の深刻化、インフラや

        サービスの縮小・廃止、地方消滅などが危惧されるからです。8千万人というのは、今のドイツの人口よりもちょっと少なく、英、仏よりは1千万人ほど多いレベルです。

        大雑把な議論をしますと、アフリカやオセアニアなどの人口が増加するので、世界全体の人口は当面まだ増え続けますが、そのうちにピークを迎え、そして縮小に向かうと予測できそうです。特に、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ諸国は、すでに少子高齢化、人口減少の段階に入っており、この傾向は長期化すると見られます。そこでわたしには素朴な疑問がわくのですが、世界の人口はさておいても、一国の人口は多い方が良いのでしょうか、それとも少ない方がなにかと良いのでしょうか?そして、どれくらいが 「適切な人口規模」なのでしょうか?

         

        インドや中国のような人口大国の国民が、必ずしも豊かな生活を送っているのではないことはご存じの通りです。

        2023年の国民一人当たりGDP(国内総生産)のランキングを見てみましょう。第1位がルクセンブルク(13万ドル)、続いて、アイルランド(11万ドル)、ノルウエー(10万ドル)、スイス(9万9千ドル)、シンガポール(9万1千ドル)です。これらの国々の人口は、すべて1千万人以下です。

        ルクセンブルクの人口は、たかだか66万人でしかありません。8位にアイスランド、12位にサンマリノが入っていますが、アイスランドの人口は39万人、サンマリノは3万4千人です。日本のランキングは、34位(3万4千ドル)です。

         

        最近公表されたばかりの2024年世界幸福度ランキングを見てみましょう。国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワークが発表したランキングですが、

        1位がフィンランド、続いて、デンマーク、アイスランド、スウエーデン、イスラエル、オランダ、ノルウエー、ルクセンブルク、スイスです。

        これらの国の人口は、1千万人をちょっと超えたスウエーデン以外は、みんな1千万人以下です。

        ちなみに、米国は23位、日本は51位でした。

         

        こうしてみますと、豊かで幸福な人生を送っている国民というのは、人口が数百万人から1千万人ぐらいの間の国に多いのが分かりますね。

        G4(日独印伯)、G7,G20といった世界の「大国」のグループには属さず、国連安保理の常任理事国をめざすでもなく、自国民の平和と豊かさを最優先する国々と見てよいのでしょうか。世界の政治大国、軍事大国、経済大国、人口大国になることなど、つゆほども考えていない国々と思われます。これに反して、一時期の日本のように、世界の大国となることをめざす国もあります。

        今から40年前の1984年ごろ、マレーシアのマハティール首相は、当時の人口(約1500万人)は大国となるためには少なすぎるので、7000万人まで増やしたい、

        産めよ殖やせよと号令をかけました。そのためもあってか、人口は今や3350万人まで増大しましたが、

        2024年幸福度ランキングではシンガポールが31位なのに対し、マレーシアは82位にとどまっています。

         

        中国の古典「老子」には、理想的な国のかたちとして、

        「小国寡民」が唱えられています。

        小さな国で、住民が少なく、自給自足で満足し、隣の国をうらやむことのないのが理想的な社会だというわけです。

        スモール・イズ・ビューティフルを地で行く国の在り方ですね。グローバル化の進んだ現在の世界で、もしそれが可能ならば、それも一案なのかもしれません。大きいばかりが能ではないという意味で、「独活(うど)の大木、総身に知恵が回りかね」「山椒は小粒でもピリリと辛い」ということわざも古くからありますね。

         

        日本の人口の推移をずっと昔までさかのぼってみますと、江戸幕府ができた1603年あたりの人口は1200万人ぐらいだったのが、江戸時代末期には3400万人程度まで増えたと推定されています。

        第二次世界大戦以後にベビーブームがあって、団塊の世代が世に出、1967年には1億人を突破するのですね。ふくらんだ風船がしぼむように、日本の人口も逆戻りする運命にあるのでしょうか?この運命に抗うことはできるのでしょうか?なぜ人口は再び増加に転じないのでしょうか?移民などの代替案を考えるべきなのでしょうか?

         

        人口問題については、まだまだ話のタネが尽きません。

        今回はこのぐらいにして、次回もこのテーマを追ってみたいと思います。乞うご期待。

        (出典:社会実情データ図録)

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