奥 義久の映画鑑賞記
2024年4月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2024/04/05「パストライブス/再会」☆☆☆☆
本年度アカデミー賞作品賞・脚本賞にノミネートされた上質な恋愛映画。残念ながら今年は「オッペンハイマー」「落下の解剖学」等の素晴らしい作品が多く受賞には至らなかったが、せつなさが
溢れる大人のラブストーリーの傑作である。物語はソウルに暮らす少女のナヨンと少年ヘソンはお互いに恋心を抱いていたがナヨン(アメリカ名ノラ)の家族の海外移住で離れ離れになる。12年後オンラインで再会するが、お互いの気持ちを想いながらも疎遠になる。さらに12年後ノラは作家アーサーと結婚し、自身も劇作家として活躍しているところにヘソンが訪ねてくる。24人ぶりのニューヨークでの再会の7日間は二人の忘れられない思い出を掘り起こす。二人が選ぶ運命は?主演のグレタ・リーとユ・テオ、二人を見守るアーサー役のジョン・マガロの3人の好演と脚本の出来が本作の成功の要因。今、好きな人を思う人達には見てもらいたい作品である。
2024/04/06「フォロウィング」☆☆☆☆
本作は1998年製作の旧作だが日本初公開なので鑑賞記に記載する。クリストファー・ノーランの長編第1作である。物語は作家志望の男ビルが創作のために見ず知らずの男を尾行するが、ある日尾行した男コップにばれてしまう。コップは不法侵入の常習犯であり、ビルはコップに同行することになり破滅への道に進むことになる。映画作りの手法はスリラーの巨匠アルフレッド・ヒッチコック(「サイコ」「めまい」「裏窓」「鳥」等の名作多数)を連想させ、デビュー作品から才能の豊かさを感じさせる作品に仕上がっている。
2024/04/07「ブルックリンでオペラを」☆☆☆★
ピーター・ディンクレイジ、アン・ハサウェイ、マリサ・トメイの演技派3人がロマコメの名匠レベッカ・ミラーと組んだ愛のハッピー・ストーリー。ブルックリンに暮らす家族は夫がオペラ作曲家、妻が精神科医、18歳の息子の3人暮らし。夫スティーヴンはここ5年スランプで新作が書けない。しかし想定外の出会いが新作を生み人生の転換期となる。中年と若者の二つのラブロマンスとオペラを組み合わせたおしゃれな作品。
「オーメン ザ・ファースト」☆☆☆★
1976年「オーメン」が発表されるや、280万ドルの低予算ながら6千万ドル(約90億)の記録的ヒット作となる。これは新鋭のリチャード・ドナー監督が単なるホラー映画でなく、悪魔映画ながら悪魔を出さず、劇中の惨事は悪魔崇拝者の仕業のようにみせ上質なサスペンス映画に仕立てたことによる。また、主人公のアメリカ大使役に名優グレゴリー・ペックを起用したことにもある。ドナーはこの成功で「スーパーマン」や「リーサルウェポン」シリーズの監督として名匠となる。映画は3部作のヒットシリーズとなり、その後もTV化やリメイク作品も作られた。その作品の中で大きな疑問がある。悪魔の子ダミアンがいかにして誕生したかということである。本作はこの疑問に答えるため、ダミアンの誕生から遡る5年前を舞台に悪魔の子誕生を描いている。主人公の修道女見習いマーガレット役に若手の有望株ネル・タイガー・フリー、枢機卿役に名優ビル・ナイ、修道院長にブラジル出身の名女優ソニア・ブラガがキャスティングされている。クライマックスでブレナン神父がマーガレットに「悪魔崇拝者が命を狙いに来るぞ」と注意するシーンがある。もしかすると「オーメン」につながる前日譚がもう1本出来るかもしれない。
2024/04/12「コール・ジェーン」☆☆☆☆
1960年代中絶が違法だったシカゴで女性の権利を守るためひたむきに戦うグループがあった。裕福な家庭の主婦ジョイは二人目の子を妊娠していたが、その影響で心臓病が悪化していた。担当医からは妊娠をやめること、といわれるが中絶は違法、困ったジョイを救ったのは、違法中絶を行うジェーン達だった。救われたジョイは恩返しのためジェーンズの仲間になる。主役のジョイには、エリザベス・バンクス。シガニー・ウィーバーがジェーンのリーダー役を演じている。事実を基に作られた社会派ドラマである。