BIS論壇 No.442『インド経済の将来』中川十郎24・5・1
4月22日インド大使館で元インド外交官でパリでの気候変動会議、GATT, WTOの貿易交渉などインドを代表して活躍したMohan Kumar博士の講演会があり参加した。
Kumar大使は現在、インドの“ Jindal Global Universityの戦略国際構想研究科長、同大学G20研究センター長も務めている。
大使はニューデリ途上国研究及び情報システム研究所会長も4年間にわたり歴任した。著書は『WTO交渉力学―内部報告』(Macmillan 2018)及び『インドの時~世界を巡る勢力変動~グローバルな舞台で枠組みを均衡させるインド~』(Harper Collins India 2023)などがある。
36年間外交官として勤務中、フランス大使(2015~17), バーレン大使(2010~15)としても活躍。ニューデリの外務省勤務中はスリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、モリデイブなどとの二国間交渉に従事した。インドを代表しGATT, WTO、気候変動会議などで活躍した。これらの国際交渉経験をもとにした講演は極めて迫力あるものだった。
まずインドは5000年のヨガの歴史を有し、国連が6月21日を『ヨガの日』に指定。世界の健康増進に貢献していること。COVIDに関してはクエートに協力、1.5億人分の
ワクチン輸出に協力。100カ国に人道支援を行ったとのこと。
またインドはG20の議長国として23年にはグローバルサウスを代表し、120カ国と200回の会議を開催。さらに200の代表団と意見交換したと紹介があった。
これらの経験をもとに日本とは特に高等教育分野で提携を強化したい。インドは70カ国と教育提携している。日本とは東大、阪大、慶応、広島大学などと提携しているがこれをさらに他大学にも広げたい。海外では米国、カナダ、英国、豪州、韓国との関係が深いが、日本との関係強化を行いたい。世界最大の15億人の人口を抱えるインドは特に日本の若者との交流を強化したい。教育を通じて知的交流を促し、民主主義を深めたい。ヒマラヤと富士山を結び付け、日印の友好親善を強化したいと力説された。
世界はロシア・ウクライナ、イスラエル・ハマス戦争、イスラエル・イラン問題、南シナ海など問題山積故、バイデン大統領、モデイ首相など世界の政治家が早急に問題解決に全力を尽くすべき時である。環境問題に関しても特に石炭発電に関して、発展途上国、先進国の協力が必要だ。 インドは2023年にGDPで宗主国の英国を抜き、25~26年に日本を抜くとみられるが、現在8億の最貧困階級をせめて5億人にすることがまず先決である。
インドは貧困層の縮小に注力することが喫緊の課題だとの意見に全面的に賛成である。